横浜市内の貨物駅を徹底調査!【後編】
ココがキニナル!
横浜に現存する「貨物駅」が気になる。安善、横浜羽沢、東高島、根岸、横浜本牧、本牧埠頭。普段は見たり乗ったりできません。どんな貨物が取り扱われ、どんな機関車や貨車が走っている?(横濱マリーさん)
はまれぽ調査結果!
普段は見ることが出来ない横浜最大のコンテナ取扱駅・横浜羽沢駅の中を現地取材! 取扱貨物や機関車の走る様子は本文参照。
ライター:紀あさ
相鉄・JR直通工事中
バス停の横浜羽沢駅があるあたりの歩道を歩くと、相鉄・JR直通線工事に関する告知を目にすることができる。
羽沢駅新築他の工事
こんな感じで進行中
JRと相鉄の直通であり、整備主体は鉄道・運輸機構。現在のところ2019年度下期の開通が予定されており、直通すれば相鉄の海老名駅や二俣川駅から都心まで直通となる。相鉄沿線住民からは悲願、はまれぽエリア内を移動する際にも便利な直通運転となるだろう。
その後は相鉄・東急直通も予定(相鉄ホームページより)
現在、東海道線では、ほとんどの旅客列車が走る東海道本線ルートと、それに沿う貨物別線の2本がある。
東海道本線と東海道貨物線の関係(画像:RailRider)
上記2図を見比べると、相鉄・JR直通では、相鉄西谷駅から横浜羽沢駅(羽沢駅<仮称>)に乗り入れるための接続線を設けることが分かる。そして横浜羽沢駅から先はしばらく貨物別線を通らないと東海道本線に出られない。
電車に乗ることを考えたら大変便利な直通だが、貨物列車目線で考えてみると、何か利点はあるだろうか?
これまでほぼ貨物列車の専用路線だったところに旅客列車が何本も乗り入れてきたら・・・
ただ大変になるだけでは!?
疑問を投げると、たしかに大変になるだろうと。相鉄の発表では、1時間に2~4本の予定とされているが、旅客列車の遅延などがあると同じ線を使う場合は貨物列車も影響を受けてしまう。
そこで貨物駅側が対策として進めているのが、E&S方式への変更だ。
1ページ目でプラレールにもなっていたE&S方式
E&S方式は、駅構内での複雑な入換作業にかかる時間を削減し、荷役作業が効率化できる方式だ。この導入により、旅客列車に遅延などがあった場合に、貨物列車は駅でコンテナの臨時取り卸しをし、急ぎの貨物は陸路で運ぶなどの対応が可能になるなど、貨客併用化に備えられる。従来方式では取り降ろしに時間がかかるため想定することができなかった対応だ。
「このあたりがE&S方式のコンテナホームになる予定です」
横浜羽沢駅構内図(貨物時刻表より)
「手前の建物は、リフトの検修庫などですが、無くなる予定です」
武田駅長はE&S方式での新荷役予定地を南に少し歩いてから振り返った。
「右手の黄色いポールあたりが小荷物ホームから続いていた地下からの出口ですよ」
小荷物ホームとは、現在すでに荷役ホームとしては使われていない上屋根付きの高床ホームで、かつては郵便物なども扱っていたときく。
屋根が残る小荷物ホーム
駅長は小荷物ホームを「昔の財産です」という。現在は稼働していない国鉄時代の荷物ホームだが、その一部が壊されずに今日まで残ってきた。
駅長室には誰がいつ書いたかは不明だが、横浜羽沢駅の絵が飾られており、このホームがシンボルだった時代が察される。
こんな時代もあったねと
国鉄時代の荷物ホーム、今の荷役ホーム、来るべき相鉄・JR直通後の着発線荷役(E&S)方式への準備、3つの時代の気配をすべて抱えているこの貨物駅。残っていくものと変わっていくもの。横浜羽沢駅は、外から見ても中から見ても、多くの時間の流れる駅だった。
貨物の未来
お昼ごろに駅を貨物列車が通過した。
貨物列車は1編成で最大650トンもの貨物を運ぶそうだ。
ここまで列車や駅から貨物を眺めてきたが、貨物の神髄は、やはり物流。
環境にやさしい輸送手段として注目が高まる(国土交通省HPより)
東城さんは「環境もあるが、トラックドライバー不足も深刻で、物流のインフラをトラックから鉄道に切り替えるモーダルシフトを考えるお客様が増えています」と語る。
商品を輸送に貨物鉄道を一定割合以上利用している商品につく「エコレールマーク」
JR貨物の中期経営計画としては「輸送だけでなくその先の倉庫も総合的にやりたい」と、運送業から総合の物流企業へとその使命を高めるべく、東京貨物ターミナル駅構内に国内最大級の物流施設の建設も計画中だ。
完成イメージ。いつの日か、横浜にもできるかな?
取材を終えて
普段一般公開しない貨物駅を中から見てきたが、ここで朗報。
今週末10月29日(日)に、東京の貨物駅である隅田川駅で、貨物フェスティバルが開かれる。今年は隅田川駅開業120周年記念の年だそうだ。
あの貨車が来たり、北海道産のタマネギがお得に買えたり!
