舞岡公園の乾燥しいたけから高い放射線量が出た経緯は?
ココがキニナル!
横浜市は舞岡公園で栽培、加工された乾燥シイタケから、国の暫定基準値を上回るセシウムを、3月と10月の収穫分から検出したそうですが、どういう経緯で検査することになったのですか?(はてな?さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
まず市民団体が10月分の検査をした後、収穫期で分けていた3月分を検査。3月分は市を含め3通りの結果が出たが、突出して高い数値が記者発表された。
ライター:吉岡 まちこ
なぜ極端に高い数値だけが、ニュースになってしまったか。
キニナル点は2つある。
まず、3月収穫分の結果は3通りあったのに、なぜ2,770ベクレルという数字だけを発表したのか。
市内の公園の管理をしている横浜市環境創造局・公園緑地課は「記者発表したあと、小谷戸の里側の290ベクレルという数値を知った」と、それが微妙なタイム差だったと強調する。
「2,770ベクレルは高い数値だったので、市の立場としては一刻も早く発表し、市内でしいたけを栽培加工している方々に知らせようと考えました」(同公園緑地課)。
市が再検査した時刻は明かされないが、低い数値を得たことに関しては、4日後にHPに載せたのみだ。
再検査の結果は記者発表されなかった
なぜ同じ3月下旬収穫分に、こんなに大きな差が出たのだろう?
検査をした横浜市衛生研究所に聞いたところ、結果の管理は、すべて市の健康福祉局・健康安全課が取りまとめているという返事。
その健康安全課では、検体を手配はしたが食品の状態等に記憶はなく、乾燥しいたけは個体差が激しいのでと言うだけで、結局理由はわからない。
3月収穫分の福島県産乾燥しいたけの数値を参考にと思ったが、福島農林水産部もその時点の乾燥しいたけのデータは持っていないとのこと。ただ同農林水産部によると「乾燥しいたけは、生しいたけの7~10倍にセシウムが濃縮されるので、逆算して300ベクレル前後というのは、神奈川県にしては高いのでは」という印象だそうだ。
ちなみに4月8日に検査された福島県内22市町村の原木生しいたけのデータを調べると、セシウムの合計は、同じ県内(飯舘村を除く)の中でも9.4~1,460ベクレルと激しい差だ。平均的には100ベクレル程度という感じだった。
市の方針は、測定は市だけが行なう。
キニナル点2つ目は、なぜ延べ800人が食べたあと、今頃になって検査が行われたのかだ。
実は、横浜市では、公園の指定管理者が独自で空間線量や作物の線量を測定することを歓迎していない。
公園の空間線量測定を担当しているのは環境創造局維持課。「情報が混乱するので、公園の測定は市が順番に進めているのだ」と説明する。
作物の放射性物質についても、横浜市環境創造局・公園緑地課は「市なり県のHPに掲載されているものを基準にしてもらえればいいので、食品の検査は控えてくださいとお願いしている」と述べる。
市が検査に二の足を踏み、逃げ腰なのは、その先の政策がないことからくる。それは国がそうだからだ。
福島第一原子力発電所の事故から9カ月たった今も、セシウムの暫定基準値500ベクレル/kgという、ベラルーシが定めた子どもの摂取許容値37ベクレル/kgと比べてはるかに高い数値さえ、まだ変わらない。
原子力発電所の大事故という未曽有の事態に、市の戸惑いも混乱もわかる。
しかし「会」からの再三の要望にも関わらず、舞岡公園内の空間線量が測られたのは、9月27日が初めてだった。米、野菜はもちろん、県や市のサイトに掲載のない作物の検査の依頼も、結局叶わなかったという。
だから今回、「会」が独自で乾燥しいたけを調べたのは、いわば強硬手段だった。
「会」では、「ボランティアには小さいお子さんも多いですから、検査していない物を食べるわけにはいかない」とし、現在は検査しない収穫物・園内の産物は一切使用販売を行なわないとしている。
人も鳥も虫も植物も、安心して暮らせる日を取り戻したい
最後に、今年11月刊行の会報『舞の里だより』臨時特別号の一文を引用する。
――当会としては出来る限りの情報公開と測った数値は公表し、市民の皆様にご判断して頂けるような危機管理を心がけます。数値の高い低いに関わらず、多くの皆様に多大なご心配、もしかしたら健康的影響をおかけしているかも知れません。本当に申し訳ございませんでした。――
「会」では、11月23日の収穫祭の炊き出しの前に、再び食材の検査を独自で行なった。
玄米は13ベクレル/kg、さつまいも・ごぼう・大根・にんじんはND(対象核種のピークが認められない)だった。
取材を終えて
指定管理者に測ってほしくないとしながらも、なかなか検査をしてくれない市に対し、業を煮やした感じで測定を始めた「会」。
農作物を生産する指定管理者に対し、「測定を控えてくれ」としている市の指導に、筆者は驚いた。
高かろうが低かろうが、今はひたすら客観的な数値が欲しいからだ。
しかしそれを非難せず「ひとときも早く市民一人一人が考え実行できる対策をきちんと立てて欲しい」という「会」のかたの言葉は冷静だ。責めるよりも、前に進まなければいけないからだ。
今、除染後の土壌や焼却灰、下水汚泥はババぬきのジョーカー状態だ。放射性物質が循環してしまわない方法を、一刻も早く国が決断しなくては、どうにも前に進めない所に来ているのだ。
― 終わり ―
MKさん
2012年08月19日 22時41分
ただ、放射線の測定はかなり高度な機材を用いないと数値誤差が大きいはず。素人の簡易測定による値がひとり歩きするのを恐れる市側の対応も理解できなくはない。市に対して苦言を呈するなら、十分な測定ができる環境をなぜもっと早く整えられなかったのかという点だろう。