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逗子の保育園に古民家を改装して「自然の中で園児を育てる」ところがあるって本当?

逗子の保育園に古民家を改装して「自然の中で園児を育てる」ところがあるって本当?

ココがキニナル!

逗子にある「海の幼稚園」は、園庭がなく、ほぼ毎日園児を海で遊ばせるらしい。園の雰囲気や教育方針、海でどんなことをしているのか気になるので取材をお願いします。(うみすすさん)

はまれぽ調査結果!

逗子にある認可外保育施設「うみのこ」には庭もあるが、悪天候の日を除きほぼ毎日、海や山へ出かけて遊んでいる。その日どこで何をするかは子ども達自身が決める、自主性を尊重した教育方針

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ライター:福田 優美

運営者にインタビュー。やはりタダモノではなかった


 
子どもたちが食後お昼寝に入ったころ、代表の永井巧(ながい・たくみ)さんと、小野寺愛(おのでら・あい)さんにそれぞれお話を聞くことができた。まずは、創設者の永井さんから。

 

そっかの最初の活動「黒門とびうおクラブ」の創設者、永井巧さん
 

−−そっかってどういう団体ですか?
「逗子にはせっかく海があるので、四季を通して、子ども達がもっと海で遊べるようにしたかったんです。そのためには、大人が環境を整えなきゃいけない。自分に子どもができてだんだんその思いが強まって、2009(平成21)年から知り合いの子どもを預かるかたちで自主的に海遊びを始めたのがそっかの最初の活動、小学生の放課後クラブ『黒門とびうおクラブ』です」

大人も子どもも思いっきり外遊びができるという口コミが広がり、今では150人を超える小学生が集まる大所帯となった。

「活動規模が大きくなって、3年前に法人化しました。ちょうどその頃、とびうおに子どもがいる保護者の方たちが、どうせなら下の子も海で遊ばせたいと言って、自主保育として未就学児を集めて遊ぶようになったんです。その規模がだんだん大きくなって、保育士を呼ぶようになったところで、せっかくなら常設の場を立ち上げようと創ったのが『うみのこ』です」

小学生の放課後クラブに認可外保育施設が加わり、そっかに関わる地域の子どもはますます増えた。逗子を訪れた人は、そっかのシールを貼った自転車が多いことに驚くかもしれない。

 

「うみのこシール」が貼られたママチャリ。「黒門とびうおクラブ」シールもよく見る
 

小麦肌がいかにも海の男という雰囲気の永井さんだが、じつは子どもの頃は海が大の苦手だったという。

「海で溺れたことがあって、頭を洗うのも嫌ってくらい水が苦手だったんです。それが高校の林間学校で遠泳をしたことがきっかけで、海って仲間と助け合う場所なんだと感じることができた。1日として同じでない自然に、強い魅力を感じるようになったんです」

その日を境に永井さんは海の虜になった。大学時代はライフセービングに没頭。卒業後はタヒチ近くの電気のない島で真珠の養殖業に就き、帰国後はマリンスポーツやアウトドアブランドの普及に携わった。逗子で暮らし始めてからは海で遊ぶ子どもたちの旗振り役を務めている。

 

子ども達にはタクじぃと呼ばれている。この日は庭で新しい畑を作っていた
 

もう1人の共同代表が小野寺愛さん。小野寺さんは国際交流NGOピースボートで16年間働き、地球を9周したという経歴の持ち主。世界各地で貧困や環境破壊などの国際問題が起きている現場を訪ねた、と聞けばなぜ逗子で保育園運営を? と疑問に思ったが、話を聞くと合点がいった。

 

全身からポジティブなパワーを発している小野寺さん。笑顔がまぶしすぎる
 

「今はエネルギーでも食べ物でもなんでも、お金さえ払えば遠く離れたところからでも買える時代。便利だけど、それでいいのかな?って。衣食住はもちろん、子育てまで自分の手から切り離し、お金さえ払えばサービスとして受け取ることができてしまう。そこからいろんな問題も生まれてるんじゃないかという疑問がどんどん膨れていったんです」

小野寺さんは地球を何周もするうちに、多くの国際問題の解決策はローカル、すなわち、“自分たちが住む半径2km以内の地域”にあると感じるようになったという。そうは思っても船を降りて日常生活に身を置くと、それに対して何もできていないのが気がかりだった。

 

ご自身も3児の母の小野寺さん
 

その頃、長女が参加していたのがとびうおクラブ。ローカルに対して自分ができることで貢献したいという同じ志を持つ永井さんと出会った。

「自分が住む地域の海や山の中で、子どもたちと本気で遊ぶ。楽しいね、おいしいねって話しながらみんなで時間と場所を共有していくことで、都会に暮らす人たちがどこかに置き去りにしてきた自然や地域の人とのつながりを取り戻せるかも? なんて話して、親子で野外で遊び続けました」

小野寺さんが、うみのこの前身にあたる自主保育をはじめたのは、そんな自然な流れだった。足下の地域の自然の中で暮らし、遊び、その恵みで衣食住をまかなう。一昔前まで当たり前だったことを、うみのこでは子どもたちが体感できるように努めているという。

 

夏前には高温を利用した発酵方法で醤油仕込み(画像提供:そっか)
 

近くの山で野草摘み。食べられる野草を知る(画像提供:そっか)
 

雨の日はじどうかんの中で魚を卸す。包丁もお手のもの?(画像提供:そっか)
 

「子どもを遊ばせるために、大人も自然の中に溶け込んでいく。そんな風に、子どもがきっかけで大人たちも海や山で遊ぶようになってきたことがうれしいですね」

 

子どもも大人も全力投球。とびうおの小学生はカヌーレースにも出場(画像提供:Yo Ueyama)
 

うみのこでは 「“私の子ども”から“私たちの子どもたち”へ」を合言葉にしている。この日海にいた父母も誰かのお母さんというより、みんなのお母さんという印象を受けた。核家族やワンオペなど育児や家族のあり方に関する孤独な言葉が生まれる中、ここには昔ながらの地域のあり方があるという安心感が生まれた。
 
 
 

取材を終えて


 
うみのこは、豊かな逗子の自然の中で子どもたちを思いきり遊ばせることをモットーにした保育園。単なる自然体験教育ではなく、海と山があるこの地域でみんなで育てる、というローカル主義とくっついているところが最大の魅力ではなかろうか。生き生きとした子どもたちの笑顔を見て、こんな子ども時代を過ごせたら最高に幸せだなぁと思う取材だった。
 
 
-終わり−
 
 

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