横浜市営バスの「飲食禁止」ルールは夏場の飲み物もダメって本当?
ココがキニナル!
横浜市バス車内では飲食禁止のルールがありますが、健康福祉局ではこまめな水分補給を呼び掛けています。健康のため、飲み物などは必要では?交通局の見解がキニナル(あぷりこってぃさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
市営バスのルールは「ほかの乗客の迷惑になること」を禁じている。乗客の健康維持のための水分補給まで禁じていない
ライター:福原 麻実
夏は横浜も暑い。横浜市環境創造局の発表によると、2014(平成26)年の真夏日(最高気温30度以上)の日数は過去数年の中でも少なかったそうだが、それでも鶴見区で市内最多の「41日」を記録している。
横浜市環境創造局環境科学研究所の気温観測結果
暑いのが苦手な筆者にとっては、夏場はお茶(と氷)の入ったタンブラーが必携である。蓋を開けて、中のお茶を少し飲んでは閉め、少し飲んでは閉め、という水分補給をするのだ。
だが、この「水分補給」がマナー違反で禁止に? 確かに投稿文の「飲食禁止」についてそのままとらえると、市営バス内ではマナー違反となってもおかしくないと思ってしまう。
一方、盛夏にこまめな水分補給を呼びかけているのが健康福祉局。
では、この「健康のための水分補給」と「マナー」の両立は可能なのか? まずは横浜市営バスに乗って車内の様子を見てみた。
市営バスの飲食禁止案内とは
おなじみの横浜市営バス
バス内では「車内での飲食は、ほかのお客様のご迷惑となる場合があります。車内での飲食はお控えいただきますようお願いいたします」というアナウンスが流れる。
桜木町駅前バス停。特に飲食についての注意書きなどはない
バス車内にも飲食・水分補給についての広告はない
投稿にあった通り、バス車内では飲食禁止のアナウンスが流れているようだが、それがどういう理由で設けられたのか? 確認するために横浜市交通局に問い合わせたところ、自動車本部運輸課の小島課長と笠原係長にお話を伺うことができた。
今回お話を伺った笠原係長
今回の投稿内容を説明し、この「飲食禁止」の案内放送ができた経緯を伺った。
この案内放送はいつ、どのような経緯でできたのでしょうか? と質問すると「できたのは2014(平成26)年3月。車内放送の内容を整理している中で、お客様にマナー向上について呼びかけるものをいくつか局の中で検討し、その中の一つとして飲食についてアナウンスするようになりました」
クレームなどがきっかけで、できたわけではないそうだ。
この「飲食」というのは、具体的にどういうものを指すのかについては「具体的にこういうのが良くて、こういうのがダメだという形では表現しづらいんです。(車内で流しているアナウンスは)ほかのお客様のご迷惑になるものはお控えいただきたいという趣旨で、水のペットボトルや水筒の飲み物を一切飲まないで、ということではありません」という回答が返ってきた。
完全に禁止というわけではない?
水分補給はOKということですか?
「ほかのお客様のご迷惑となるものというのは、具体的にどういうものかをあえて例を出すと、例えば蓋のないカップの飲み物だと、バスも揺れますし、もしほかのお客様と接触すれば、こぼれてしまったり、かかったりしてご迷惑となってしまうので避けてほしいとは考えています」
「蓋がついているからいい、ついていないからダメだとか、明確にそういったことを決められないところがある。例外がいくらでもあるんです。あくまでもお客様に、マナーの一環として配慮いただきたい」とのこと。
では実際、「水分補給」の範疇から外れる飲食とはどういうものだろう?
交通局に実際報告があった例を伺うと「アイス、カップラーメン、ハンバーガーなどがあると聞いたことがあります」とのこと。
ハンバーガーですか・・・(フリー素材より)
また、迷惑になりそうな飲食をしている人を見かけたら、注意を行っているのか?
「ほかにお客様がいらっしゃらない車内でも、目に余る場合は乗務員の方から注意をするようにしていますが、そういう時に必ず注意しろと指導しているわけではありませんし、あくまでも車内の状況を見て判断してもらうようにしています」
「逆にペットボトルだと100%大丈夫というわけではないんです。例えば朝のラッシュ時に、お客様が大勢立っているような中でもペットボトルだからいいよとか、物によって○×が変わるのではなく、状況で対応するしかないのかなと考えています」
お二人の言葉からは、マナーをルール化することの難しさが伺えた。
どの容器だから、などという明確な基準作りは難しい
禁止とは逆に、水分補給の呼びかけについてはどうだろうか。
たとえば以前はまれぽで調査した、横浜市営バスで最も長い路線・109系統。
始発から終点まで乗る人がどれほどいるかはともかく、ああいう長時間走る路線での水分補給の呼びかけについて伺うと「お客様一人ひとりの健康について、一交通事業者である我々がどこまでお話していいのかというのもありますので」とのこと。
赤字路線でもある109系統は90分以上の乗車時間がある
「しかしお客様に快適に乗っていただかなくてはならない。水を摂る摂らないは別にして、熱中症は温度が高くなるとなりやすいので、バス車内のクーラーを適切にかけて、車内の温度管理をしています。特に夏場は、暑くなるとアイドリングストップを中断して、車内温度が高くなりすぎないようにということには気を配っております」
アイドリングストップを、ストップする時とは?(フリー素材より)
そのアイドリングストップ停止の基準はあるのか、と伺うと「たとえば、夏場、外気温が30℃を越えた時点で、混んでいたり空いていたり、出庫してすぐだったりたくさん走って車内が冷えていたり、状況を乗務員が判断して実施しています」という。
最後に「車内マナーに関してバス利用者へ一言お願いします」というと「飲食に関してお答えしたように、○×というのがはっきり分からないというのはあります」
「何でも禁止すればいい、認めればいいというような極端な話をこちらからルールとして押し付けるのではなく、お互い気持ちよく乗っていただきたいという思いで我々もバスを運行しております。お客様自身も、そういう思いでいていただければありがたいと思います」とのことだった。
互いに快適に乗車するためには?(フリー素材より)
「お客様の常識の範疇の中で、どうしても水やお茶を飲まなければいけない状況もあるでしょうから、そこまで厳密に禁止するわけにはいきません。周りの状況を見極めた上で、もし隣に人がいれば“失礼します”などの一言があってもいいのかな、と思ったりもします」