異国情緒ある山手のエリスマン邸「しょうゆ・きゃふぇ」の、卵黄をそのまま食べる絶品プリンの味は?
ココがキニナル!
山下公園の近くにある『しょうゆ きゃふぇ』。醤油とコーヒーは似たような色だけれども、合わないような・・・ソース顔なのもキニナります。(yakisabazushiさん、たむたむたむさん)
はまれぽ調査結果!
ムース・卵黄・キャラメルが口の中で三位一体となる元祖生プリンはここでしか味わえない美味な一品だった。エリスマン邸のロケーションも素晴らしい!
ライター:秋山 千花
洋風モダンなエリスマン邸を拝見
「エリスマン邸」は、生糸貿易商のシーベルヘグナー商会の横浜支配人として活躍したエリスマンの邸宅として、1925(大正14)年から1926(大正15)年にかけて建てられた洋館で「現代建築の父」と呼ばれるアントニン・レーモンドが設計を手がけた歴史的に価値のある建造物である。
建築当初は、山手町127番地に建てられていたが、その後1982(昭和57)年にマンション建築のために解体。1990(平成2)年に現在の地に再現されたそう。
現在、館内は無料で観覧可能
邸内を見渡すと、それはもう素晴らしいの一言。
恐らくこんな邸宅で日常生活を送ることになったら、立ち居振る舞いやお言葉使いはもちろんのこと、きっと人格まで変わってしまうに違いない。
木々の木漏れ日を感じながらうたた寝したいサンルーム
各部屋に大きな窓が取り付けられた広々とした邸内は、すっきりと明るい印象で今にも家族の明るい笑い声が聞こえてきそうな雰囲気。レーモンドデザインの復元家具は、シンプルかつ機能的でありながらも、高級感漂うハイセンスなデザイン。
暖炉の置かれた応接室は、それだけでなんだか温かみのある空間に
七夕飾りを添えた7月のしつらえは「星迎えの夜をかこむテーブル」
2階スペースでは、横浜・山手や洋館にまつわる資料を展示
邸内全体を見て思うのは「エリスマン邸」が庶民にはまったく無縁の豪華なお屋敷でありながら、少しも息苦しさや堅苦しさのない居心地のよい空間であるということ。そこには、やはり大きな窓からのぞく緑や、その隙間から差し込む優しい光といった自然の温かさが起因しているのだろう。
階下から見上げた踊り場の大きな窓にも緑
邸内の一角に設けられたカフェスペースも、そんなエリスマン邸の魅力が十二分に感じられる癒しの空間である。
テラス席から望む一面の緑
エリスマン邸のカフェスペースは、もともとスタッフや近隣のご婦人たちが運営する「マダム」の喫茶だったという。しかし、人件費やコスト面の問題もあり、その後しばらくしてその運営を専門店に委託するようになったのだとか。
今回のキニナル「しょうゆ・きゃふぇ」は、山手のフレンチレストラン「エリゼ光」の六川光(ろくかわ・ひかる)シェフが名乗りをあげ、2014(平成26)4月にこの場所にオープンしたカフェである。
「エリゼ光」は「エリゼ=至福の時間」を提供する光シェフの店
「とにかく『エリスマン邸』というキーワードがあってこその私たち。その中にあるから、私たちが存在感を出せるんです」と語るのは、取材に対応してくださったマネージャーの藤野恵子(ふじの・けいこ)さん。
六川シェフとは「エリゼ光」開業以前からの同志
実は以前に「エリスマン邸」でカフェ運営を募集していた際、書類選考に落ちた経緯があるという。それでも諦めずに再応募をしてこの地を射止めたのは、この緑と光のテラス席が六川シェフの提唱する「ナチュラルフランス料理」の考え方にぴったりだったから。
生産者の想いを伝える六川シェフの料理(写真提供・エリゼ光)
