秘境を越えて横浜から鎌倉へ、オススメのハイキングスポットを大仏が調査! 中編
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行楽シーズン到来! オススメのハイキング、ピクニック スポットを教えて♪(yakisabazushiさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
大丸山から鎌倉までの道行きは分け入っても分け入っても青い山で幻のとうもろこしも美味。となれば来るべき紅葉シーズンにも山の日にもうってつけ
ライター:永田 ミナミ
古の道に思いを馳せる
そしてその市境の道へ踏み出すと、まもなく切通しのような岩が現れた
近づいてみると、おお、これはまさしく鑿(のみ)の跡ではないか
切通しというと極楽寺切通、大仏切通、化粧坂、亀ケ谷坂、巨福呂坂、朝夷奈(朝比奈)切通、名越切通で知られる「鎌倉七口」が有名だが、これは京都七口になぞらえて江戸時代にできた呼称であり、ほかにも切通しはいくつもあるようだ。
そこから5分も歩かないうちにまたぞろ迫力あふれる切通しが登場
くうう、これはたまらない
オール人力かと思うとしびれるなあ。雨垂れ岩を穿つとはこのことだね
岩肌にしみ入る蝉の声はまだ黙って地中で白い幼虫 大仏
大仏とそれほど変わらないと思われる時間を過ごしてきた岩肌に、おそらく800回ほどは染み入っただろう蝉の声に諸行無常と輪廻転生を感じながら再び大仏は歩きはじめたが、この市境の道はまだまだこんなものではなかった。
わずか2分後にまたもや素晴らしい切通しが現れ息つく暇もない
今回はほぼ垂直に切り立った崖面で切通しの道の真ん中に馬止めらしき岩2つ
鑿を振るう人々の汗と掛け声が聞こえてくるようだ、と目を閉じ耳を澄ます大仏
鑿の跡を指でなぞれば時を超え古道を前に高鳴る鼓動 大仏
約800年という長い間、雨風にさらされ火に灼かれ、蝉時雨を吸収してきた時間の厚みと深みがにじみ出ている岩肌を見ると、額に汗しながら、おそらくは問 答無用で駆り出され使役させられていた人たちの文句が聞こえてくるような、間近に触れ合えるような気がして心が震えた。
さて、3連続切通しのあとは10分ほど趣深い山道を歩いた
市境広場を抜けてからの道は、たたら職人たちが歩いた尾根道を進みはじめたあたりから、それまでのよく整備されたハイキングコースとは少し趣が変わる。中世の古道の名残が随所に見られ歴史と情緒がたっぷり感じられる風景が続いていく。
ああ、私の青春時代の鎌倉時代にタイムスリップしたような気分だよ
と大仏が遠い目をしていると木の間から無数の墓石と鉄塔あらわる
墓石群を前にすっと手を合わせる大仏に「ここは横浜霊園というところです」と説明すると「おや、前に赤瀬川原平という御仁が横浜霊園の鉄塔の近くに墓地を買ったという話を聞いたことがあるよ。あのあたりかなあ」とつぶやいた。
そういえばその『東京路上探検記』という本のなかで、普通の人を差す「俗人」の反対は「仙人」だと書いていたよ。人間は水辺に近い谷間のような場所に住む から「人」に「谷」なんだってね。漢字辞典に書いてある解字とは少し違うけど、こっちのほうがしっくりくるかもしれないね。
そしてわれわれは今どっちかっていうと仙人寄りなのかもしれないね、と言って大仏はまた歩きはじめた。
その後も路上の岩を平らに削り、雨水を流す溝を掘ったような切通しや
岩を大胆に削ったものではないが斜面と苔生す岩にはさまれた切通しを抜け
道に横たわる巨大な岩を削り表面に溝状に刻まれた簡素な階段を降りたり
上ったりして歩みを進めた。こちらの岩階段に掘られた溝には蓋まである驚き
天園を前に少し迷う
森林浴の上に歴史浴も楽しみながら進むこと約20分。ひさしぶりに分かれ道と標識が現れた。
標識には「天園休憩所」とある。いよいよ到着か
「天園150メートルぐらい先」とある。もう間もなくではないか
標識には「誰もが自由に座って休み、お弁当を広げたり出来る天園一の見晴台です。眼下に鎌倉の町並、海、前方に箱根の山々、富士山、伊豆方面が眺められ大変に趣きのある風景です」とある。これは期待大だ。
ところがひとつ問題が発生した。鎌倉天園を目指しているわれわれであったが
最終目的地は鎌倉五山第一位の建長寺なのである
この分かれ道にはさすがに悟りを開いた大仏も迷った。しかし迷ってばかりいてもしかたがない。地図を見るとどちらも天園に行けるような気もするし、ええいままよ、下るよりは上りたい、と建長寺方面を選択。
すると間もなくさらに悩ましい分かれ道が
道としては右に進んだほうが道らしい道だが、そうするとひたすら天園方面とはそれていってしまうことになる。かといって左の道は急峻で人が通り道というよりは獣道に近い雰囲気を漂わせている。
方向的にはこちらだが果たしてこの道を進んでいいものだろうか
静けさと寂しさと心細さと、森でTシャツの私
そうだ、今までだって分かれ道はよりありのままに近いほうが正解だったではないか。大仏は木の根がはびこり1周まわって階段のようになっている部分さえある山道へと分け入った。
いったいどうなるんだ、と思いながら細道を進んでいくと右手に金網が見えた
ひと安心してさらに進むと少し広い道に合流し、やがて左手に柵が見えてきた
続けて赤い自販機も見えてきた。そう、ついに到着したのだ
「天園峠の茶屋」である