日々発展目覚ましい横浜の主要駅付近において活動していると、時には都会の喧騒から一歩身を引いて穏やかな一時を求めたいと言う欲求は誰しも自然に生ずるものと思われる。

今回は横浜の主要駅の中から戸塚駅、鶴見駅、横浜駅周辺において、「チェーン店では味わえない、独特の良さがオススメできる」という定義で穴場の喫茶店をリサーチしてみた。

昔と変わらぬ雰囲気が味わえる、戸塚駅『珈琲貴族』

まずは戸塚駅から徒歩5分、戸塚図書館近辺の商店街にある「珈琲貴族」。
穴場のカフェを探した結果、地元の名店と評判のこの店に関心を持った。
　

落ち着きのある佇まい

平日午後1時頃に入店。席は地元の常連で半数ほど埋まっていた。
カウンター席に通され、分厚いと噂の「貴族トーストセット」を注文。ドリンクはホットコーヒーを頼む。
　

貴族トーストセット（680円）

前もって聞いてはいたが本当に分厚い。
トーストにガムシロップをしみこませ、バターを添えてある。

噛り付いてみたが埒が開かず、素直にフォークとナイフを切れ目に当てて分割して食べ始める。
少々カロリーが気になるが、シロップとバターの相性は抜群で食が進む。

食べながらマスター夫妻と会話を交わす。長くやっているので取材等と言われる事も無いではないが、目立つ売りを作っているわけではないので基本受けていない。

開店から約35年、大きく変える事は無く今までやってきた。
貴族トーストも開店当初からのメニュー、との事。

話の間に何とか完食。パンでこうも腹が膨れるとは、新鮮な感覚であった。
　

マスターの森田さんご夫妻

　

年季の入ったテーブルと椅子は、落ち着きと安心感を与えてくれる

70年代カフェブームから堅実な経営で35年。
地元に愛され、開店当初から通い続けている方も多いのだとか。

特徴の無い店とマスターは繰り返していたが、ここ近年の激しい世の変遷にも動じず、スタイルを曲げない姿勢は十二分に個性的であると思う。

マスターの愛嬌が微笑ましい、鶴見駅『タンゴ』

続いては鶴見駅から道なりに徒歩10分。アーケード商店街『レアールつくの』の中にある、喫茶タンゴ。
日替わりパスタが食べ放題になるサービスを始めとした、豊富なメニューが評判のお店らしい。
　

素朴な店構えの前に液晶モニターがあり、商店街の宣伝映像が流れている

　

『喫茶タンゴ』マスターの高橋英昭さん

この店のマスターは、鶴見区商店街連合会理事も務めている高橋さん。
開店から約35年、2回の改装を行ったが開店当時からの佇まいを保ち続けている。

商売のメインはランチメニューで、昼食時は満員になるそうだ。ピークを過ぎれば落ち着いた喫茶店の様相。
メニューの売りはなんと言っても920円で何回でもお代わり自由の日替わりパスタ。この日はナポリタンであった。
　

ナポリタン特盛り。サラダとコーヒーor紅茶がセットになる

「店の個性を見てもらうには特盛りが一番」と御主人。
並がパスタ130g、大盛りが1.5倍、特盛りは2倍との事。自ら個性と標榜するだけになかなか迫力のボリュームである。

午後3時まで腹になにも入れずにいたので食欲は十分。
大変素朴で懐かしく、場の空気を裏切らない味である。
　

食後のコーヒー（セット料金）。お客のニーズから濃い目に入れているとの事

日替わりパスタのお代わり最高記録は特盛り4皿。
達成したお客はギャル曽根のような可愛らしい普通の女性であったそうな。
　

常連のニーズに応えるうちに雑多になったというメニューもこの店の特徴

　

スイーツ類も充実している

メニューは日々増え続けており、季節限定のメニューも多い。

例えば、この夏限定で出していた「アイスコーヒースカッシュ」は、「上島珈琲店の冷珈ソーダを見よう見まねでパクってみた」と満面の笑みで言うマスターの愛嬌には本気で笑ってしまった。
　

年季を感じさせるが、手入れの行き届いた店内

老若男女問わず受け入れてくれる、そんな懐の深さを持った店である。
是非昼下がりに訪問し、ゆるやかな時間と場の愛嬌に触れてみて頂きたい。

大変面白い時間を過ごさせて頂いた、と感謝し、店を出る。