【箱根駅伝特集】前回大会で完全優勝を果たし、連覇を狙う青山学院大学駅伝チーム。「史上最強」といわれる理由は?
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第2回は「史上最強」という第91回大会総合優勝の青山学院大学の駅伝チームの強さの秘密を探る!
ライター:田中 大輔
往路で勝ち、復路で勝つ。
5区でトップに立った後は、一度も順位を譲ることなく新年の箱根路を駆け抜け、20回目の出場にして初めて誰よりも早くテープを切った。
完全優勝。それが第91回箱根駅伝での青山学院大学の成績だった。
青学構内に展示されたビッグユニホーム
前日の神奈川大学編に続き、2016年1月2日(土)・3日(日)の第92回大会で連覇を視界にとらえる青山学院大学陸上部駅伝チームに迫るため、相模原市中央区淵野辺にある同学キャンパスを訪ねた。
ハッピー大作戦
初出場は1943(昭和18)年の第22回大会。次に出たのは1966(昭和41)年の第41回大会。その後、ゴール寸前で棄権となった1976(昭和51)年の第52回大会を最後に、32年間出場なし。青山学院大学と箱根の縁は、決して強いものではなかった。
その状況を一変させたのが、2004(平成16)年に就任した原晋(はら・すすむ)監督だ。
自身は箱根駅伝出場経験はなく、実業団選手引退後はカリスマ営業マンとして活躍したという異色の経歴の持ち主。もちろん苦労はあっただろうが、見る見る間に青学を「史上最強」チームへと仕立て上げた。
共同記者会見でマイクを握った原監督
初優勝からの2連覇がかかるが、原監督は「ほかの大学は気にしない。自分たちの走りができれば」と落ち着き払っている。それどころか「今年は『ハッピー大作戦』でいきたいと思います」と言ってはばからないのだ。
その心は、「勝ち負けだけでなく、終わったときに見ていた人、選手、私、みんながハッピーになれるようなレース」を展開することだそうだ。
「明るく楽しみながら」と話す原監督だが、楽しけりゃ全部OKというわけにはいかない。もちろん、勝ちに行く。「注目されることで、選手に責任や自覚が生まれる。それを力に変えられないならそこまで」と厳しい顔ものぞかせた。
練習中には笑顔を見せ、リラックスした様子
それでも、「プレッシャーや競り合いに強い選手たち」とチームを評し、「往路が終わってトップなら勝てる自信はある」と続けた。
3代目・山の神
青学2連覇のキーマンは、やはり「3代目・山の神」だろう。
前回の第91回大会で箱根の山を登る5区を走り、区間賞はもちろん、最優秀選手に送られる金栗四三杯(かなぐりしぞうはい)も獲得した神野大地(かみの・だいち)のことだ。
神野はコース変更によって約20メートル延びた5区で、2代目・山の神と呼ばれた柏原竜二(かしわばら・りゅうじ、東洋大)の記録を24秒も上回る離れ業をやってのけた。
4年生となった今年からは主将にも任命され、名実ともにチームの顔だ。しかし、2度の疲労骨折を含む度重なる故障が神野を苦しめた。
現在はほかの選手とは別メニューで調整中の神野
箱根駅伝と並んで大学三大駅伝に数えられる10月の出雲駅伝には不出場。もうひとつの三大レースである11月の全日本大学駅伝では最終8区を任されたが、8位と精彩を欠いた。
「自分の力を過信していた」と神野はこのレースを振り返り、「11月中旬ごろは箱根もあきらめようかと考えた」と話す。
それでも、「箱根は次が最後。一生後悔することはしたくない」と心に決め、短い期間での調整を続けている。
しかし、悲壮感が漂うかといえばそういうことでもない。本人はいたって前向きだ。
「(現在の状態は)平地では10%から20%くらい。でも、山なら70%くらい」と、常人ではなかなか理解しがたい話をケロッと言い放ち、「平地で昨年のペースを出すのは無理。でも、山に関しては昨年と同じくらい(の状態)に持っていけるかなと思う」と自信をのぞかせた。
会見中はリラックスした表情も見せてくれた
ケガの影響を心配する向きが強い中、「(前回大会は)小湧園から頂上までのタイムがほかの選手より圧倒的に良かった。でも、自分の中では一番妥協してしまった部分でもあった」と話し、「そこを頑張れればもっと差をつけられる」と神野自身は前だけを見据えている。
「小湧園で並んでいたら絶対に勝てる自信がある」と言い放つ主将の目には、大手町での歓喜の瞬間が浮かんでいるようだ。