住宅街の中を通る短い道路

綱島街道と県道106号線の交差点付近の歩道上にキニナル植込みがあるという、いったいどのようなものなのだろうか？
　

投稿にあった写真

早速現場に向かった。
　

キニナル植込み（青矢印）

新横浜方面から綱島街道を進み、鶴見川にかかる「大綱橋」を渡る。
　

新横浜方面から綱島街道を東京方面へと向かう

すると綱島に入ってすぐ、左側の歩道の中ほどが不自然に広くなっていて、そこに三角形をした植込みはあった。
　

綱島に入ってすぐ。左側の歩道部分の中ほどに広いスペースの植込みがある

コンクリート製の囲いの中に草花や低木が植えられ「振替納税推進の街」という税務署の看板も立っている。
投稿のように、歩道の広くなっている部分に設置されているとはいえ、ない方が歩行者も歩きやすいだろう。しかもその植込みの周りに自転車が停められたりしているため、ますます歩道を歩きづらくさせている。
　

植込みの周りの自転車が歩道を狭くしている

よく見ると植込みの中に「よこはま花と緑の港北リーダー会」という看板がある。この団体がここに花を植えているようだ。

調べてみると、この団体は、緑化推進事業を行っている公益財団法人横浜市緑の協会と関係があるとのことで、連絡を取ってみた。
すると担当者は「そこは市の土地で、お借りして花を植えさせていただいています。その場所は土木事務所で管理しています」と答えてくれた。
　

「花と緑の港北リーダー会」という看板
　

花と緑の港北リーダー会が植えた花

そこで港北区土木事務所に電話で伺うと「綱島街道の拡幅工事の際に、原道と拡幅道路が合わさって出来上がった、三角形の余分な土地の可能性があります」と答えてくれた。
さらに詳しく調べてくれるとのことで、現地を訪れた際にお話を伺うことにした。
　

植込みで左右の歩道の幅を均一にさせているようだ

地元住民に話を伺う

再び現地を訪れて、地元の事情に詳しい人を探した。

綱島駅前はバスロータリーなども比較的狭く、昔ながらの駅前の雰囲気だ。周辺には新しく出来た店が多いが、中でも長く続いているお店の一つを見つけて、中に入った。

店主のKさんに、以前の植込みのあたりの様子に関して伺うと「20年ほど前には、あのあたりには、洋品店や八百屋や新聞店などの小さいお店が並んでいて、昭和40年代初めまで鶴水（かくすい）という温泉旅館が道路にせり出した形で建っていました」

「その歩道の場所は以前から三角形の形をしていて広く、歩道の隣は、門があり車が入れる一段高くなった鶴水へと入る道がありました。そしてその隣には裏路地へと続く道がありました」と答えてくれた。
　

植込みの場所の内側は鶴水への道になっていた（青矢印）（昭和39年港北区明細地図）
　

画面真ん中あたりに鶴水への道があったようだ

　

鶴水があった場所は、現在はパチンコ店になっている

「そして取り壊された後は、大正堂家具店となり、現在はパチンコ店になっています」と答えてくれた。
　

大正堂のころも歩道は三角の形（青矢印）になっている（昭和45年港北区明細地図）
　

1970（昭和45）年の明細地図と現在の地図を合わせたもの
　

大正堂家具店があったころの航空写真。投稿の植込みのあたり（青矢印）

温泉旅館に関して伺うと「このあたりには黒いお湯が出てそれを沸かした温泉がありました。東京に近いため、熱海や山梨・石和（いさわ）温泉がはやる前はここは保養所として繁盛していました」
　

閉店した綱島の温泉施設「東京園」

「そして多くの温泉旅館がありました。商談や接待、保養を目的とするものでしたが、中には連れ込み宿、今のラブホテルのように使う方もいました」と答えてくれた。
　

周辺には多くの温泉旅館や割烹旅館があった。割烹旅館・入船本店（緑矢印）
　

現在も残る営業を停止した旅館
　

割烹旅館・入船本店
　

旅館のはなれ
　

壁にはタイル画が飾られている
　

以前温泉旅館があったあたり
　

鶴水があったあたりに建つホテル
　

その裏手にはラブホテルがある

植込みに関して伺うと「今はその場所には、道行く人の目の保養になればいいと、花壇を作り花を植えています。しかし笹の根が出てきてほかの花の邪魔になるので困っています」と答えてくれた。
　

花と緑の港北リーダー会の人たちとKさん