「ちょんの間」の過去からアートで再生を目指す「黄金町バザール」をレポート!
ココがキニナル!
2008年開催の黄金町バザールですが、最近はあまり話題にも上らない気がする。10年以上続くなら理由や価値があると思う。近況やこれまでの歴史、黄金町の黒歴史も含めレポートして(キッスイノハマッコさん)
はまれぽ調査結果!
初回に10万人訪れた黄金町バザールは、その後来場者規模は縮小しつつも一定の数を維持し、イベントとして定着。また年間を通して地域と取り組むまちづくり活動も、年々多様化・拡散し継続されている
ライター:結城靖博
主催者の一つ、初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会にインタビュー
黄金町バザールは「黄金町エリアマネジメントセンター」と「初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会」(Kogane-X)の二つの団体が主催している。
Kogane-X(コガネックス)発足の目的と経緯はすでに述べた通りだ。その会長・伊藤哲夫(いとう・てつお)さんにインタビューを行った。
お会いしたのは伊藤さんが経営する和洋会席料理店「遊膳(ゆうぜん)グレピー」の店内。店は日ノ出町駅近くの大岡川沿いにあった。
左の丸屋根のビルが「遊膳グレピー」
「二つの団体の区別がつかない人が多い」と伊藤さんは開口一番に嘆く。要はNPO法人がアート側から、Kogane-Xが地域住民側から、お互い「安全・安心のまちづくり」という共通の目標に向かって活動しているとのこと。実際Kogane-Xは、「初黄」と「日ノ出町」二つの町内会によって組織されている。
「黄金町バザール」もその一環だが、それ以外に協議会は日頃どんな活動をしているのだろう。
丁寧に説明してくださった伊藤会長
「大きく分ければ三つです。一つは防犯。毎月27日に警察・行政・地域住民そしてアーティストたちと防犯パトロールを行っています。1回40人ぐらい集まり、清掃を兼ねて見回りをするんです」
パトロールの様子。左が伊藤会長(写真提供:黄金町エリアマネジメントセンター)
「もう一つが防災。毎年秋に大岡川の桜桟橋で炊き出し・避難・放水の訓練をしています」
防災訓練が行われる桜桟橋
「そして三つ目が『にぎわい』。これがなかなか難しい。確かに警察の日々のパトロールが実って地域の治安は見る見る正常化していきました。ただ、治安の乱れが沈静化すると、街は静かになる。静かになるということは活気を失うということにもつながる。いかに治安を維持しつつ、昔の街の『にぎわい』を取り戻すか。それが大きな課題です」
確かに街はクリーンになったのだが・・・
その課題への取り組みの一つとして今期待されているのが、昨年4月に高架下にオープンした「タイニーズ横浜日ノ出町」。京急電鉄との提携で生まれたここは、タイニーハウスと呼ばれる小さな宿泊施設とレストラン、それにボードも収納できるSUP(サップ)愛好者のための拠点も備えた複合施設だ。
看板のある左がレストラン、右手にトレーラーハウスのような宿泊施設が並ぶ
レストランの左にSUPのボードの艇庫がある
SUP(スタンドアップパドルボード)とはサーフィンボードの上に立ってパドル(櫂)を漕いで水上を移動するスポーツだが、大岡川では近年カヤックなどとともに愛好者が増えているという。
ちょうど大岡川上流から桜桟橋へたどり着いたバドラーに遭遇
「このほかにも地域と行政との連携で、近年大岡川の活用が盛んになってきています」
日ノ出桟橋や桜桟橋を拠点に、さまざまな乗り物を利用する「水上交通社会実験」を現在実施中とのこと。
「陸からも川からも地域を活性化して、街のにぎわいをどんどん取り戻していきたいですね」と伊藤会長は力強く語った。
もう一方の主催者、黄金町エリアマネジメントセンターにもインタビュー
プレスツアーで最初に企画説明をした「黄金町バザール」ディレクター・山野真悟さんは、「NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター」(以下NPOと表記)の事務局長でもある。その立場も踏まえて、あらためて話を伺った。
場所は高架下のNPO事務局内
――まず、NPOの日常的活動についてお話しください。
「一番大きいのは『アーティスト・イン・レジデンス(AIR)』の活動です。アトリエ提供のほか作品販売、展覧会企画、海外派遣など多角的にアーティストをサポートしています。
一方に『まちづくり』の活動があります。一つは防犯。警察と一緒にパトロールしたり、治安情報を交換したり。地域の真ん中に私たちの拠点があるので、日々の変化は一番よくわかりますから。
また、Kogane-Xの会議運営、地域経済活性化への協力など、住民との交流も大切です。バザール会期中の『はつこひ市場』などのマルシェ(市場)の企画もその一環です。
さらに、このエリアを将来どうするのか、住民や行政、あるいは高架下の大地主である京急さんたちと常に関係を密にして話し合うことも重要な日常の仕事です。
結局私たちの組織は、アートのNPOであると同時にまちづくりのNPOでもある。そこが最大の特徴なんです」
――2009(平成21)年にNPOが設立してから今年で10年になりますが、その間変化はありますか?
