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横浜にこんなすごい会社があった!Vol.6「信号システムなどのトップメーカー株式会社京三製作所」

ココがキニナル!

横浜にこんなすごい会社があった! 第6回は私たちの身の回りにあって安全や快適性を守ってくれている信号システムなどのトップメーカー「株式会社京三製作所」をご紹介!

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ライター:吉田 忍

鉄道信号システム



続いて、鉄道信号システムについて本社でお話を伺った。

京三製作所は鉄道に関して、車両と駅と線路以外のほぼすべてを作っている会社でもある。
列車運行管理システム、自動列車制御装置(ATC)・自動列車停止装置(ATS)といった列車の安全運行システムから、信号機、遮断機、転てつ器(ポイント)や、列車案内表示板などに至る。つまり、列車を走らせる仕組みすべてを作っている。
 


信号事業部 フェロー(技監)島添敏之博士(工学)


「横浜市を走る鉄道会社では、東急と京急のシステムのほとんどに京三の製品を採用して頂いています」と島添さん。

時間通りに運行される列車とその安全管理。私たちは日々、京三製のシステムによって、快適に暮らしているのだ。

まずは鉄道関連の歴史から伺った。

京三製作所は1917(大正6)年、東京市淡路町に東京電機工業として創立し、医療用電気機器、電機測定機器などの製造販売を目的としてスタートしたが、翌年に京橋三十間堀(きょうばしさんじっけんぼり)で創業していた京三商会の小早川社長に経営が委ねられた。京三は京橋の京と三十間堀の三から付けられた社名だった。

1921年(大正10)年、国内初となる電気式鉄道信号装置とインピーダンスボンド(軌道回路電流を遮断し、電車の電流を流す機能)を開発。
 


国内初の電気式鉄道信号装置(※画像提供 株式会社京三製作所)


この日本最初の電気式鉄道信号は阪神電鉄に設置されたが、これが鉄道信号メーカーとなる京三製作所の礎となった。

1933(昭和8)年には、駅構内の転てつ器、信号機を制御する日本初の継電連動装置を開発し、京王の渋谷、永福町、吉祥寺に設置された(当時の帝都電鉄の新線開通時)。

例えば、各駅停車を指定のホームに停車させ、後から来た急行が通過するために、転てつ器を切り替え、各駅停車の信号は赤、急行の信号は青にするなどを連動させて制御するもの。
人間が間違えて個々の転てつ器や信号機の操作を行おうとしても、連動してそれを防止する。

工場を案内していただいたので、作られていた機器などを紹介しながらその後の歴史をたどってみよう。
 


ある駅に設置される継電連動の制御装置。ボタンにより信号や転てつ器が作動する
 

こちらはスイッチがボタンではなくレバー(てこ)。鉄道会社ごとにさまざまな仕様がある


1936(昭和11)年、列車集中制御装置(CTC)を開発。運転指令所や列車制御所で一定区間の信号や転てつ器を連動装置経由で遠隔制御できるようにしたシステムだ。
 


CTC装置の組み立て配線ではんだ付けをする斎藤成克さん。京三バトミントン部の部長でもある


1963(昭和38)年に東海道新幹線の開通にあたり、ATC装置を開発。これは、速度や列車間隔を制御するシステムで、列車の安全を確保できるこの技術が新幹線の時速210kmという高速走行を可能にした。

1969年(昭和44)年には、列車総合運行管理装置(TTC)を開発。ダイヤを基に、さまざまなシステムを一括で管理し制御するシステムだ。
 


全線を23のパネルで表示している小田急線のTTC(OTCと呼ばれている)が作られていた


そして1981(昭和56)年には、世界初の無人運転式中距離運送交通システム用信号保安設備(UTO)を開発。神戸のポートライナーの運行が開始されている。その後も、UTOはゆりかもめなどに導入され、自動運転システム(ATO)は、つくばエクスプレスや、東京メトロ南北線などに導入されていった。

1984(昭和59)年、電子連動装置(リレーではなくコンピュータにより制御する連動装置)を開発、東急、中央林間駅に設置された。

1988(昭和63)年、横浜博覧会に登場したリニアモーターカーの制御装置を開発したのも京三製作所だった。

1990(平成2)年には、結線データ方式(LDC)の電子連動装置を開発。アナログからデジタルへの移行を容易にした画期的なこの方式は大きな成功をおさめ、海外からも注目を浴びた。
 
現在では、電子連動装置だけでなく、電子踏切制御装置、ATC装置、運行管理装置など、鉄道信号システムの個別設計全般にこの結線データ方式が適用されている。実は、この結線データ方式を考案、実現したのが今回お話を伺った島添博士。とてもすごい人だったのだ。
 

