相鉄線の廃車車両「2100系」の運転台が港北区の大乗寺にあるって本当?
ココがキニナル!
相鉄線の2000系が廃車になった時、あるお寺が運転室だけ引き取ったはず。あまり情報もなく今はどうなっているか知りたい。(シウマイさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
相鉄・旧2100系の運転台は2004年に港北区大曽根台の大乗寺に引き取られ、今でも大事に保管されていた。各機器がほぼそのまま残っており、マスコンやブレーキも現役同様に動かせる!
ライター:若林健矢
ハンドルも、スイッチも、現役時代同様に動く!
それでは今度は乗務員室に潜入! 車内も、乗務員室がほぼそのまま残っていて、淡い緑色の空間がいかにも懐かしい雰囲気を醸し出している。
運転台には、車体に向かって左側の乗務員扉から入る
新型車両にはない淡い緑色の室内
これまた懐かしの扇風機!
そして、子どもたちや鉄道ファンの永遠の憧れともいえよう運転台には、なんとマスコン(速度等を制御するスイッチ)やブレーキハンドルがほぼそのままの状態で保存されており、今でも動かせる。同車の現役時代とほぼ変わらない「生きた」運転台に、筆者も大興奮した!
みんな一度はあこがれるだろう電車の運転席。座り心地もなかなか
右手でブレーキ、左手でマスコンを握るツーハンドルの運転台
2100系のマスコンハンドルは、左にまわすことで加速するタイプのようだ。回転部分の根元に加速力の強さを示す目盛りがあり、ハンドルを回すと「カチッ」と刻み目の音も聞こえる。本来は白い手袋があるとそれっぽいのだが、ここでは相鉄にちなんでネイビーブルーのそうにゃん手袋で代用。この手袋は2018(平成30)年の「星天レールウォーク」でもらったもので、在りし日の相鉄から今日の相鉄への変化をここでも体感することができた。
マスコンハンドルを左にまわして出発進行!
最大まで回せばフルパワーで電車は加速
右手のブレーキハンドルを右にまわすと電車は減速する。最近の車両はブレーキに細かく目盛りが刻まれているが、2100系のブレーキには目盛りが少ない。運転士自身で細かく操作してブレーキを調整していたように思える。それは、相当な技術力が試されたことだろう。
右にまわして減速。一番奥が非常ブレーキ
最近の車両のように細かい目盛りがない。運転士の技量を問われそうだ
夢中でハンドルを握っていたが、前方を見れば、そこにあるのはまっすぐ伸びる線路・・・ではなくお寺の一角。それでも頭に相鉄線を思い浮かべれば、自分が運転士になった気分で今にも動き出しそうだ。完全に惹きこまれた筆者の口からは、相鉄車両の走行音をモノマネする声が自然と出ていた。
時刻よし! 戸閉よし! 出発進行!!
なんとワイパーも動いた! これで雨天時も視界を確保
乗務員室の左右には、乗降用のドアを開閉するドアスイッチも設置されており、もちろんこれも動く。ただ、しばらく動かしていなかったためかスイッチはかなり固い。操作はできるが、どうしても動かない場合は無理せず和田さんに一声かけるといいだろう。
下のボタンでドアが開き、上のボタンでドアが閉まる
最後に、見学した際にはぜひ、ひと言メッセージを添えて帰ろう。ローカル線の駅にある「駅ノート」みたいな感じで、幅広い世代の人が思い思いにメッセージを書き残していた。筆者ももちろん感想を書き残したが、何を書いたかは2100系を見てからのお楽しみだ。
入ってすぐの車掌台にノートとペンが用意されている
心のこもったメッセージが多数寄せられていた
その他にも、近隣の幼稚園からの寄せ書きが大事に保管されており、この車両が地元の子どもたちに夢を与えているのがとても良く伝わった。
なお、2100系の車内は今日対応してくれた和田さんがいる時のみ開放される。
保存車両から部品を持ち出すことは絶対にやめよう
最後にひとつ注意しておきたいことがある。大乗寺に限らず、保存されている旧型車両から部品が盗難に遭う事件がときどき話題になる。管理されている車両から部品等を盗むことは当然処罰の対象になるが、それに加えて車両を保存している個人や団体と、鉄道ファンとの信頼関係を壊してしまうことにもなりかねない。
いかなる保存車両からも、部品を勝手に持ち出すことは絶対にやってはいけない。当たり前のことかもしれないが、その当たり前を皆が守れば、近隣の住民や鉄道ファンなどを問わず、多くの人に車両に親しんでもらいやすくなるはずだ。
取材を終えて
2019(令和元)年11月30日にJR線との直通を果たした相鉄は、次は東急線との直通を控えており、ますます都心につながっていく。便利になり、車両もカッコよくなる一方で忘れられてしまいそうな古い車両とのひと時を、鉄道会社とは全く関係ないお寺に引き取られた運転台を通して体験できた。
厳かな本堂と懐かしの相鉄車両が参拝客を迎えてくれる
左手にマスコンハンドル、右手にブレーキハンドルを握ればまるで子どもの頃の夢がよみがえるかのよう。ライター・若林が思わず電車の音をモノマネしてしまうほど、この2100系は現役時代に近い「生きた」運転台として保存されていた。思いもよらない場所に、走らなくなった電車を大切に管理している人がいることを、ぜひ記憶に留めてもらえたらうれしい。
―終わり―
取材協力・画像提供
相鉄ビジネスサービス株式会社(相鉄グループ)
大乗寺
住所/横浜市港北区大曽根台9-30
シウマイさん
2020年02月05日 13時34分
皆さん,個人的な興味に賛同していただきありがとうございました。記事も相鉄にとても情熱を感じられる書き方で,また,貴重なかしわ台工機所の写真も載せていただくなど,とても素晴らしいと思います。残念なのは,部品盗難未遂があったこと・・・。今回,あらためて紹介することによって,部品盗難のリスクが高まらなければ良いと思います。同時に譲渡先を探した,新6000系の行方も気になるところですが。
マッサンさん
2020年02月05日 13時19分
車輌が閑静なお寺にあるだけに慎まやかな"表情"に見える。車輌の横顔は寸切れてゲームセンターにある幼児用の乗り物のようだ。ご住職が御機嫌なときには"出発進行"の掛け声があるんだろうか。寺の境内に響き渡るそれは希望に満ちたものではないか。。。