【横浜の名建築】明治を代表する偉人が愛した 旧伊藤博文金沢別邸
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第10回は、旧伊藤博文金沢別邸。明治時代を代表する政治家の伊藤博文は金沢の地を愛し、格式の高さと武家の慎ましさをあわせもつ別邸を残した。
ライター:吉澤 由美子
賓客をもてなすための客間に込められた心遣い
(続き)
ここではぜひ、明治時代の錚々(そうそう)たる政治家や、皇族方も眺めたであろう景色を上座で味わってほしい。
上座からの眺望。灯篭と玉垣の向こうには海が広がる
外から眺めた客間棟。雨戸を収納する大きな戸袋が見える
そして客間棟でもうひとつ見逃せないのが客用便所だ。
皇族方がいらした時のために漆塗りの便器がしつらえられており、艶やかな黒は工芸品のような美しさ。
来客のためだけのトイレ。中は板敷で、手を洗う水屋は畳敷き
花を活けても似合いそうな男性用小便器
客用便所から客間にかけての廊下は畳敷き。中庭に面して障子が続き、張り出した流しがある。
客間の廊下。流しの方から玄関を見ている。壁には伊藤博文の写真を展示
この別邸にある灯具は全て、建物修復時につけられたもの
くつろぎの空間である落ち着いた居間棟
廊下の先には居間棟がつながっている。こちらは書斎や寝室といった私的なスペース。
居間棟の部屋にも、「秋月(しゅうげつ)の間」、「夕照(ゆうしょう)の間」という名前がついている。
客間の名前も含め、金沢八景から取られたもの。
秋月の間には、現在も使える状態の掘りごたつがある
秋月と夕照の間にある鶴を彫った板欄間
夕照の間からは隣にある牡丹園が見える
ここから見える灯篭は、創建当時のもの。その手前には、夏みかんの木がある。
長州の志士がこちらに屋敷を作る時、庭に必ず夏みかんの木を植えたと言われている。
創建時の灯篭は、色も角もやわらかい印象だ