地震発生直後1時間が生死を分ける? 大地震を想定したゲーム「J-DAG」ってなんだ?
ココがキニナル!
関東大震災から90年、東海地震も30年以内に発生する可能性が指摘されています。震災発生時の被害や混乱を想定したゲーム「J-DAG」がキニナル(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
横浜の市民グループのメンバーが考えたもので、地震発生1時間で起き得る被害をリアルタイムでシミュレーションして災害への備えをする「減災ゲーム」
ライター:はまれぽ編集部
「東海地震」への備え
突然だが、はまれぽ読者のみなさんは緊急災害時に自分が取るべき行動や必要な物資などが把握できているだろうか。政府の地震調査委員会によると、30年以内に高い確率で東海地震が発生する可能性が指摘されており、横浜市も有識者らを招いた専門委員会を設置し、被害を想定している。
それによると、最大で震度7の地震による火災や揺れ、津波で死者は約4000人、避難者・帰宅困難者10万人超。家屋損壊は全半壊合わせて8000軒程度と見込んでいる。
災害発生直後は、だれもがパニックに陥り、冷静な行動を取ることが困難だ。発災後は家族や近隣住民の安否確認をはじめ被害状況などの把握が急務であり、その中でも優先順位を考えて対処しなければならない。しかし、混乱のなかで的確な情報収集は困難と言わざるを得ない。
横浜市消防局などによると、その混乱のなかの最初の1時間こそが、自身や大切な家族の命や財産を守る最も重要な時間なのだという。
そこで、その1時間の重要性を実体験することで災害への意識を高めてほしいと、防災情報の共有化と人的ネットワークの構築を目指す横浜市内の市民団体「防災塾・だるま」理事の片山晋(すすむ)さんがシミュレーションゲームを考案。19日(木)、神奈川区の「市民防災センター」で体験会が行われた。
会場となった市民防災センター
体験会には自治会のメンバーや大学の教員など約20人が参加。実践的なゲームを通じて災害時の課題や自分の行動を確認していた。
減災ゲーム「J-DAG」
では、実際どのようなゲームなのか。考案者の片山さんにお話を伺った。
考案者の片山さん
災害発生後の疑似体験ゲームとしては、静岡県が開発した「(H)避難所(U)運営(G)ゲーム(=HUG、ハグ)」が代表的なものだったが、災害が発生し、避難所に集まった人や物資を的確に配分するシュミレーションゲームだった。
そこで片山さんは「発災後の被害を最小限に食い止める知識や技能を高められる方法はないか」と考え、3年の構想の末、昨年12月に新しいゲームを完成させた。
それが「J-DAG(ジェイ・ダグ)」だ。
「J-DAG」は災害発生直後の1時間以内にその地域で発生し得る被害への対応を、自治体に見立てたグループごとに実時間と同じ1時間のリアルタイムで体験するというもので“Just Disaster Action Game”の頭文字を取った。
片山さんは地震大国・日本では「いつどこで大地震が起きても不思議でない」と話し、「地域全体として地震発生直後の対処についての認識が不足しているのでは」という。J-DAGは隣近所や自治会・町内会といった“小さなコミュニティーでの適切な情報収集や伝達”を重要視している。
その上で「J-DAGは、発災からの1時間をゲームを通じて繰り返し経験できる。その経験を地域に適した防災体制づくりに生かしてほしい」
と期待を込める。
J-DAGってどんなゲームなの?
ゲーム本番では参加者を「本部」と仮想自治体である「ブロック」に分ける。
「本部」から指定された時間に「指示書」を開くと、火災や倒壊した家屋に人が閉じ込められているなど次々問題が発生する。参加者は消火器やチェーンソー、食料など救助・生活に必要な資機材が置かれた(実際にはイラスト)「備蓄庫」に行って入手したり、本部や他ブロックに応援要請するなど、それぞれ対応策を考える。この間、「本部」はブロックや参加者ごとに対応策を考える力を養成するため、一切助言は行わない。
訓練で使うトランシーバーや仮想の資機材のイラスト
「ブロック」間や本部との通信は、携帯電話や固定の通信網が不通だった場合に備え、トランシーバーを使用する。