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【衆院選2014】12月14日(日)に投開票を迎える衆議院議員総選挙の争点は何?

ココがキニナル!

第47回衆議院議員総選挙が12月2日(火)に公示され、14日(日)に投開票が行われる。「アベノミクスの是非を問う」という選挙。アベノミクスをまとめ、争点が何かを探る。

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ライター:はまれぽ編集部

日本の国会は二院制になっていて、衆議院と参議院で構成されている。
法律や予算など重要なことを決めるのに、同じテーマをより慎重に議論し、また国民の多様な意見や利益を広く反映するために、別の議員たちで構成される衆・参の二院で2回話し合おうというのが二院制である。

衆議院の任期は4年、参議院は6年(3年毎に半数を改選)だが、衆議院は任期中に解散されることがある。
今回の選挙も解散によって行われる。前回は2012(平成24)年11月16日の衆議院解散に伴い、12月16日に施行されたので、ほぼ2年での選挙となる。
日本の衆議院は解散がとても多いので、事実上、衆議院の任期は平均2年半ほどになっている。

 

衆議院と参議院がある国会議事堂(フリー画像)
 

衆議院の解散は内閣不信任決議が可決された場合や、内閣が国民の審判を求める必要があるとする場合に内閣が解散を行うことができると解釈されている。

衆議院議員選挙にかかる費用はおよそ600~700億円。選挙を行えば多額の費用がかかるのだが、今回の解散については「理由なき解散」「大義なき解散」などという声も多かった。

 

各党の選挙活動
 

例えば、2005(平成17)年、小泉首相当時の「郵政民営化解散」は、自民党内にも反対派が多く、結果、評価はともかく、国民の審判を求める理由として、とても分かりやすいものだった。

今回の解散について、安倍首相は2015年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを1年半後の2017年4月に先送りするとし「重大な決断をした以上、国民の声を聞かなければならないと判断した。また「アベノミクス解散」と述べている。

何を問われているのか、どうもはっきりしないように感じる。
「いま選挙をすれば、自民党の議席数は微減で済む」と与党の議員が話していたという、とんでもなく自分勝手な解散だという報道さえある。

 

議席数確保の解散!? (フリー画像)
 

今回の選挙は争点が分かりづらく、また、争点に疑問を持っている人も多いように思う。

約700億円もの税金を使うのだから、何を国民に審判させようとしているのかを知ることは、私たちが投票する上で重要な判断の材料である。

そこで、東洋大学経済学研究科客員教授の南学(みなみ・まなぶ)先生に、今回の選挙の意義とともに、アベノミクスの内容を教えていただき、私たちが今回の選挙で判断すべきほかの争点などについて伺った。

また、南教授は、横浜市の職員として23年間勤め、市長室で内部ブレーンなども経験され、横浜市の情勢などにも詳しい。また、民主党政権時に行った事業仕分けにも「仕分け人」として関わった経歴がある。



アベノミクスを分かりやすく

 

南教授は元横浜市役所職員で、横浜市民でもある
 

南教授は、今回の解散は「わがまま解散」と切って捨てた。
今回の争点は大きく分けて(1)経済政策(2)国防・安全保障(3)エネルギー政策であると分析。
まずは(1)経済政策における「アベノミクス」とはどのような政策なのか、解説していただいた。

【1】「大胆な金融政策」
金融緩和により世の中に流通するお金を増やすことによって、経済を活性化しようとする政策。「金融緩和」とは、金利を下げ、日本銀行が国債を買い取るなどの政策のこと。市場に多くのお金が流通することで貨幣価値が下がり、物価が上がる。対外的には円の価値が下がるため円安となる。

アベノミクスでは以前より多く国債を購入。これにより、円安と物価の上昇を目指した。デフレーション(デフレ:物の価値が下がること)からの脱却を行おうとするもので、経済状況としては、穏やかなインフレーション(インフレ:物の価値が上がること)が良いとされる。

 

日本銀行本店
 

予定通り円安になり、特に輸出関連企業などは円安によって利益を拡大し、平均株価の上昇につながっている。しかし、同時に原材料などを輸入に頼る企業にとって円安は材料費の高騰につながり、利益を圧迫することになる。

