歴史が不明な「日本ガソリンスタンド発祥の地」記念碑の真相は?
ココがキニナル!
横浜駅東口にある「日本ガソリンスタンド発祥の地」の記念碑。詳しい経緯が記されておらず、横浜で日本初のガソリンスタンドが開業したという文献もないそう。真偽が気になります(MRハニーさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「初のガソリンスタンドの場所」ではなく「輸入した灯油を溜めて販売する」というガソリンスタンド業務のようなことが行われた横浜油槽所の一画と思われる
ライター:橘 アリー
灯油を溜めて販売した場所だった!?
図書館で資料を探してみたところ、1984(昭和59)年にモービル石油株式会社が発行した、「石油ものがたり」という本を発見。その本には、日本での石油の歴史が詳細に書かれており、「日本ガソリンスタンド 発祥の地」の手掛かりになることも書かれていた。
「石油ものがたり:モービル石油小史」
(田中敬一編/モービル石油株式会社広報部)
その本によると、日本での石油の歴史は、灯油の輸入から始まっている。
日本への灯油の輸入がはっきりと記録されているのは1868(明治元)年で、横浜で灯油が初めて輸入されたのが、1870(明治3)年だそうである。
横浜は、当時、日本の総輸入量の81%を占める灯油の主要輸入港だったようだ。灯油の輸入といっても、現代のようにタンカーで運んで来るのではなくて、木箱に詰められていたそうだ。主にアメリカや中国から輸入していた。
「石油ものがたり」の横浜油槽所が造られる経緯が書かれている
1888(明治21)年になって、日本で初めてロシアの灯油が横浜に輸入されるようになり、これも当初は木箱で輸入していた。その後、槽船(タンカー)によるバラ積みで輸送することが計画された。
しかし、当時の日本には、石油(灯油)を溜めておく油槽所がなかった。そこで、ロシアの灯油の受け入れ体制を整えるため、神戸の和田岬に油槽所が設置され、1893(明治26)年2月に、日本に初めて槽船(タンカー)が入港した。
横浜では、浅野総一郎氏(浅野セメント・現日本セメントの創立者)が、1891(明治24)年に和田岬に油槽所を設置した会社と契約し、1893(明治26)年10月に浅野石油部を設立。槽船(タンカー)で輸入したロシアの灯油の販売に乗り出した。
その時に、横浜の平沼(現在の横浜駅裏手、当時は海岸)に横浜油槽所が作られた。小売ではないかもしれないが「油槽所に灯油を溜めて、そこから販売する」という販売形態が、現在のガソリンスタンド業務のはじまりのような形になったと考えられる。
横浜油槽所の所在地である「現在の横浜駅裏手で当時は海岸だった場所」というのは、現在「日本ガソリンスタンド 発祥の地」の記念碑が建っている場所が、当時の横浜油槽所の一画であったと考えられないだろうか。
正確な場所の特定は難しいが、内容の確認のために、ほかの資料も探してみたところ、1958(昭和33)年に日本石油株式会社が発行した「日本石油史」にも、似たような記述があった。
そして、横浜米油株式会社で聞いた、日露戦争の頃というと、1904(明治37)~1905(明治38)年で、1893(明治26)年の浅野石油部の設立から10年後の事。横浜米油株式会社の社内で伝え聞いたという時期と近い。
「日本石油史」
取材を終えて
記念碑は、日本ではじめてのガソリンスタンドがあった場所、という意味での「日本ガソリンスタンド発祥の地」というわけではないようだ。しかし、「輸入した灯油をいったん溜めて、そこから販売する」という、現在のガソリンスタンド業務のようなことをしていた横浜油槽所があった一画であったと考えられる。
正確には分からなかったが、横浜は日本の石油の歴史と深く関わりがある。
「日本ガソリンスタンド 発祥の地」の記念碑には、日本の石油時代を切り開いてきた場所だという想いが込められているのではないだろうか。
―終わり―
ジュピさん
2013年03月05日 23時52分
1年ほど前に、自分も調べたことがあります。インターネットでいろいろと調べただけですけど、だいたい同じような結論に達しました。正しい由来の意味は八城さんにお伺いしないとだめだと思っていたのですが、どこにおられるか不明だったんですね。著名な方ですので、ご健在ならすぐにわかるかと思っていたのですが、残念です。ご健在ならご高齢にもなられてきていますので、ぜひ、探してみつけてお話をうかがえるとうれしいです。
ふーさん
2013年02月25日 23時14分
テレビ局でさえ、諦めた追跡調査をここまで出来るとは、はまれぽの取材の層の厚さみたいなものを感じます!!
たにけいさん
2013年02月25日 22時15分
写真にもあるように横にある石や看板と同じ、仕切りだか飾りの一種くらいにしか見ていませんでした。目を凝らすと思わぬ足跡が残っているものなんですね。