私鉄百貨店の本店は始発駅に多いのに、なぜ京急百貨店は上大岡にあるの!?
ココがキニナル!
大手私鉄系の百貨店(の本店)って本来始発駅に多いものですが、なぜ京急百貨店って、品川でも横浜でもなく、上大岡なのですか(黒霧島さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
上大岡は京急線の駅の中で品川、横浜に続いて乗降客が多いことに加え、創業当時「副都心計画」が進んでいたこともあり上大岡が選ばれたらしい。
ライター:阿良川 遊
大手百貨店の本店が始発駅に多い理由
乗降客も絶えず、終日にぎわう上大岡駅。大手百貨店があっても不思議ではないけれど・・・私鉄系百貨店の本店が軒並み始発駅にあるのに、本店であり唯一の店舗でもある京急百貨店が途中駅の上大岡にあるのは何か理由が?
上大岡にある京急百貨店
今回のキニナルを受けて京急への聞き取りを行う前に、ほかの電鉄系百貨店に「始発駅にある理由」を聞いてみたところ、「乗降客数が多いからだと思いますが・・・詳しいことは分かりません」という答えが続いた。しかし、阪急百貨店から「(阪急グループの)創業者・小林一三(いちぞう)が鉄道を利用するお客様たちをターゲットとして、乗降客の多い梅田駅に百貨店をオープンしました」という情報を得た。
阪急百貨店梅田本店
ほか、西武百貨店からも「武蔵野デパート(のちの西武百貨店)創業者は堤康次郎で、のちに西武百貨店の社長となる堤清二の父。康次郎は池袋をターミナルとする武蔵野鉄道の経営権を握っていたこともあり、増えつつあった池袋駅乗降客の取り込みをはかって店舗を立ち上げました。その後1949(昭和24)年に「西武百貨店」と改称。武蔵野鉄道と合併した西武鉄道沿線客を集客する、本格的なターミナルデパートに成長していきました」という旨の資料が届いた。
西武百貨店池袋本店
おそらく、これらの事例の成功をみたほかの電鉄系百貨店が追随し「始発駅に百貨店」が定番になったのではないだろうか。
日本の鉄道駅の乗降客数は世界的にもハイレベルで、新宿が世界一利用客の多い駅としてギネスブックにも掲載されている。
JR東日本が発表する2013年度乗車人員ランキングを見ると、新宿に続き、池袋、東京、そして我らが横浜は第4位の乗員数を誇る。5位以下は渋谷、品川、新橋、大宮、秋葉原、北千住という結果だ。京急沿線の駅が2つもランクインしている。
JR東日本の2013年度乗員数ランキングで第4位の横浜駅
京急に電話し「どうして上大岡にお店があるんですか」と質問したところ、電話の向こうから回答に困っている空気が伝わってきたが「ぜひ取材を」とゴリ押し。しかしその場でOKの返事は聞けなかった。
乗降客数の多さと、もうひとつの理由
しつこく連絡を繰り返し、やっと取材の場を設けてもらえることに。しかしOKの返事をもらえた日も「(上大岡にあるという)特別な理由はありません・・・それに歴史が浅いですから、記事になるかどうか・・・」と不安げな様子だったが、取材を受けてくれることに感謝しつつ現場へ向かった。
駅からエスカレーターで上がってすぐ
担当者(記名・写真はNGとのこと)の方は、取材時に百貨店のデータを持参してくれ、そのなかから今回のキニナルにふさわしい情報をいくつかピックアップしてくれた。
なかに、京急線各駅の1日の乗降客数をまとめたデータがあった。見れば、上大岡の乗降客数は横浜、品川に続いて三番目に多い。
(京急沿線駅の)駅別1日平均乗降人員(京急資料より)
横浜・品川駅の周辺にはすでに百貨店や駅ビルなどが多く出店していたことを考えると、上大岡が候補地として選ばれる理由もうなずける。
さらに、京急百貨店建設が提案されていた1980年代当時、上大岡は県庁所在地・横浜に準じた都市機能をもつ「副都心」として整備されはじめていた。
曰く「公の副都心計画に乗っかる形で、京急も上大岡に出店を決めたのではないでしょうか。しかし当時を知る人によれば、百貨店を出店しても来る人がいるんだろうか、という不安はあったと聞いています」と。
しかしながら、現在の上大岡は大型量販店などが次々と出店し、人波の絶えない繁華街となっている。京急百貨店の出店が現在の上大岡を作り上げたとも言えるだろう。
駅前のにぎわい
1996(平成8)年にオープンした京急百貨店は今年で18年目。それでも、電鉄系百貨店としてはまだ新参である。