 
島添博士はとてもすごい人だった

 
最近あちこちで見られるようになったホームドアでも、京三では同時に転落防止の可動式ステップが出てくるものを開発している。これは単純に転落を防止するだけでなく、車イスやベビーカーでの乗り降りも容易になるため、海外からもかなりの問い合わせを受けているそう。

そのほか、HSST(常電導磁気を使うリニアモーターカー)の実用化なども日本初。上記でご紹介したのも実は一部で、鉄道関連での日本初や世界初は枚挙のいとまがないほど。

京三の設計は「人は必ず間違う」ということを前提に行われている。例えば、欧米などで主流のATSは先の信号が赤になった際、運転手がブレーキを作動させるのが遅れたらそれを検知して機械がブレーキをかけてくれるシステム。一方、京三が開発したATCは、信号が赤になった時点で自動的にブレーキを作動させはじめる。
 
「運転手が信号を見逃したことを検知してからでは間に合わないこともありえます。安全に関しては、確実性を高めることが不可欠だと考えています」と島添さん。

「面白いエピソードはありますか?」と伺うと、「ホームドアを一夜にして設置する方法」を教えてくれた。
 


工場にあったホームドア


鉄道の駅でなにか工事をするには、終電と始発の間の短い時間で行わなければならないため時間が限られてくる。ホームドアは設置してから運用するまでには数週間の調整期間が必要なのだが、ホームの一部だけにホームドアが設置されている状態は見た目にも美しくない。安全面からもせめてドア自体の設置だけでも一晩で行いたいと考え出された方法。

まず、予めホームに取り付け金具の基礎だけ設置しておく。
そして、車両基地にある電車にホームドアを乗せて終電後に走らせ、駅に着いたらホームドアを持って降りてその場で設置するという画期的な設置方法を編み出した。

トラックなどで運送し、駅構内に運んでいたらとても一晩では設置できない。電車だと全部のホームドアを一度に運べて、降りた場所が設置地点なので素早く設置でき、場所の間違いもなく作業にかかれる。
 


京三が道路や鉄道の保安に関する事業を進める立役者である樋口佐兵衞さん


安全で、理にかなっており、より使い勝手がいいものをという工夫の精神は、物作りだけでなく、設置設営に関しても生かされていた。
 


自動車も作っていた 伝説の京三号



京三製作所はトラックも作っていた。
昭和初期、不景気を克服するためにいろいろな仕事に手を出したという。そのひとつに自動車部品があり、これが京三製作所の自動車製造に繋がった。

1932(昭和7)年に、750ccエンジンの小型トラック「京三号」を発売。当時は750ccまでの小型車は免許が不要だったこともあり、月産150台という数字は当時としては企業的に成立しうる状況になっていた。そのまま続いていれば、トヨタや日産とならぶ自動車メーカーになっていたかもしれない。
 


本社ロビーに展示されている京三号。整備されていて今も走行できる


1937(昭和12)年に行われた富士山の6合目まで登る自動車競争では、唯一京三号だけが成功したというから、性能も良かった。
 


販売されていた当時の京三号パンフレット。色使いやレイアウトがレトロモダンでお洒落


しかし、同年に日中戦争が始まり、燃料や資材調達に問題が発生。京三号は合計2050台が製造され、京三製作所の自動車製造は幕を閉じることになった。

そして、戦後の混乱期には会社の仕事をなんとか確保しようと、鉄道の現場で働く人たちの作業着をターゲットとして頑丈な洗濯機を製造販売した時期もあった。このときの触れ込みは、洗濯機といえども「京三の製品はそう簡単に壊れない」というものだった。実際にかなり長持ちしたそうだが、このうたい文句は今も変わらない。
 


取材を終えて



毎日、私たちの安全を守り快適な移動を可能にしてくれている信号や鉄道システム。ものすごくお世話になっているが、その存在をほとんど気にかけず、開発の苦労や最新の技術に思いをよせることもなかった。

取材をさせていただいて、安全に係わることだけに二重三重の配慮がされていることや、世界で最も進んでいる日本の鉄道は京三製作所の技術の賜なのだと知った。
 


この11月に落成した本社工場。延べ面積1万3895平米という広さ



―終わり―
 
株式会社京三製作所 
 

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  • この技術を海外に売り出して貰いたいです。

  • 戸塚区に本社を置くコイト電工という会社も、県外の工場ですが信号機を製造していますよ。全国各地に設置されている信号機を製造するメーカーが2社も横浜市内に本社を置いているというのは感慨深いものがありますね。

  • 信号機、二人で持っても重たそう。

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