これって何の起点? 開港広場前にある標識を調査したら、日本で6番目に短い○○だった!
ココがキニナル!
横浜開港資料館の前に『起点』の標識があります。これは道路の起点を表しているのでしょうか?それとも場所柄、何か違うものの起点でしょうか?(Aloha.Rickyさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
国道133号の起点。下水道工事など掘削を必要とする工事では標識を外すことがあり、標識を復旧するタイミングで、「起点」のみの標識を見かけた可能性が高い。
ライター:はまれぽ編集部
2013(平成25)年9月14日、はまれぽ編集部にこんな投稿が寄せられた。
「横浜開港資料館の前に『起点』の標識があります」
投稿の写真(Aloha.Rickyさん)
おぉ。確かに写真で見る限り、何かの起点が示されているようだ。しかし何の起点かは記されていない。場所は開港広場前の交差点(中区海岸通1丁目)の辺り、横浜開港資料館の港側の道路に面した所にある。
「横浜開港資料館」の目前に位置し、「横浜港」「神奈川県庁」「シルクセンター」など、横浜の歴史を語る上で重要な場所が密集しているので、何らかの起点を表す標識と言われても納得してしまう。
「もしかして、山下公園を走っていた貨物列車に関係しているかも・・・。はたまた、旧海岸線だったりして!」なんて過去のキニナルを思い出しながら、「起点」を探しに現場へ向かった。
そこは、日本で6番目に短い○○の起点だった
いったいどんな秘密が隠されているのかと高鳴る鼓動を押さえながら、みなとみらい線日本大通り駅から歩くこと4分。目的地に到着!
さてさて、どこにあるかな・・・。
お、ここらへんだ
なぬ!!! 「起点」の上に、丸みを帯びた標識がついているぞ!
ふむふむ、「国道 133 ROUTE」とな
謎は一瞬で解明された。
おにぎりのような標識に記されていたのは、「国道 133 ROUTE」の文字。Aloha.Rickyさんの推理通り、道路の起点だった。
しかし、なぜ「起点」のみの標識だったのか。もしかして、風で飛ばされたとか? その理由を確かめるべく、国道133号の標識を管理している中土木事務所に問い合わせてみた。
どうして「おにぎり看板」がなかった?
「この辺りは電柱を地下に埋設している地域ですので、掘削が必要となる下水道工事などの際に一時的に標識を外すことがあります。外した標識を復旧するタイミングで『起点』のみの標識と出合われた可能性が高いですね。工事の影響以外で標識を外すことはほぼ有り得ません」と担当者は言う。
つまり、何らかの工事の影響で外していた標識を復旧するタイミングで撮影したということか。確かに、あまり広い道でもないので標識があることで工事に支障が出る可能性も感じられる。
こちらは、車の運転と道路地図を覚えることが趣味の「めがひっとさん」が撮影したお写真(時期は不明)。
国道標識がないのは逆にレアかも?(画像提供:めがひっとさん)
国道標識は愛好家の間で「おにぎり(看板)」とも呼ばれている。撮影者のめがひっとさんは、おにぎり看板がないタイミングで来訪してしまい、「本当なら起点を示す国道133号なのにおにぎり看板がなぜかない・・・。看板写真を目的とする私としては痛恨の極みです。いつか復活してくれることを祈っています」とブログに記していた。
よくよく調べてみると、国道133号線は国道愛好家の中で通称「港国道(みなとこくどう)」と呼ばれ、起点が重要港湾・飛行場と主要国道を結ぶ一般国道(道路法5条1項4号の規定に基づく路線)らしい。
そして、総延長1.4kmの日本で6番目に短い国道(2018年11月27日現在)というから、結構有名な国道なのかもしれない。
国道133号(クリックして拡大/© OpenStreetMap contributors)
さらに歴史を遡ってみると面白いことが分かった。
1885(明治18)年、「東京より横浜港に達する路線」として日本橋から横浜港を結ぶ国道1号が指定されている。これは、現在の国道15号と国道133号に相当する路線で、日本橋から現横浜駅までの区間は旧東海道を、旧横浜駅(桜木町)から横浜港までは国道133号とほぼ同じルートをなぞらえているのだ。
1880(明治13)年から1886(明治19)年に作成された迅速測図(簡便な測量法で作成された地図のこと)からは、旧横浜駅から開港広場前までの道がはっきりと記されていた(クリックして拡大)。
(出典:歴史的農業環境閲覧システム<作成=国立研究開発法人・農業環境技術研究所>)
国道133号が制定されたのは1953(昭和28)年だが、かつては国道1号として活躍していた時代もあったということが分かる。
これはもしかしたら、なかなか味わい深い道かもしれない・・・ということで、全線制覇のプチ旅に出かけてみた。