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横浜のキニナル情報が見つかる! はまれぽ.com

鉄道発祥の地、横浜の京急・JRの駅ホームにある古レールを徹底調査!

ココがキニナル!

日ノ出町駅下りホームに1900年イギリス製の刻印がある古レールが柱として残ってます。横須賀駅にも1885年製古レールが。鉄道発祥の地ヨコハマの駅には鉄道遺産古レールがまだ眠っていそう(横濱マリーさん)

はまれぽ調査結果!

明治半ばから昭和40年代まで、使用済み古レールを駅ホームで再利用。さまざまな年代のアメリカ、ヨーロッパ、国産のレールを確認できた!

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ライター:大和田 敏子

古いレールが駅の建物に再利用されていることは、鉄道ファンに限らず、ご存じの方もいると思う。けれども、そこに使われているレールの種類や年代にまで興味を持って見る方は、少ないのではないだろうか。

今回は、そんなちょっとマニアックな話に踏み込んでみた。
 


こちらは投稿にあった写真

 
まずは、古レールを使用した建築物について、インターネットや書籍で調べてみることに。
 


あまりに専門的なものを避け、概略を調べてみた

 
日本で最初の鉄道開業は1872(明治5)年の新橋(汐留)―横浜(桜木町)間。当初は、ヨーロッパやアメリカからの輸入したレールが敷設されていた。

1901(明治34)年、官営八幡製鉄所が国産レールの製造を開始したが、国産のレールが不足していたため、その後も1927(昭和2)年ごろまでは、輸入レールを併せて使用していたようだ。
 


レールとしての役目を終えた後、再利用されるのが一般的だった時代があった

 
明治の始めごろまでは、多くの駅には上家(うわや・柱に屋根をかけただけの建物)がなく、大きな駅でも木造の上家が主流だった。駅の上家や跨線橋(こせんきょう・鉄道路線をまたぐ橋)、柵などの建造物を古レールの再利用で造るようになったのは、明治の半ばからで、物資の不足が主な理由だったようだ。

そうした再利用は昭和40年代まで続いたが、物資が豊かになったことに加え、レールの素材が変化して加工しにくくなったため、現在は行われていないという。
 


日本全国に、数多くの古レール建築物が残っている

 
投稿にある通り、横浜は鉄道に縁の深い土地。どのような古レールが残っているのかキニナル。そこで、京浜急行電鉄株式会社総務部広報課の飯島学(いいじま・まなぶ)さん、JR東日本横浜支社広報室の野川貴史(のがわ・たかし)さんに、各鉄道に残る古レール造の建築物について教えていただき、その中の数ヶ所を実際訪ねてみることにした。



京急日ノ出町駅には1900(明治33)年イギリス製のレールが!



京急の駅での撮影の際、京浜観光株式会社受託事業部の田中利男(たなか・としお)さんに協力していただいた。
 


田中さんには、古レールについて詳しく教えていただいた
 

最初に向かったのは、投稿にあった京急日ノ出町駅

 
駅ホームの上家を支える柱に古レールが使われているとのことだが、一体どの部分なのだろうか。
 


ホームの真ん中あたり、7本のアーチ状の部分だという
 

レールを使用しているのが分かる

 
日ノ出町は、1931(昭和6)年12月に京浜電気鉄道が開業した駅で、当初は1~2両の電車が停車する駅だったという。駅構内について資料にあった戦前の写真と現在を比べるとホームの長さなど改築部分はあるが、形状はほとんど変わらず、当時のものが残っていると考えられるようだ。
 


ホーム両端、上方を渡る鉄骨はアーチ型でない

 
こちらは車両数が増えてから増築された部分で、使用されているのは古レールではない。
 


鉄骨の幅が一定でなく、レールではないことが分かる

 
あらためて、古レールについて確認できる部分を教えていただいた。レールには、製造会社、製造年、発注元などの情報が刻印されているのだという。
 


下りホームの中ほどに、レールの刻印を確認できるものが残っている
 

文字を見やすくするために写真を回転。一部修正を加えた

 
「HV&COLD 1900 KR」と刻印がある。「HV&COLD」は、「イギリスのボルコウ・ホーン株式会社」、「KR」は「発注元が関西鉄道」という意味だそうで、「イギリスのボルコウ・ホーン株式会社が1900年に関西鉄道から発注を受けて製造したレール」と読み取れるという。

投稿写真のレールにも、同じく「HV& COLD 1900」の刻印があるので、イギリスのボルコウ・ホーン株式会社1900年製のものと考えられる。

駅の品川方向のトンネル手前にある、人道橋の基礎部分にも古レールが使用されている。
 


橋の基礎に古レールが使用されているのが分かる
 

手前にあるレールを拡大してみると刻印が確認できる

 
少し読みにくいが、先ほどホームにあったのと同会社、同時期のレールのようだ。

再びホームに戻りながら、レールの刻印探しをしてみる。田中さんから、レールの刻印は1ヶ所ではないことを教えていただいたので、建物の上部なども見てみる。
 


時代を感じさせる上部の接続箇所
 

ここにも刻印が。1900の文字が何とか見える!?

 
日本製のレールが使われている部分もあると、教えていただく。
 


階段部分の屋根を支えるのは日本製のレール
 

レールに刻印があるのがわかった
 

「37 (マルS) 1949 |||| OH」と読める

 
「37」は単位でレールあたりの重さ、「(マルS)」は八幡製鉄所、「1949」が製造年、「||||」は本数で月を表し、「OH」 がレールの製法だそう。八幡製鉄所が1949(昭和24)年4月に製造したレールのようだ。ちなみに、Sを四角で囲んだマーク「カクS」もあり、こちらは富士製鉄製だという。
よく見るとレール幅は先ほどのイギリス製のものより広かった。

また、レールとは無関係なのだが、日ノ出町駅には有名なタイル絵もあるので、ここで紹介しておく。
 


上りホームにある三浦半島が描かれたタイル絵
 

よく見ると1枚だけ黒いタイルが。日ノ出町の位置!?

 
このタイル絵が、いつどういった経緯で設置されたのかは不明だそうだが、丁寧な描写に驚いた。

駅の外にも古いものが残っていると、田中さんに教えていただいたのは・・・
 


日ノ出町駅から上大岡方面に向かう部分の鉄橋

 
古レールではないが、こちらは接続部分にリベット接合という、現在ではあまり使われない工法が用いられていることからして、かなり古いもの、おそらく開業当時に造られたものと考えられるそうだ。

日ノ出町駅は、トンネルが間近にあり、カーブしている上、その先は高架になっている。その形状から、全面的な改修工事は難しい面もあって、開業当時の建築物がかなり現存しているのだという。
 


隣の戸部駅の上家。古レール使用ではないが、かなり古いものだそうだ