【衆院選2014】12月14日(日)に投開票を迎える衆議院議員総選挙の争点は何?
ココがキニナル!
第47回衆議院議員総選挙が12月2日(火)に公示され、14日(日)に投開票が行われる。「アベノミクスの是非を問う」という選挙。アベノミクスをまとめ、争点が何かを探る。
ライター:はまれぽ編集部
今回の選挙で経済政策以外の争点は?
南教授は経済政策以外では、「集団的自衛権」と「原子力政策」について注目したいと言う。
集団的自衛権について、「議論しないうちに姑息に憲法解釈だけ変えるのは政治家の仕事ではない。憲法を変えるのならば、正々堂々とやるべき。正しい手続きで改正されるのならば、何の問題もない」と南教授は手厳しい。
2014(平成26)年7月1日閣議決定が行われた集団的自衛権
※憲法改正は、衆参両院の3分の2の賛成があって国会が発議し、その後行われる国民投票で過半数の賛成が必要となる。
従来、内閣法制局は、憲法9条は自衛のための戦力の保持は認めるものの、集団的自衛権の行使は憲法違反と解釈していた。
内閣は最高法規である憲法を正式な手続きを経ず、閣議決定のみで「密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、わが国民の生命・自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、集団的自衛権を含む『自衛のための措置』を可能にする」という解釈に変更した。
南教授は「憲法が現在の日本の状況にふさわしくないと思うのであれば、上記のような正式な手順に基づくべきである」と言う。
※立憲主義とは、国家権力を憲法によって制限するもの。いくら民主主義による多数決(選挙)によって選ばれた国家権力であっても、侵してはならない事を決めたものを憲法とし、法律などは憲法に違反してはならないという政治・社会システム。それ故に、憲法改正の手続きはより厳しいものとなっている。
集団的自衛権については、解釈の是非だけではなく、閣議決定のみで解釈変更を行ったというやり方や憲法改正まで考えて、判断すべきことだろう。
例えば、自民党は、憲法改正草案を発表しているので、9条に限らず、読んでみるのもいいかもしれない。
これまでに述べた経済政策のほか、南教授が争点に挙げた「集団的自衛権」と「原子力政策」についてマニフェストをまとめみた。
経済政策 | 集団的自衛権 | 原子力政策 | |
自民党 | 2017年4月に消費税率10%へ引き上げ。法人実効税率は数年で20%台まで引き下げ | 憲法解釈変更の閣議決定に基づき安全保障法制を整備 | 原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進める。 |
公明党 | 17年4月に消費税率10%へ引き上げ。中低所得世帯への家計支援 | 閣議決定を的確に反映するよう政府・与党で調整しつつ法制を検討 | 原子力規制委員会が策定した厳格な規制基準を満たすことを大前提に、国民、住民の理解を得て判断する。 |
民主党 | 消費再増税は時期を明示せず延期。生活の不安を希望に変える「人への投資」 | 閣議決定は撤回。集団的自衛権行使一般を容認する憲法解釈変更に反対 | 責任ある避難計画がなければ、原発を再稼働すべきではない。 |
維新の党 | 消費再増税は凍結。「稼げる国」へ徹底した競争政策 | 他国への攻撃でも、わが国の存立が脅かされる場合に、現行憲法下で可能な「自衛権」を行使 | 電力自由化、再生可能エネルギー導入促進で原発フェードアウト |
次世代の党 | 現時点での消費再増税に反対。既得権益打破による成長戦略 | 個別的・集団的自衛権の要件を明確化する安全保障基本法制を整備 | 「原発依存体制」から脱却する |
共産党 | 消費再増税中止。大企業応援から暮らし第一に転換 | 閣議決定は撤回 | 原発再稼働の方針を撤回し、輸出政策を中止する。 |
生活の党 | 消費再増税は凍結。非正規雇用の正規化 | 憲法改正を経由しない集団的自衛権行使容認は反対 | 原発の再稼働・新増設は一切容認しない。 |
社民党 | 消費税率は5%に引き下げ。社会保障の充実、貧困の防止 | 閣議決定は撤回 | 原発再稼働は一切認めない。原発の新増設はすべて白紙撤回。 |
各党のマニフェストには、代替エネルギーに関する記述もある。ここでは、自民党のマニフェストにも原発への依存度を減らし、再生可能エネルギーの最大限の導入・・・などの文言がある。
日本の技術をもってすれば、この再生可能エネルギーなどで世界をリードできるのではないだろうか。
この分野での規制緩和や援助という政策を期待する、画期的なシステムができれば、輸出などによる日本経済の復興にも大いに期待できる。
太陽光と風力で発電をしている
では、今回の選挙によって横浜市になにか影響はあるのだろうか、その呈についても南教授にお伺いした。
今回の衆院選が横浜市に与える影響について、南教授は「市庁舎移転やカジノといった事業ベースでは、ほとんど影響はないのでは」と分析。
背景として「地方には公共投資のような『利益誘導』の補助金がばらまかれるが、都市部、特に首都圏には金銭的な面での影響はない」のだという。
「横浜への影響はないのでは」と南教授
その上で「影響があるとすれば、横浜のような大都市の地方議会は国政の影響を受ける傾向があるので、与党の勝利がストレートに議会の力関係に影響するだろう」との見方を示した。
各党首の主張は?
