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【再掲載】横浜の歴史遺産を発見! 43年前に廃止となった市電の停留所の標識を追う!

ココがキニナル!

南区睦町一丁目の国道16号線沿いにあるハンコ屋好田印房さんの店の外側に、かつて走っていた市電の停留所の標識と思われる物がひっそりと存在。この文化財は今後どうなる?(横濱マリーさん/ゆがみ小僧さん)

はまれぽ調査結果!

市電が廃止された際に廃棄されかけた市電の「行き先案内板」を好田印房さんが記念に譲り受けた。撤去の予定はないとのことであった。

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ライター:篠田 康弘

貴重な市電の遺産たち



好田さんから、ここから滝頭方面に向かう途中に市電の看板が残っていると伺ったので、足を伸ばして確認してみることにした。

好田印房から滝頭方面に歩くこと10分少々で、市電の看板がある店に着いた。
 


市電の看板が残されている店。渡辺商店


商品が少しかぶっているが、右端に白いものがあるのが分かるだろう。あれが看板だ。
 


拡大した写真。「根岸橋」と書かれている


店内にお邪魔して、ご主人の渡辺さんにお話を伺おうとしたところ「取材なんかいいよ」と言って、どうしても詳しいお話を聞くことはできなかった。

そのような中でもただ一言「あれを無くす気はないよ」とだけ話してくれた。理由を聞くと「すぐそこに根岸橋の停留所があったからだよ」とのことであった。
 


渡辺商店の前から根岸橋を眺める。交差点の付近に停留所があったそうだ


詳しい話を聞くことはできなかったが、渡辺さんの市電に対する愛着の深さはひしひしと伝わってきた。

根岸橋から、横浜市電保存館がある市営バス滝頭営業所まではすぐそこだ。何か標識などに関する話を伺えればと思い、こちらにも足を伸ばしてみた。
 


横浜市電保存館


市電保存館の山崎勲(やまざき・いさお)さんにお話を伺ったところ「車両が残っているところはある程度把握しているが、標識や看板についてはちょっと分からない」とのことであった。

そして山崎さんが「そういえば、標識や看板じゃありませんが、うちにも古いものがひとつありますよ」と言って、保存館の前にある鉄のポールを指さした。
 


市電保存館の入り口にある鉄のポール


こちらのポールは、1928(昭和3)年に京急線神奈川新町駅付近に建てられた、市電の架線用のポールだそうだ。市電廃止後も奇跡的に残っていたが、2007(平成19)年に道路整備のために撤去されることになり、市電保存館が譲り受けたとのことであった。

「鋳物(いもの)入りのとてもしっかりしたもので、錆びているように見えますけど、触っても手に錆びがつかないんですよ」と山崎さんは話していた。

先に紹介した標識や看板よりも、こちらのポールの方が古いものだろう。これが横浜市電の最も古い遺産であろう。貴重なものを見ることができて本当によかった。



正真正銘の横浜の歴史遺産



先のような記事を掲載したところ、多くの読者から「これは市電ではなく市営バスの標識ではないか?」という投稿が寄せられた。標識の行先案内の「76 98 滝頭ゆき 113 磯子ゆき」という系統は市電時代には存在していないということと、市電の標識は渡辺商店の看板のように四角かったというのがその理由であった。
 


市電の系統は18までしかない
 

このような系統は、市電には存在しない


先に書いたように、寄せられた投稿の中には「バス停の標識ではないか」という指摘もあった。
 


市営バスのバス停。何となく標識と似ているような気もする


この標識は本当に市電の標識なのだろうか? 真実を知るべく、再度関係者への調査を行った。

まず所有者の好田さんに再度確認したところ、行先表記については「もらった時は市電の行先が表記されていたんだけど、それから10年後くらいに、色落ちがひどいんでペンキ屋さんに塗り直すように頼んだら、当時のバスの系統を書かれちゃったんだよ」とのことで、以降直さずにそのままにしているとのことであった。

なるほど、系統の疑問は解消されたが、形状についての疑問は残ったままだ。
好田さんは「市電の停留所に設置されていた標識なのは間違いないよ」と話していたが、やっぱりキニナル。市電と市営バス両方を管理している横浜市交通局になら、何か参考になる資料が残っているかもしれないと思い、横浜市交通局に何の標識か調査協力を依頼した。
 


横浜市交通局


市電が走っていたのは40年以上前の話なので、交通局でも現在はどの課が担当かは明確ではないとのことであったが、今回は自動車本部路線計画課の真籠俊彦(まごめ・としひこ)課長が相談に応じてくれた。
 