フランスの三ツ星レストランで腕を磨いたシェフがたどり着いた「ナチュラルフランス料理」。それは、素材そのものの味を大切に伝える料理だという。
使用する素材は、三浦半島のシーフードと野菜がメイン
六川シェフは、使用する素材には徹底したこだわりを見せる。
最近でこそ「地産地消」という言葉がよく使われるようになったが、六川シェフは「エリゼ光」を開業した1999(平成11)年より以前、20年近く前からずっとそのことにこだわり三浦半島の漁港や畑に足繁く通っている。
「本当に365日。週に一度の休みの日も、寝る間を惜しんで産地へ足を運んでいます」と藤野さん。
現地を訪れ、漁師や生産者の想いを知り、巡りあう最高の素材。そこから生み出される六川シェフの料理。
「しょうゆ・きゃふぇ」の店名の由来ともなっている「醤油パン」も、そんな偶然の出会いから六川シェフがインスピレーションを受けて作り上げたオリジナルのパンである。
「しょうゆ・きゃふぇ」は“醤油パンとデザートと生プリンの店”
ナチュラルフランス料理から生まれた絶品醤油パン
「醤油パン」のアイデアは、静岡県御殿場市の老舗醤油メーカー「天野醤油株式会社」との出会いがあったから生まれたものだ。
ワサビを求めて訪れた御殿場の地。その地を走らせていた車の中から偶然見つけた小さな看板、それが「天野醤油」の看板だったという。
アポなしの突撃訪問。それがたまたま全国醤油品評会で日本一になった醤油を作っている工場だったというから、本当に出会いとはおもしろいものだ。
全国醤油品評会で優勝した実績を持つ天野醤油の「甘露しょうゆ」
「醤油パン」は、天然酵母の含まれる醤油のもろみをパン生地に使用し、さらに二度仕込みした「甘露しょうゆ」をパンの表面に塗って焼き上げられる。
二度仕込みの醤油とは、醤油を作る際に使う塩水の代わりに従来の製法で作った醤油を使って仕込んだ醤油のこと。塩水の代わりにしっかりと熟成した醤油を使っているため、味にコクと大豆の甘味が感じられる。
もろみは醤油の命とも言える大切なもの。それを分けていただくのは、簡単なことではなかった。
何度も断られて、ようやく譲り受けた大切な天野醤油のもろみ。それなくして、六川シェフの「醤油パン」は作り得なかったと藤野さんは言う。
そして生まれた六川シェフの「醤油パン」
お持ち帰りも可能。1本450円
お店で提供される「醤油パン」はオーブンで軽く温めた状態のもの。
テーブルに運ばれると、醤油の香ばしい香りが一面に広がり・・・
思わずパンに顔を埋めてしまいたくなるほど
まず一口目は何もつけずに、パン本来の味わいを。
むむむっ! こっ、これは!
「醤油パン」=ただの醤油味のパンと思うことなかれ! 生地全体から広がる香ばしい香りと、深みのある優しい味わい。そして、もっちりとした食感。これは、もうイメージしていたものとはまったくの別物。
表面に塗られた「甘露しょうゆ」から伝わるコクと天然素材の甘味がアクセントとなって、その味わいに更に深みを与えている。これが二度仕込みの醤油の旨味と言うものか・・・
ワサビやバターを付けて食べればまた新たな感動!
「醤油パン」のお供として提供されている「伊豆天城真妻(まづま)わさびと無塩バター」のセットは300円。
「パンにワサビ!?」と思いきや、甘味の効いた醤油に、すりたての生ワサビの風味が意外にもぴったり。そう、醤油にワサビと考えればごくごく自然な組み合わせ。もちろん、使用する天城「真妻わさび」も六川シェフが自ら探し求めた絶品ワサビ。そりゃ、美味しいに決まっているというもの。
すいませ~ん! 持ち帰りにひとつください!
店内では「甘露しょうゆ」も発売中(1本540円)