半世紀以上続いてきた横浜の伝統イベント!「元町チャーミングセール」の秘密とは?
ココがキニナル!
チャーミングセールの名前の由来や、2月と9月に開催する理由、「もっと素敵にチャーミング♪」という歌の詳細、アーケードがない理由を教えて!(悠介さん、しぇりーなさん、熱烈餃子さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
2月と9月に行われるのも、アーケードがないのも、他の商店街との差別化のため。名付け親は「二十日会」。あの歌は現在使われていない。
ライター:たなか みえ
今年の秋のチャーミングセールは、9月20日(土)から28日(日)。始まる前に、読者のキニナルを取材してこいって・・・。しかも、キニナルを3つまとめてって・・・。編集部からの指令はいつも突然。間に合うかなぁ。また徹夜かなぁ。と思いつつ、行ってきました。久々の元町。降り立ったのは、横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街駅。
元町・中華街駅元町口を出るとすぐ目に飛び込んできたモニュメント
暗めのネイビーブルーもなんだかおしゃれ
元町・中華街駅側から元町をのぞむ
今回お話を伺うのは、元協同組合元町SS会理事長で1882(明治15)年創業洋食器専門店「TAKARADA」のご主人、宝田良一さんと元町SS会の現事務局長の山田義人さんとのお二人。
まずは向かったのは「TAKARADA」。4代目社長であり、元町の成長をずっと見守り続けてきた宝田さんにお話を伺うことに。
洋食器専門店TAKARADA。入ってすぐ左の壁にあるドッグプレートが目を引く
「1959(昭和34)年ごろに、二十日会(はつかかい)という当時の若者のグループがどうやってお客様に来ていただこうかと話し合い、バーゲンセールを始めました。どうせなら、ただの安売りではない何か特別なことはできないかって考えたようです。お客様は普段は高くて手の出ない商品でも安くすれば買ってくださるだろうと、回転が遅かったり、デッドストックだったりする商品を売ることにしたんです。そうすればお客様も店もお互いにニコニコ笑顔になるねって、『チャーミングセール』と名付けたんです」
なるほど、ニコニコの笑顔だからチャーミング。チャーミングセールの名付け親は、当時の若者の有志が集まった二十日会だった! これで一つ目の「キニナル」は解決。
チャーミングセールの歴史を熱く語ってくれた宝田良一さん
当時はまだ規模が小さかったチャーミングセールも、現在では2月は35万〜38万人、9月は42万〜45万人の規模まで発展。二十日会の皆さんには先見の明があったんだなと改めて感心する。でもどうして2月と9月?
「最初は有志で始めたチャーミングセールでも、2年後の1961(昭和36)年9月からは元町SS会の主催となりました。どうして9月かって? 8月は、元町のお客様はみんな避暑に出かけてしまっていましたから。そんなときにセールしてもね(笑)。1月はほかでもバーゲンセールをしているので、それじゃ、おもしろくないから、2月にしようって。だから1961年以来、元町のチャーミングセールはずっと2月と9月です」
昭和40年代ごろの様子。チャーミングセールとなるとたくさんの人であふれかえる(写真提供:元町SS会)
百貨店やほかの商店街と区別するために、セール時期を決定したなんて、本当にアグレッシブ。でも商店街のなかで反発するお店もありそうだけど・・・
「そのうち、ほかがどんどん時期を前倒ししてバーゲンセールをするようになったので、9月には夏物が売れなくなりました。それで、秋物を先取りして売るようになりました。お客様はこれから身に付ける秋物が安く買えるって喜んでいただいて・・・。2月も春物を安くご提供することにしたんです。でも、洋品は半年前に仕入れのオーダーをするので、セールで商品が売れちゃったら、残りの季節は売るモノがなくなると、洋品関係の店は時期を早められないかって言っていました」
消費者にとっては、次の季節の商品が安く手に入れられるのは大歓迎だが、確かにお店にしたら死活問題。う〜ん。難しい。
チャーミングセール参加の証はこれっ
「あ、でも1度だけ、1984(昭和59)年の1月末にチャーミングセールをしたことがありますよ。街作りの一環として道路を直していた関係で、どうしても2月にできなかったんです。1961年からそれまで、チャーミングセールはずっと2月と9月だったでしょ。いつも通り2月末に来たら、チャーミングセールが終わっていたんです。電車の中吊りや新聞広告で告知はしましたけれど、やはり行き届かない。この年のチャーミングセールの売り上げは散々でした」
1度だけの幻のチャーミングセール。それ以降はやはり2月と9月。二つ目の「キニナル」もこれで解決。
昭和50年代ごろの元町。チャーミングセールの人気は衰えない(写真提供:元町SS会)
時代の移り変わりに合わせて、元町にも紆余曲折、浮き沈み、いろいろなことがあったようだ。しかし、宝田さんの話を聞いていると、どんなときでも、自分たちで元町の未来を真剣に考え、行動を起こす人達の姿がある。
「今でこそ、JR根岸線もみなとみらい線も走っていますけれど、当時の交通手段と言ったら、車かバスか市電。元町じゃなくても買える商品なら、お客様はわざわざ来てくださいませんよ。元町での買い物に慣れていないお客様はチャーミングセールをきっかけに慣れていただければいいんです。チャーミングセールの本来の目的は、自分の店の商品を愛してくださるお客様を増やしていくことですから。だからバーゲン品は売らないことを原則としていますし、そうすることでお客様のSS会に対する信頼も得られます」
1959(昭和34)年、国鉄根岸線桜木町―磯子間開通(写真提供:元町SS会)
なるほど、元町チャーミングセールは、こういう人達の思い、歴史に支えられているんですね。