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「程ヶ谷」が「保土ヶ谷」になったのはいつ?

ココがキニナル!

今は保土ヶ谷と書かれていますが、東海道五十三次などを見ると、程ヶ谷です。いつごろ今の保土ヶ谷に変わったのかしら?(えみりさぱぱさん、浜っ子さん)

はまれぽ調査結果!

江戸の「保土ヶ谷」、明治の「程ヶ谷」を経て昭和初期から現在の「保土ケ谷」に至る。途中「保戸ヶ谷」などの表記も見られるが、正確な理由は不明

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ライター:田中 大輔

大切なのは「漢字」より「音」



ここまでを簡単にまとめると、江戸以前は「保土ヶ谷」、明治期から「程ヶ谷」が増え、昭和に入ると再び「保土ヶ谷」に、という流れだ。

ただ、それはあくまで、どの表記が主流だったか、ということで、江戸時代に「程ヶ谷」と書く人がいなかったわけではない。例えば、著名な浮世絵師、葛飾北斎は江戸後期の人物だが、『富岳三十六景』の中で「程ヶ谷」という表記を用いている。
 


 

近藤さんのお店に飾られた北斎の浮世絵。表記は「程ヶ谷」だ
 

また、1814(文化11)年に建てられ、今も保土ケ谷の街中に残されている「金沢横丁の道標」の1基には『程ヶ谷の 枝道曲がれ 梅の花』という句が残されている。

これは、江戸時代に生きた其爪(きそう)という浄瑠璃の一種「河東節(かとうぶし)」の家元の作で、杉田梅林への道を示しているのだそうだ。
 


句碑と道案内を兼ねた珍しい碑。「程ヶ谷」と書かれている
 

幕府も幕府で、1806(文化3)年に作られた『東海道分間延絵図』という史料では、「保土ヶ谷」でも「程ヶ谷」でもない「保戸ヶ谷」という書き方を残すなど、完全に統一されている様子はまるでない。
 


さらに出てくる新表記。江戸時代の公式資料で「保“戸”ヶ谷」
 

近藤さんは、「北斎ら文化人は、洒落っ気などもあったんだと思います」と話し、「同じ東海道の、愛知県にあった『ちりゅう』という宿場町は元来は『知立』と書くのですが、江戸時代には『池鯉鮒』と書いて『ちりゅう』と読ませていました。これも遊び心のある面白い例です」と笑う。

それ以外でも「文字よりも音が優先された時代だったんでしょう」と近藤さん。今よりも識字率が低かったであろう江戸時代においては、「保土ヶ谷」か「程ヶ谷」か、よりも、「ほどがや」であることを伝えることの方にこそ意味があったというわけだ。



取材を終えて



現代の我々の感覚で考えると、地名の表記は定められているのが当たり前だが、かつてはそうではなかった。

だから、はまれぽで地名の由来を紹介する記事でもたびたび触れているが、どの漢字を使うかよりも音が大切なことが多いわけだ。

ちなみに、この「ほどがや」の表記。実は今でも結構あやふやだったりする。

行政上の正式な表記は、1959(昭和34)年に制定された「区の設置並びに区の事務所の位置、名称及び所管区域を定める条例」という条例以降、「保土ケ谷」と“ケ”を大きく書くことに決められている。でも、「保土ヶ谷」と書く人も多いし、パソコンの変換でもコチラが出てきてしまう。
 


駅名もちゃんと、大きい“ケ”
 

「程ヶ谷」表記こそ廃れていったが、果たして「保土ヶ谷」表記が「保土ケ谷」表記に完全に統一される日は来るだろうか。


―終わり―
 

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  • よく行く保土ヶ谷の地名に関してこんな変遷、扱いの歴史があったとは実に興味深い事でした!

  • 発音が同じなら何でもアリなんて、太閤豊臣秀吉みたい。

  • 「ケ」と「ヶ」をどちらかに統一等の話は知っていましたが、保の字の「ホ」と「木」の問題があったとはこの記事見て検索してみるまで知らなかったです。いつも勉強になります。

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