片瀬江ノ島に津波が押し寄せてきたら、どこに逃げればいい?
ココがキニナル!
片瀬江ノ島駅付近ですが、もし東海大地震が起こって大きな津波がきたらどうなるのでしょう?高台もないので逃げ場に困るように思います。駅近くに小学校もあるのでとても心配です。(keinakatさんのキニナル
はまれぽ調査結果!
片瀬江ノ島駅付近では、最大7メートル程の浸水を予想。藤沢市では現在、私立湘南白百合学園などを、避難場所として指定している。
ライター:河野 哲弥
想定される地震の確認
まず、質問にあった「東海大地震」とは何なのかを確認してみよう。
気象庁のサイトによれば、「東海大地震」とは、駿河湾沖にある「駿河トラフ」付近を震源域とした地震のことで、最大でマグニチュード8程度の規模が予想されている。
気象庁のサイトにある、東海地震の説明図。紫の丸囲みが震源域と予想されている
しかし、同じサイトにある「地震防災対策強化地域図」を見てみると、江の島付近は、東海地震による防災対策強化地域には指定されていないようだ。
地震防災対策強化地域図、東端は茅ヶ崎市まで
そこで、今回の質問を次のように置き換えてみた。
「小田急線片瀬江ノ島駅付近に大きな津波が押し寄せてきたら、どこに逃げればいいのか」
これについて調査してみると、神奈川県が昨年11月に「津波浸水予測図(素案)」を作成し、各市町に配布していることが分かった。そこでまずは、神奈川県庁に話を伺った。
神奈川県が作成した「津波浸水予測図」とは
同図を作成した県土整備局流域海岸企画課によれば、「津波浸水予測図(素案)」とは、津波高を示したものではなく、地形などによって違う浸水の深さ(水没する深さ)を予想したものであるそうだ。神奈川県の湾岸沿いにある各市町は、避難場所などを記した「津波ハザードマップ」などを作成する際、この図を指針としている。
「津波浸水予測図(素案)」の一例、「慶長型地震 神奈川県全体図」
同図を作成するにあたって想定した地震は、
(1)元禄型関東地震と神縄(かんなわ)・国府津(こうづ)-松田断層帯の連動地震
(2)慶長型地震
(3)明応型地震
の3つのモデルであり、藤沢市の場合、この中で「慶長型地震」が最大の津波を引き起こすと予想している。この「慶長型地震」とは、1605(慶長9)年に発生した、地震の揺れはあまり大きくなくても津波による被害が大きかったと伝わっている地震である。
同図(素案)」の「慶長型地震 藤沢市」拡大図
3モデルの中でも顕著だったのは、鎌倉市に「明応型地震」が起きたときのもので、最大14.4メートルの高さの津波が押し寄せてくる可能性があることが判明した。
しかし、素案では津波による浸水予想が5メートルまでしか色分けされておらず、それ以上の詳細は不明となっている。また、想定したモデル数についても、はたして3モデルで十分なのかという意見などが、各市町から寄せられた。
そこで県は、学識者などで構成する津波浸水想定検討部会でこの問題を検討。その結果、今年2月10日に、素の字が取れた「津波浸水予測図(案)」を再度公表するに至った。
修正された、「津波浸水予測図(案)」の「慶長型地震 藤沢市」拡大図
このとき想定したのは、明応型地震から東京湾内地震までの計12モデル。また、浸水の深さも10メートルまで区分表示されることになった。
現在県では、各市町から寄せられた地形の違いなどの情報をもとに部分的な修正を行い、本年3月いっぱいを目標に、最終的な「津波浸水予測図(成案)」の作成を目指している。
では、藤沢市の対応は
次に、藤沢市総務部災害対策課を訪ねてみた。
すると、最終的な「津波ハザードマップ」などの作成は、「津波浸水予測図(成案)」の完成を待ってからの作業になるだろうとのこと。しかし、それまで待っていては住民の不安を拭い去ることができないと考え、本年1月、素案を元にした「津波避難情報マップ」を公表している。
これによれば、小田急線片瀬江ノ島駅付近では、海岸から最も遠いところで国道467号線近くまで浸水する可能性がある。
藤沢市が作成した「片瀬地区 津波避難情報マップ」の拡大図 (赤い数字は標高)
http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bousai/page100054.shtml
また、市が指定する避難施設や津波避難ビルの名称、所在地などについてもダウンロードすることが可能。藤沢市民が頼ることのできる情報は、現在のところ、この「津波避難情報マップ」になるようだ。
しかし、いざという時に、ビルの名前などを覚えていられるかどうか、心もとない。
そこで、今回の質問を改めて同課に投げかけたところ、「もし忘れてしまったら、私立湘南白百合学園中学校と、隣接する同高等学校に避難するように」とのこと。市の指定倉庫もあり、緊急時の物資などが備蓄されているそうだ。
では、いったいどんな立地にあるのだろう。現地へ向かってみた。