天王町駅近く、かつて街の娯楽の発信地だった映画館「ライオン座」について教えて!
ココがキニナル!
相鉄天王町駅近くに昔「ライオン座」ともう一つ(ポルノ映画館で名前が出てきません)の映画館があり、子供のころよくライオン座に通って楽しかったっす。ライオン座の思い出を探して(じぇじぇさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
街の人々の記憶から新聞の映画館案内欄をたどって、ライオン座が1954年4月に開館し、1990年11月30日に閉館ということは分かったが、今後も情報求む
ライター:永田 ミナミ
名画座
「テレビ」といえばまだ「街頭テレビ」だった時代は、映画が最高の娯楽で「どの街にも洋画と邦画の映画館があってにぎわっていたものだよ」という話を聞くと、それはそれで何だか素晴らしい日々のように思えてうらやましい気もするが、やはり水が低きほうへ流れていくように、時代はより便利なほうへと流れていく。
東京の話だが、世田谷区三軒茶屋に長い間隣り合って営業していた2つの映画館も、2013(平成25)年に1館が、翌2014(平成26)年7月にもう1館も閉館し、とうとう映画館のない街になってしまった。
三軒茶屋中央劇場の趣ある建物は今もまだ残っている
学生時代は両館でしょっちゅう2本立てを観ていたが、映画館を出てTSUTAYAの前を通ると、だいたい今見終わったばかりの映画が新作としてレンタルが開始されていて、何とも微妙な気分になりながら「スクリーンで観ることの意味」などと自分をなぐさめていたものである。
DVDやブルーレイ、大画面で高画質のテレビ、シネマコンプレックス、スマートフォンがすっかり日常化した現代は、ロードショーから少し遅れた新作や旧作を織り交ぜて2本立て、3本立てで上映する、いわゆる「名画座」と呼ばれる映画館にとってはとても生きにくい時代であり、こぢんまりとしながらも趣のある地元の映画館が閉鎖していくのを目の当たりにしては、時代の変化を感じている人も多いだろう。
横浜の名画座も、現在は伊勢佐木町とその周辺に「シネマジャック&ベティ」「横浜ニューテアトル」、そして昨年末に復活した「横浜シネマリン」の3館が残されているばかりである。
ゾンビパレードのゴールだったシネマジャック&ベティ
とにかく情報が足りない
さて、今回その足跡をたどる「ライオン座」は、かつて「相鉄線天王町駅近く」にあったという名画座である。
ライオンという威風堂々とした名前から、何となくすぐに情報が集まるような気がして調べはじめたが、見事なほど情報が出てこない。そういえば「この獣は出歩くとき尾先の房で地を掃きながら進むので足跡を残さないともいわれる(平凡社『世界大百科事典』)」のだった。
昭和の映画館に関する資料を数冊調べてみたが、天王町駅の映画館について触れたものは見つからなかった。インターネット上でも「そういえばライオン座っていう映画館あったよね」とか「子どものころよく映画観に行ったな」と懐かしむ個人ブログや掲示板がちらほらと出てくるくらいで、おおよその場所と、夏休みなどに東映アニメ祭りなどが開催されていたことが分かったほかは、映画館に関する情報らしい情報は出てこない。
というわけでひとまず、ライオン座跡地の情報だけを頼りに、現場へ向かった
旧東海道をまっすぐ歩いていけば活気あふれる松原商店街にたどり着くが
ライオン座があったのは、旧東海道の1本となりの環状1号線沿いらしい
ライオン座があったとされるのは洪福寺交差点の手前のここで
いまは大きなマンションがそびえる場所だという
歩いて足跡を探す
マンションにはライオン座の痕跡らしいものは残っていなかったので、本当にここにあったのかも含めて、長く営業していそうな近隣のいくつかの店に聞いてみた。
すると、話を伺ったほぼすべての方がライオン座のことは知っていて、さらにそのほとんどの方が「子どものころはよく観に行った」という。場所も上の写真のマンションで間違いないとのことだった。
ただし、いつ閉館したかという話になると「20年くらい前」から「30年くらい前」まで記憶にばらつきがあり、映画館の様子や正確な閉館時期までは分からなかった。
そんななか、衣料品店の方から「ライオン座が閉館したあと、すぐ近くに別の映画館が開業した」という話を聞くことができた。「移転したんだなと思っていたが、名前は違ったのでよくわからない」という話だったが、この映画館も何かのヒントになるかもしれない。
「別の映画館」の場所はここの2階だという
なるほど、映画館が入っていたと聞けば「だからこの外観なのか」とうなずける
今日のところはこれが限界かと思ったが、最初に訪ねたときにご主人が不在だった「寺尾塗料店」をもう一度訪ねてみたところ、最後の最後で確かにライオン座がそこにあったという証拠を見ることができた。
路地と駐車場をはさんでライオン座からわずか20メートルほどの寺尾塗料店
従業員の方に話を伺ったあと「背景に映り込んでいるとかでもいいので、ライオン座が映った写真をお持ちじゃありませんか」と聞いてみると、別の方に内線で電話してくださり、何とその方から「ああ、あるよ」という答えが返ってきたのである。この近さならひょっとして、と思って聞いてみてよかった。
そして「まあ映ってるといっても、横の壁だけなんだけど、それでもいいなら」と言って見せていただいたのがこの写真である。
このトラックの後ろに映っているのがライオン座の建物の側壁だという
映画館らしい外観が写っているわけではないが、ようやくライオン座を見ることができた喜び。さらにご親切に写真を撮影した位置まで案内してくださった。
しかし、写真に興奮している間にすっかり日が暮れていたので
明るい時間に撮影した、現在のほぼ同じアングルからの風景