50代続く江の島の老舗旅館「岩本楼」に突撃!
ココがキニナル!
江ノ島の老舗旅館「岩本楼」がキニナります。国の文化財になっているお風呂もあるとか!(タマリンドさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
鎌倉時代「岩本坊」と呼ばれていたお寺が旅館になった。現在は改装を重ね、資料館で昔の姿を見ることができる。2001年に文化財になったお風呂は豪華
ライター:山崎 島
岩本楼すごい2
あまりの歴史深さと貴重なものの多さに、どう原稿を書き進めたらいいかもう丸2日悩んでいる岩本楼。見どころはまだまだあります。
食事もそのひとつ
海と山の幸をまんべんなく楽しめる岩本楼の食事、目にも鮮やか。
「旅館の食事って冷たくて味が薄くてすごい色しているだけで好きじゃない」と思ってる方も、ここの食事には驚くのではないだろうか。温度も塩加減もしっかりと調節されていて、見た目だけではなく味も楽しむことができた。ボリュームもあり、これは大満足。
今まで旅館のご飯を見くびってました、ごめんなさい
普段食事はお部屋でいただけるそうで、暮れていく海を眺めながら美味しい食事をいただけるなんて、うーんイチコロ。
それから大浴場は誰もが認める名物。
まずは弁天洞窟風呂から。脱衣所は清潔で広い
浴室はこう
これはわくわくだあ。江の島名所の岩屋をイメージしたというお風呂は、子どもでもわんぱくでなくても冒険心が沸き立つ。こちらは昭和の終わりに先代が作られたそうで、元々は女人禁制だった江の島内の「岩本院」と呼ばれるところで働いていた稚児を折檻する土嚢(どのう)だったんだとか・・・。
その後は自然の冷蔵庫として使用されていたが、電気が通り使われなくなったため、お風呂にした。
ここに閉じ込められたら
泣くなあ
奥には鳥居が
奥まで進んだら、ふと富士山の麓までいっちゃってたりして! な神秘的な弁天洞窟風呂でした。スチームサウナの効果もあるんじゃないかな。
次は2001(平成13)年に国の有形文化財に登録されたというローマ風呂。
脱衣所のステンドグラス
こちらのローマ風呂にはイタリア製の最高級のステンドグラスが使われており、しかも今ではもう製造されていない天然の染料を使用したガラスだという。30cm角で約15万円するそう。せ、背筋が伸びます。
1930(昭和5)年に作られたお風呂
わあ
わああ
実際に入浴させてもらったが、すごく遠い所に来ているような感覚になった。歴史と美術的な美しさのある浴室内を見回しながらたっぷりなお湯につかるのは心地よかった。
岩本楼がお風呂にこだわりだしたのは1916(大正5)年。当時の当主が豪華な大理石のお風呂と、人造の滝を設えた大浴場を作ったのが始まり。昔、江の島は水を引くのも難しい立地だったというし、大きなお風呂を作るのは相当労力も費用もかかったんじゃないだろうか。すごいなあ岩本楼。
昭和初期の江の島
と、だだだっと岩本楼の魅力を駆け抜けてきたが、みなさん、お出かけされたくなっただろうか。岩本楼の宿泊費は1泊2食付きで1万4000円から。浴場は基本的に宿泊者のみが利用できる。
横浜からもほど近いし、贅沢な時間を過ごしに来るにはぴったり。うーんイチコロ。
岩本楼の歴史すごい
では次に歴史。岩本さんのお話と合わせて藤沢市の文書館へ行って調査してきた。
文書館
岩本楼はかつて鎌倉時代から岩本坊と呼ばれるお寺だった。江の島には岩本坊のほかに、室町時代初期の1452年~1456年の間(推定)に上の坊・下の坊の3つの坊ができ、その中でも岩本坊は一番大きな寺だったそう。
鎌倉時代、勝運の神・八臂弁財天(はっぴべんざいてん)をまつる江島神社の信仰が強く、島は神聖な場所とされ、源頼朝をはじめとする将軍家、天皇や大名しか入ることが許されなかった。
そのため、島が一般人にも開放され始めた江戸時代以前は、島内の資料が残っていない。鎌倉時代に岩本院と名前を改めたのではないか、と資料から推測するが、詳しいことは不明。
1862(文久2)年には歌舞伎狂言作者、河竹黙阿弥(かわたけ・もくあみ)の『白浪五人男』の舞台として岩本楼が描かれており、登場する弁天小僧は岩本院の稚児がモデルと言われている。
天皇が履いたと言われている鎌倉彫の下駄など
江戸時代にも江島神社は武家や庶民から信仰されており、島は多くの参拝客でにぎわっていた。
現在も多くの参拝客でにぎわう江島神社
江の島では寺の僧が神社の神主も務めており、仏教色が強かった。明治時代、政府の神仏分離の政策により、島内の仏教的建築物や仏像、経典は破棄され、僧侶は全て神主になった。
岩本院は岩本楼に名前を改め、それまで宿坊だったことを生かし、1874(明治7)年3月に旅館として開業した。
明治から大正時代の岩本楼正面玄関(提供:藤沢市文書館)
客室の外観(提供:藤沢市文書館)
建物はたびたび改築され、現在の建物は1989(平成元)年に作られたものだそう。
写真を見ていると現在の建物に共通する部分もあり、歴史の長さを感じられた。
かつて天皇や大名、頼朝も眺めたであろう景色を贅沢に堪能できる旅館、岩本楼。今度はおばあちゃんを連れてきたいと思った。
取材を終えて
と思ったら山崎のおばあちゃんとおじいちゃんは新婚旅行で岩本楼に泊まったらしい。あと、山岸の提案で岩本楼さんのお風呂に入らせてもらったが、自分から言い出したのにいざ入ったらすごい照れてた。恥かしがってもあなたの下着が水着みたいな柄だってことばれてますよー。
―終わり―
参考文献
『江の島岩本楼今昔物語』
『神奈川県百科事典』
『弁天小僧と岩本楼』
岩本楼
住所/藤沢市江の島2-2-7
電話/0466-26-4121(8:00~22:00)
URL/http://www.iwamotoro.co.jp/
節さん
2021年12月07日 06時31分
とても良い記事と思います。有難うございました。ところで1875年2月の宿帳は残っているかどうか、現当主の岩本さまにメールで伺う方法を教えて頂けると有難いです。こちら欧州におりましてコロナ禍下で帰国が難しいのです。宜しくお願い致します。
ホトリコさん
2016年03月04日 19時34分
お風呂場が、道後温泉と、岩手県で利用した岩窟温泉を足したみたいでスゴイ。どちらも好きだったから、温泉でなくても、江ノ島を満喫するために行ってみます。
∵さん
2016年03月03日 04時44分
このところ江の島(周辺も含む)の濃い目のネタが続いていて、個人的にとても嬉しいです。単純に観光地として良くまとまっている地域だし、ほじくり甲斐はかなりありますよね…