また、物価も上昇しているが、経済状況が良いインフレによるものではなく、特に食料品などの値上げは円安にともなうものが多く、現状ではデフレから脱却できたとは言えない。

そもそも金融緩和は一時的なカンフル剤のようなもの。本当のデフレ脱却は、実体経済が回復するかどうかにかかっている。

 

金融緩和は一時的なカンフル剤
 

【2】「機動的な財政政策」
道路や鉄道などへ大規模な公共投資を行い、景気回復を行おうとするもの。
東日本大震災の復興需要や2020年開催予定の東京オリンピックもあり、建設業界では公共建設分野での価格高騰が起き、労働力不足になるほど好況である。余談だが、この時期に横浜市庁舎の建設も予定されている。

 

東京オリンピックなどで増える労働力
 

しかし、南教授によると、「昔は道路や新幹線を作ると地方に企業が進出するなど、投資の2倍とまではいかないがそれなりの経済波及効果が生まれ、地方も潤った」という。しかし、今は昔ほどの効果はなく、その工事に対して投資するだけで、プラスの波及効果が見込めないのだそうだ。上越新幹線などでは、逆に地方から首都圏への若者の流出に輪をかける結果になったという。
また、道路はほとんど使われなくてもメンテナンスに費用がかかり続ける恐れもある。

 

道路にはメンテナンスに費用がかかる恐れがある
 

【3】「民間投資を喚起する成長戦略」
農業・医療・エネルギー分野や、雇用などについて法律を改定し、「規制緩和」をすることで民間の需要と供給を増やしていくこと。現状は政策が伸び悩んでいる状態。

もし仮に金融緩和と公共事業で景気が回復したとしても、民間の経済力がなければ継続することができず一時的なものとなってしまう。そのため「3本の矢」のなかのこの戦略が成功することが必要不可欠である。

では、アベノミクスは成功なのか失敗なのか?

南教授は「失敗はしていないが、成功もしていない」と評価する。しかし、仮に政権が変わっても今の経済状況を一気に好転させることはできないだろうと言う。

現状では、程度や方向性は違っても、一定程度の消費増税や金融緩和は必要だろうと分析。
日本経済は今、岐路にある。将来を見据えて、個々に給与額が増加するなどといったかたちでお金が届く仕組みを作り、経済波及効果のより高いお金の使い方をしていかなければならない。

 

個々の給料増加までには、まだ至らない
 

また、少子高齢化の社会をしっかり支えられる人材の育成が今とても大切なこと。「特に若者の正規雇用を減らしていては人材が育たない」と南教授は指摘する。



消費増税の先延ばしは?



アベノミクス効果の期待に反して、2014(平成26)年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は前期比年率で1.9%減(2014〈平成26〉年12月8日現在)と、2四半期連続のマイナス成長となった。個人消費が落ち込んだためで、同年4月の消費税増税が一番の原因だろう。

 

2四半期連続のマイナス成長(内閣府経済社会総合研究所より)
 

「日本には、地方債を含めると1300兆円の借金があり、景気回復による法人税増もほとんど期待できない中、いずれにしても消費増税はするしかないだろう」と南教授は言う。
消費税は価格に応じた税率で均一に徴収するという意味では公平な税金だと言える。しかし、低所得者ほど負担が重くなるという短所もある。

「軽減税率を導入すべきなんでしょうか?」と問うと、「やらなきゃいけないけれど、今の政治家にはできないでしょう」という答えが返ってきた。

※軽減税率とは、食料品など生活必需品の税率を低く(あるいはゼロに)して、特に低所得者層の負担を軽減するというもので、欧米では実施されている。

「政治家には支持層や企業が大切だから、どこで軽減税率の仕分けをするかを決められないだろう」ということだ。

 

生活に欠かせない食品
 

アベノミクスは諸刃の剣なのかもしれない。しかし、野党も経済政策については有効な政策を具体的に挙げているようには見えない。南教授の言うように、現時点ではどこがやってもさほど変わらないのかもしれない。


経済政策以外の争点ついて伺ってみた。