11月29日(土)に行われた「ネット党首討論」での最後の一言から、各党首が有権者に最も訴えたいと思われる点を拾ってみた。
党首の主張 | |
自民党 | 私たちはこの2年間でデフレから脱却するチャンスをようやくつかむことができた。このチャンスを手放すわけにはいかない。3本の矢の政策を進め、この景気回復の波を地方に、中小企業、小規模事業所で働いている皆さんに届けたい。この道しかない。約束をしたことは必ず実行する。 |
公明党 | アベノミクスを進めることで、地方、中小、小規模企業、そして企業から家計へと及ぼしていく。景気回復を(市民レベルで)実感できるようにする。そして10%引き上げられたときには「軽減税率」を実現をして、この軽減措置も生活支援の実感を持ってもらうようにしていきたい。 |
民主党 | 政治の役割というのは社会的に弱い立場の人たちの居場所と出番のある社会をつくること。今の政治は強い者の声が大きくなって、強い者がますます強くなっていくという社会。これを是正しなければならない。そのためには民主党が国会の中でしっかりとした勢力を確保することが大事。 |
維新の党 | 政治不信を払しょくするためには議員や役人が率先して身を切る。維新は国会議員定数3割カット、給与3割カット、国家公務員、地方公務員の人件費 25兆円の2割カットで5兆円を出す。橋下徹さんが府知事になり府議会で多数を占めたら議員定数が2割減り、給与も3割カットされた。 |
次世代の党 | 今回の解散総選挙は「大義がない」「国費が600億円も掛かる」と言われているが、民主主義においてやはり「解散総選挙」というのは、ある意味の「大義」 だと思う。次世代の党としては、この解散を雄々(おお)しく受けて、国民の審判を仰いで、さらにしっかりとした政治を確立する。 |
共産党 | 日本共産党が伸びれば、日本の政治は必ず変わる。昨年の参議院議員選挙で共産党は議案提案権を得たので、ブラック企業規制法案を提出。この法案は厚生労働 省を動かし、集中的な実態調査、離職率の公表など、ブラック企業根絶に向け一歩踏み出した。特定秘密保護法の廃止法案も提出した。 |
生活の党 | 国民生活を守り景気を良くするという意味において、国民の収入を増やし、生活を安定させることが大事。国民生活に密接な関連を持つ農林・漁業であれ、雇用 であれ、医療であれ、セーフティネット(不測の事態や予想される事柄に対する備え)を充実させ、国民の暮らしを守っていく。 |
社民党 | 消費税増税を撤回し、(これまでの)5%に引き下げ、経済政策の抜本的な転換を行う。集団的自衛権の行使を認めず「平和憲法」を守り抜く。また、原発再稼働を許さず「脱・原発社会」を実現する。「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」に反対し、農林水産業をしっかり守っていく。 |
今回の衆院選について南教授は(1)経済政策(2)国防・安全保障(3)エネルギー政策を争点に挙げたが、ほかにも、東日本大震災復興、少子化対策、年金・社会保障制度など、改善すべき課題は多数あるだろう。
選挙に行こう
今回の選挙では、衆議院の小選挙区を5つ減らす「0増5減」の法律に基づいて、福井、山梨、徳島、高知、佐賀の5県で定数がそれぞれ3から2に減り、小選挙区の総定数は295小選挙区となり、比例代表を合わせた定員が475議席となった。
同時に17都県42選挙区の区割りも変更されたが、国会議員一人当たりの有権者数が選挙区によって異なるために生じる「一票の格差」は、減少したもののいまだに2倍程度となっている。
神奈川県の小選挙区は下の図のように区割りされている。
(※区割りについては「神奈川県の選挙区はどうやって決めたの?」の記事を参照)
前回衆議院議員選挙における神奈川県の投票率は59.87%で、前々回に比べマイナス8.39%だった。
4割以上が投票に行かないというのはとても残念なことだ。
特に若い世代の投票率の低さは目を覆うばかり。全国平均の数字だが、20~24歳は35.30%となっている。
そんな世代の学生に教える立場の南教授に若者たちの投票率の低さについて聞いてみた。
今ののんびりした生活に満足していて、危機感を持っていないのだと南教授。
今の大学生は、推薦入学などで試験を受けないで入ってくる学生が半分以上だとも教えていただいた。勉強もしないし、就職活動さえまともにしていない学生が多いという。
そんな学生たちの豊かさはいつまでも続くわけではない。今は重要な岐路にある。
勉強すると政治の矛盾が分かってくる。むしろ勉強もせずに選挙に行くだけ行くというのは危険でもあると、これもまた若者にも厳しい南教授だった。
取材を終えて
景気は回復してきているという人もいるが、実感していないという声も多い。両方とも本当で、格差が広がっているという見方もある。
先月も5ヶ月連続で生活保護支給世帯は最多となった。そして、消費増税の先送りによる財源不足で低年金者対策が先送りになるようだ。
一方、4月の消費増税時に、国家公務員給与は8.4%増加しており、年末賞与は11%の大幅増となるそうだ。
財源が無ければ社会保障もままならないのは当然かもしれない。
しかし、議員や公務員の数や報酬の削減などの身を切る政策や、公務員の天下りの禁止、税金の使い道などについても検討してほしいと思う。
私たちの1票1票が日本の将来を決める。
争点は有権者一人ひとりが決めることだと思う
―終わり―
神奈川県選挙管理委員会
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f5/
不在者投票の方法
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f5/p857897.html
福三さん
2014年12月11日 15時33分
自公連立に投票したり、選挙に行かない人は原発再稼働や消費税値上げなど賛成する人ですよね。原発なんか世界最高レベルの基準とか言っていますが、災害国日本では話にならない基準です。東日本大震災時で横浜で観測された揺れには耐えられない、笑っちゃうような基準ですから。
ホトリコさん
2014年12月11日 12時46分
良い内容だとおもいます。しかし、我ながら原発は再稼動賛成派がほぼ100%だと感じていましたから、意外でもあり嬉しくもあります。