北海道の風物詩、タマネギ列車(写真提供:山田昌太郎さん)
全国の貨物フェスティバルの中にはこうした貨物駅内や機関区内で開催されるものもあるので、貨物列車などがキニナった方はフェスティバルへぜひ足を運ばれてみてはいかがだろうか。
天候等により変更がある場合は、インターネット上で告知されるので出発前にはJR貨物のホームページ(*記事末尾に記載)のご確認を。
積荷がなければ時刻表に載っていても運行しないこともある奥深き貨物列車。武田駅長によると貨物列車がよく走るのは「前日が平日の日」だそうである。前編での「日曜よりは祝日」説にやや条件追加し、「前日が平日の祝日(つまりハッビーマンデーは前日が日曜なので不適)」を、平日勤務の人にとっての貨物日和と呼ぶとよさそう。
こういう日
祝日に散歩気分で貨物駅に立ち寄ってみるのもよさそうだ。
6駅のうち根岸駅は、東日本大震災で東北の鉄道や製油所が大きな被害を受け石油不足となった時に、緊急石油列車が出発した駅でもある。太平洋側を回る路線が不通な中、普段は走行しない日本海側を回り、日本の鉄道貨物輸送史上初の1000kmを超える距離を走り、石油を届けた。
鉄道貨物輸送の重要性が認識され、ディーゼル機関車と運転士の活躍は絵本にもなった
また自画自賛で恐縮だが、各貨物駅を調べようとインターネットで検索するとヒットするはまれぽの過去記事がそれぞれに深くて大変面白く、こんなことまで押さえているのか! と唸ることも多かった。先輩ライター諸氏の志を汲み、これからもそんなはまれぽでいられるようにがんばりたいとの思いをこめて、過去の貨物6駅への記事リンクを改めてまとめて、筆をおきます。
・横浜羽沢(東戸塚から生麦まで通っているのは、貨物列車専用の線路)
・東高島(日本貨物鉄道株式会社の「東高島駅」ってどんな駅?)
・根岸(京浜東北線でよく見る石油タンクはどこからどこへ行くの?)
・横浜本牧(神奈川臨海鉄道の創立50周年イベントをレポート!)
・本牧埠頭(遮断機なしの踏切信号って、電車が通るときはどんな感じ?)
・貨客併用(桜木町―品川間を結ぶ、東海道貨物支線貨客併用化という路線構想)
安善は、貨物駅としては初登場だったが、バス停安善町駅に関する調査結果により、バス停名が変更されるにいたった、現実を変えた記事(市バス27系統にはなぜ2つ終点があるの?)には、個人的に「はまれぽ屈指の影響力でしたで賞」とか贈りたい。
横浜の街の記録と、街の記憶をこれからも。
―終わり―
取材協力
日本貨物鉄道株式会社
HP/http://www.jrfreight.co.jp/
参考文献(前・後編を通じて)
貨物鉄道百三十年 日本貨物鉄道株式会社
JR貨物時刻表 公益社団法人鉄道貨物協会
貨物列車の世界 交通新聞社
機関車年間2018 イカロス出版株式会社
j train vol.66 イカロス出版株式会社
はしれディーゼルきかんしゃデーデ 童心社
相鉄HP
Wikimedia Commons
国土交通省 二酸化炭素排出量
国土交通省 エコレールマーク
鉄道ファン 鉄道ニュース
横浜黄昏さん
2018年10月25日 13時58分
かなりんの横浜本牧駅では新型車両の甲種輸送も扱っています。最近では東京の地下鉄の車両が運ばれてきました。過去には横浜市営地下鉄の車両も運ばれてきました。横浜本牧駅で道路輸送の為の作業が行われ、特大トレーラーで電車が運ばれて行きます。道路輸送は横浜の会社が担当しています。
zunさん
2018年07月04日 18時51分
「東海道本線と東海道貨物線の関係(Wikipedia Commonsより)」の部分、Wikipedia commonsではなく、Wikimedia Commonsです。
また、クレジット表記をしていないのでクリエイティブコモンズライセンス違反になっています。
表示 — あなたは 適切なクレジットを表示し、ライセンスへのリンクを提供し、変更があったらその旨を示さなければなりません。あなたはこれらを合理的などのような方法で行っても構いませんが、許諾者があなたやあなたの利用行為を支持していると示唆するような方法は除きます。
継承 — もしあなたがこの資料をリミックスしたり、改変したり、加工した場合には、あなたはあなたの貢献部分を元の作品と同じライセンスの下に頒布しなければなりません。
ushinさん
2017年10月30日 23時27分
濃いわ~(笑)きちんと手順を踏んでいるので「パクリ」とは言いませんが、ほんといろんな資料から引っ張ってきてまとめてくれたので、一気に貨物博士になれそうな位の情報だ。最近は気にしていなかったけど、荷物ホームまだ在るんだね・・・。羽沢鉄道郵便局の護送便郵袋授受のバイトで泊り込んでた日に、台風で富士川鉄橋流失事故とかあったの思い出す。あと引き上げ線でコキ車を連結したままEF65が転動して、高架橋のエンドから落っこちたというめったに見られない事故にも出くわした、懐かしい羽沢駅です。面白かった。