自動車本部路線計画課の真籠課長


今回の標識の写真を見せて、これまでの状況を説明したところ、真籠課長からこのような回答をいただいた。

まず系統については「76、98、113系統は市電には存在しません。これは1972(昭和47)年4月1日に『市電代替路線』として、市電の6、8、13系統を受け継いで運行開始した市バスの路線です。現在では113系統はそのまま、76系統は156系統、98系統は158系統に変わりましたが、末尾の番号は引き継がれ続けています」とのことであった。
 


系統の変更後も、市電時代の末尾番号を受け継いでいる113、156、158系統


次に「バス停の標識だとすると、時刻表や路線図を掲げるスペースがないため、単独では必要な用途を満たしません」とのことであった。
 


確かに時刻表や路線図はない


そして最後に「何より所有者の『もらった当時は古い系統が書かれていた』という証言が決め手になると思われます」とのことであった。市電、市バス両方の管理団体である横浜市交通局の見解なので、この標識が市電の停留所に設置されていた標識であることは間違いない。

加えて以下の写真を見ていただこう。好田印房の標識と同じ標識が、市電の停留所に設置されているのが見てとれる。
 


市電の停留所の写真(1970〈昭和45〉年3月 本牧三渓園前
『なつかしの鉄道写真館 番外編』提供)


横浜都市発展記念館の岡田直(おかだ・なおし)さんの話によれば「この丸い標識は『行き先案内板』といい、当時の写真を見ると、停留所名の標識とは別に必ず設置されていたようです」とのことであった。ポールの部分には広告が入るが、入っていない場合もあるそうだ。

参考までに、同時期の市バスの停留所の写真も掲載しておこう。左手前にバス停の標識が映っているが、当時から形はほとんど変わっていないようだ。
 


当時の市バスの標識の写真(1970〈昭和47〉年3月 滝頭
『なつかしの鉄道写真館 番外編』提供)


市電を実際に利用したことがある方は、これらの写真を見て当時の様子を思い出したことだろう。この標識は、正真正銘の横浜の歴史遺産なのだ。



取材を終えて



横浜市民の心の中には、今でも市電が走っている。取材を通じてさまざまな人に話を聞き、そんな思いが強くなった。本文中にも記したように、好田さんも渡辺さんもあの標識や看板を撤去するつもりはないそうなので、皆さんも実際に一度足を運んで、横浜の歴史遺産を自分の目で確かめてみてほしい。


―終わり―
 

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  • 記事中の市電路線図の写真に「市電の系統は18までしかない」と書かれていますが、23,26系統もありました。確か日曜、祝日運転で、23系統は屏風ヶ浦(あるいは芦名橋)−吉野町3丁目−羽衣町ー桜木町(ここで26系統に看板をかけかえたのだと思う)ー前里町4丁目ー杉田(?)、逆回りもありました。平日は16−18系統の循環でこれは最盛期の路線図には必ず書かれていますが、インターネットの画像検索で探しても23−36系統が書かれている路線図は見かけません。もっと古い時代、昭和20年代末から30年代はじめにかけては、普通の黒看板の6系統に混じって、赤丸黒字の6系統が走っていました。これは野毛大通り(桜木町といっていたはず)から左折して横浜駅方面へ向かっていました(終点は東神奈川?)。この赤丸6系統(私たちは丸6と呼んでいた)もほとんど忘れられているように思います。

  • 「よこはまいちばんさん」が「市電全盛時代にはJR根岸線は磯子までは開通していなかったので、市電で磯子ゆきはあり得なかった筈(現磯子駅付近は森と言う電停名称だった)。」とコメントしていますが、「磯子」という停留所(後に「磯子浜小学校前」と改称)はありました。ただ、折り返しの線はありませんでしたから、「磯子」行きはなく、折り返し設備のある、「屏風ヶ浦」行きでした。私が小学校に入る頃【1950年代前半】は「屏風ヶ浦」折り返しもなかったのかもしれません。「芦名橋」の折り返しの次に折り返し可能だったのは次は終点の「杉田」だったのではなかったか?市電が廃止されたとき、路面にしいてあった敷石が販売されました。私の家でも20枚程度敷石に使っていました。(現在は駐車場の舗装の下になってしまいました。)

  • 中村橋付近に住んでいますが昔の写真を見たら好田印房さんの標識が写真に写っていました。あの標識は間違い無く市電の標識です。

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