解体が報じられた、横浜最古の倉庫「旧日東倉庫」の歴史を探る!【後編】
ココがキニナル!
解体が取りざたされている横浜最古の倉庫「旧日東倉庫」の今後はどうなる?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
9月1日現在解体の動きはないが、現所有者の「解体予定」にもまだ動きはない模様。一方で保存を求める動きは確実に大きくなってきている
ライター:永田 ミナミ
そして倉庫のなかへ
さて、いよいよ内部である。写真は、2014(平成26)年7月1日にケン・コーポレーションの許可を得て行われた、日本建築学会関東支部歴史意匠専門研究委員会見学会で、大野敏氏が撮影したものである。
まず、建物の全体像を把握するため、前編でも紹介した内部構造図から見ていく。
青色部分が鉄筋コンクリート造(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授/着色は記者、クリックして拡大)
では、まずは1階から。
梁(はり)、内壁、天井に木材が使用され、趣と温かみのある1階室内
(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
写真からわかるように、柱頭部に膨らみを持つ鉄筋コンクリートの柱以外、床と内壁と天井は木造で温かみのある室内。また、各木材はそれぞれに長い時間が染み込んだ趣を漂わせている。
打ちっぱなしのコンクリートと木材を組み合わせた建物は最近よく見かけるが、それと同様の現代的な雰囲気も見ることができる。
と同時に、このように木材が多用された室内が震災でも空襲でも燃えなかったということは、非常にすぐれた耐火性を持っている建築であることの何よりの証拠だ。
続いて2階内部へ。
2階室内の柱も1階と同じで、柱以外はほぼ木材で構成されている
(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
2階は2種類の間仕切り扉があり、南側はコンクリート製の吊扉で
(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
北側は金属製の両開きの扉が設置されている。どちらも重厚な扉だ
(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
扉周囲と梁の下部に使用されている煉瓦、そして木材の質感はヨーロッパのパブやバーを思わせる趣もある。
続いて、最上階の3階へ。
鉄筋コンクリートの柱と梁のどっしりとした様はまさに質実剛健
(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
3階は鉄筋コンクリート製の屋根が天井になっているので、1階、2階とはまたちがう雰囲気があり、天井も高い。
3階も上の写真では右側奥に両開きの扉、この写真では吊扉が確認できる
(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
それでは最後に地階へ。
地下1階内部の煉瓦造の柱(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
内側に鉄筋コンクリートが使用されている可能性もあるという仕様要確認の煉瓦の柱は趣たっぷりだが、居室として利用するには天井がやや低いか。
上半分が煉瓦造、下半分は鉄筋コンクリート造の地下1階の間仕切り壁の趣
(提供:大野敏・横浜国立大大学院准教授)
こうして内部の写真を見てみると、日本近代建築史における重要性ということ以外に、100年以上の時間をかけて醸成された建物のこの質感と趣をうまく利用するほうが、建築物としての付加価値を高めることができるのではないかと思われてくる。
カフェやアパレルなどの店舗やギャラリーとして再生して、人々が行き交う様子を想像することは難しくないだろう。
ちなみに、横浜市都市整備局都市デザイン室が推進する「歴史を生かしたまちづくり」の説明にはこう書かれている。
横浜には、開港以来の近代建築や西洋館、土木遺産が残されています。(中略)
これらの歴史的資産を再評価し、街づくりの資源として位置付け、その保全と活用を積極的に図っていくため、昭和63年に「歴史を生かしたまちづくり要綱」を施行しました。
所有者の協力を得て、主に建築物の外観を保全しながら活用を図ることを目的としており、要綱に基づいて「登録」「認定」を進めています。認定を受けた歴史的建造物については、外観の保全改修や維持管理に対して助成をすることができます。平成9年から耐震改修(構造補強)に対する費用助成制度も設置しました。
また、所有者・関係部局との調整により可能な場合には、横浜市が歴史的建造物を取得し、市民利用施設として整備公開を図っています。
うまく活用すれば、景観の保存だけでなく、街の活性化にも繋がるのではないだろうか。