【横浜の名建築】大倉山記念館・大倉精神文化研究所 (第2部)
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第22回は、『大倉山記念館・大倉精神文化研究所』第1部に引き続き、この第2部では、塔、西館と東館、そして秘密の部屋がある1階部分を紹介します。
ライター:吉澤 由美子
実業家であり、東洋大学の学長も務めた教養人、大倉邦彦が作った大倉精神文化研究所は、特定の宗教や宗派にとらわれず、広い意味で宗教学や哲学を研究する場所として、1932(昭和7)年に開館。
ギリシャ文明以前のプレヘレニック様式に日本的な意匠がいくつか組み入れられた興味深い建物。
現在も東館に大倉精神文化研究所としての機能を持ちつつ、それ以外の中央館や西館といった場所は横浜市の大倉山記念館として、集会室やギャラリースペースを貸し出している。
第1部の創建にまつわるエピソードや中央館に引き続き、この第2部では、塔、西館と東館、1階に隠された謎を紹介していく。
360°全てを見晴らせる塔
列柱の並ぶ神殿のような塔上部のすぐ下は、通路が周囲を巡っている。
この場所はエントランスから見上げた獅子と鷲の彫刻がある場所。
通路の外側
通路の内側。彫刻が見える位置に円形の窓がついている
窓から覗くと間近に獅子と鷲を見ることができた
近くで見ると繊細で力強く、細部に渡って作り込まれていることがわかる。
圧倒的な存在感
エントランスの真下からは、このように見えている
さらに上に行くと、列柱の内側の通路に出る。ここには、金色の光を生み出す色ガラスがはめられた窓がある。
褐色に近い色のガラスに太陽光が通ると輝かしい金色に変わる
裾が細くなった列柱のためか、平衡感覚が怪しくなり雲の上を歩いているような気持ちになる。
裾の細くなった柱が並ぶ様は、不思議な光景
通路の西側の天井には、なにかを下げていた金具のようなものが見える
丘の上の塔だけに見晴らしは素晴らしい。まわりの木々が幼かった創建当時は、360°遮るものない眺望だったとか。
下を見ると、美しい緑青が吹いた青銅の屋根が広がっている。この屋根は、来年の6月から半年間かけて新しく銅を葺き直す予定だ。これだけ細かな仕事は現在、不可能だとのこと。
天窓も創建当時のもの。雨樋のあたりなどは外して保存する予定だとか
銅の屋根が新しくなると、緑青が吹くまで10円玉のような色の屋根になる。数年間しか目にすることができないものなので、それもまた楽しみだ。
当時の最新設備が残る図書館
次に向かうのは、閲覧室や図書館のある東館。大倉精神文化研究所もこちらにある。
閲覧室にはこの建物の模型など、さまざまな資料が飾られている
普段は入れない書庫。書架はアメリカのライブラリビューロー社製で、図書館全体を支える柱に棚板をはめ込むもの。東日本大震災でもほとんど本が落ちなかったという優秀な書架だ。
しっかりした書架の他、カードケースなども現役で残っている