「以前はあらゆることへの要望が私たちのもとに来ましたが、だんだん、川を活用する人などいろいろな人たちが増えてきた。じゃあ、自分たちはこの先何ができるのか。行政と一緒に検討中です。もちろんアートが中心になりますが、市の補助金に頼らず自立性を高めたいという思いもあります。
ところで、なかなか変わらないのが治安です。落ち着いたかと思うと、また何かよくわからないことが周辺で起こる。今も決して気を緩めることはできません」
――「黄金町バザール」の変化はどうでしょう? 規模的には、初回に10万人の来場者を記録して以降、3年に一度の横浜トリエンナーレの年にはこのところ4万人前後を数えていますが、ほかの年は1万数千人ほどのようですが。
「横トリの年のほうがむしろ異常で、準備もあまりにも大変。ある意味それ以外の年が身の丈に合った規模だと思います。ただ、こういう高架下や民家、屋外など脆弱な環境下で行っていると自然の影響を受けやすい。台風が頻発した年など大幅に来場者数に響きます」
――最後に、内容的な変化はどうですか?
「実はここ数年、内容は若いキュレーターたちに任せているんです。そうすると、どうしても彼らは、クオリティーの高い『展覧会』にしたがる。私なら作品の質よりも催しとしての親密性にこだわるのですが。彼らからすれば評価を得るいい機会ですから、気持ちはわかりますが」
――確かに今年の「メナジェリー」という言葉などは、一般の人には少々難しいかと・・・
「来年は横トリの年でまた人も多く来るでしょうから、これを機にあらためて軌道修正をしようかとも思っています」
山野さんは最後にそう笑って言った。
取材を終えて
Kogane-Xの伊藤さん、NPOの山野さん、お二人のインタビューをセットしてくれたNPO事務局の広報担当スタッフから、インタビューの合間、大岡川の川沿いを歩きながら、「NPOには広報の予算が全然ないんです」という話を聞いた。
NPO法人=特定非営利活動法人ゆえの予算の制約は厳しいものだろう。そんな中で、これまで12回(1回目はまだNPOの立ち上げ以前)継続してきた「黄金町バザール」。
「最近はあまり話題にも上らない気がする」という印象を持つ方もいるかもしれないが、実行者側の話を聞いていくと、継続していくための努力と熱意が伝わってきた。
その根底に、「ここでそれをやることの意味」が通奏低音として流れている。そのことを理解してほしく、今回はバザールの周辺事情も含め長くレポートした。
「黄金町バザール」をはじめとするこの地域の「まちづくり」の活動は、縮小しているどころかむしろ多様化し拡散している。一瞬も気を緩められない背景を背負っているからこそ。
そのことがこのレポートで伝わってくれたら、嬉しいと思う。
―終わり―
取材協力
特定非営利活動法人黄金町エリアマネジメントセンター
住所/横浜市中区黄金町1-4 高架下スタジオSite-B
電話/045-261-5467
http://www.koganecho.net/
※「黄金町バザール2019」情報サイト
http://koganecho.net/koganecho-bazaar-2019/
初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会(Kogane-X)
http://kogane-x.koganecho.net/
横浜市中央図書館
住所/横浜市西区老松町1
電話/045-262-0050
開館時間/火~金9:30~20:30、その他9:30~17:00
参考資料
『中区わが街――中区地区沿革外史』横浜市中区役所発行(1986年1月刊)
『娼婦たちから見た日本』八木澤高明著、KADOKAWA発行(2014年7月刊)
『黄金町マリア』八木澤高明著、ミリオン出版発行(2006年11月刊)
デス男さん
2019年10月22日 00時31分
むしろ、野毛みたいな健全な飲食店を増やした方が良かったんじゃないかなぁ~?アートの街にしたのはいいけど、夜になると人通りが少なく、犯罪の温床になるんじゃないかな。
わにきちさん
2019年10月21日 12時19分
浄化したが人がいなくなった。
果たしてどちらがよかったのか。
カレン♪さん
2019年10月20日 08時49分
10/26のテレビ東京「アド街ック天国」が横浜黄金町です。こちらも見てみようと思います。
https://www.tv-tokyo.co.jp/adomachi/smp/