台風19号の被害で休館が続く「川崎市市民ミュージアム」の状況は?
ココがキニナル!
水没した川崎市市民ミュージアムの現状が気になります。大手マスコミは全然報道しないが、真実を追究して報道して頂きたいと念願しております。(金沢猫さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
復旧に向け奮闘している川崎市。市内外から寄附の申出や問い合わせがきているため、市民ミュージアム収蔵品の修復に向けた寄附金の受付を開始した。
ライター:はまれぽ編集部
2019(令和元)年10月12日に日本列島を襲来し、大きな被害を残した台風19号。
はまれぽ編集部は今まで、武蔵小杉と箱根町の被害状況をレポートしてきた。
台風19号に関する記事はこちら
今回は、川崎市の博物館と美術館の複合施設で、貴重な絵画や戦前の漫画本などおよそ26万点を収めた9つの収蔵庫がすべて浸水する被害をうけた「川崎市市民ミュージアム」の現状についてレポートする。
台風19号による「川崎市市民ミュージアム」の被害
「川崎市市民ミュージアム」は、「都市と人間」という基本テーマを掲げ、1988(昭和63)年11月に開館。
川崎の成り立ちと歩みを考古、歴史、民俗などの豊富な資料で紹介する「博物館」と、川崎ゆかりの作品のみならず、都市に集まる人々の刺激から生み出されたポスター、写真、漫画、映画、ビデオなど、近現代の表現を中心に紹介する「美術館」の複合施設だ。
2019(令和元)年11月20日の市民ミュージアム 車両が入れないよう封鎖
市民ミュージアムの掲示板にはお知らせが貼られている
等々力補助競技場側
等々力アリーナ側
台風19号によって水没被害にあい、当面の間休館を余儀なくされている「川崎市市民ミュージアム」だが、いったい館内はどんな状況になっているだろうのか。現状と今後について川崎市市民文化局の担当者にお話を伺った。
ー市民ミュージアムの被害状況は?
「建物被害は概算で30億円(電気・空調設備復旧費用)となっており、収蔵品被害は現段階では算出困難ですが、動産総合保険対象の収蔵品評価額は約42億円となっています。
最大2メートル強の浸水があった地階では、収蔵品の搬出に向けて、散乱物の整理や通路確保を行っています。泥はほとんど無いが収蔵庫の床下等に一部水が残っていて、水を吸って膨張した床板を剥す作業や動かなくなった移動棚を壊す作業に時間がかかりました」
館内が水没した時の様子(提供:川崎市)
ー絵画や浮世絵、古文書、民具、写真、漫画雑誌、映画のフィルムなど約26万点の美術品や資料の被害状況と把握は?
「映像フィルムなど一部の収蔵品は救出しているものの、個別作品の状況までは確認ができていなく、被害の全容は把握できていません」
貯蔵庫は棚が倒れ貯蔵品が散乱(提供:川崎市)
ーハザードマップでは危険性が示されていたにも関わらず、なぜ対策が行われなかったのか
「浸水の危険性は十分に認識した上で、建物の老朽化等の課題と併せてミュージアムの今後の取組みについて、庁内検討を行っていたところで今回の台風19号の被害にあってしまいました」
水圧で壊れた貯蔵庫の扉(提供:川崎市)
ー復旧の進捗と今後の対策は?
「ミュージアムは当面の間休館としていて、施設管理以外の通常業務は行っていません。停電のため空調管理ができない収蔵庫では劣化が進むため、国立文化財機構など専門家の支援を得ながら収蔵品の救出に専念しています。
また、収蔵庫や機械室などミュージアムの心臓部が被災しているため、復旧の見通しは立っていません。まずは収蔵品の保護に全力を尽くした上で、ミュージアムの今後について十分な検証・検討を行っていきます」
19号の被害により、最大で2メートル強の浸水があった市民ミュージアム。その影響は甚大で、建物や収蔵品におよび、美術品や資料などは、現段階でも被害状況が算出できないほど。
関係者は、今まさに復旧へ向けて取り組んでいる。
取材を終えて
2019(令和元)年11月15日、川崎市は、台風19号による浸水被害の復旧事業費などを盛り込んだ、総額約45億5500万円の2019年度一般会計補正予算案を発表。その予算案には市民ミュージアムの復旧事業費約2100万円が盛り込まれた。
また同月14日には、市内外から寄附の申出や問い合わせがきていることから、市民ミュージアム収蔵品の修復に向けた寄附金の受付も開始した。
復旧の見通しが立っていないため、再び利用できるようになるのが当面先になる「川崎市市民ミュージアム」は、貴重な美術品や資料などの救出に全力を尽くしている。その収蔵品は、川崎市のみならず、日本の財産と言えるだろう。市内外からの寄附金を活用して守り抜いてほしい。
ー終わりー
「川崎市市民ミュージアム」
https://www.kawasaki-museum.jp/
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金沢猫さん
2019年12月04日 11時09分
さっそく取材・報道していただいて有難うございました。県博協や美術館会議がレスキューに参加し、近隣の博物館の方々も交替で作業にあたられているようですが、物凄いカビ被害とか。被災資料の規模・分量を考えると、とても追いつかないでしょう。もっとオープンなかたちで市民参加のレスキューを立ち上げるべきだと思います。指定管理者化に賛成してミュージアムの運営体制の弱体化を招いた市議会議員の皆さんも積極的にレスキューに参加されることを望みます。それにしても浮世絵収集家の斎藤文夫先生、コレクションをここに寄託しなくて良かったですね。新たな展示施設がオープンするとか。寄託を受けて運営するのが川崎市(その外郭団体?)のようですから、不安は残りますが……