アピタ金沢文庫店で40年以上営業した「地元才能発掘書店」、岩下書店はまだ存在している?
ココがキニナル!
金沢文庫ユニー内に1972年から鎮座していた地元才能発掘書店「岩下書店」。アピタの建て替えに伴い遂に閉店してしまいました。閉店後、ついにホームページも消滅。リバイバルの可能性は無い?(うなぎさん)
はまれぽ調査結果!
実店舗はないが「有限会社岩下書店」として書店機能の一部は健在。現在は、横浜市中区を拠点に自費出版書の制作や、浮世絵の販売を行っている
ライター:紀あさ
本屋さんの作る本、地元本出版の正光堂
「地元才能発掘書店」をコンセプトに掲げるようになった後、雅紀さんは地元密着の視点から新たな取り組みを2つ始めた。
1つ目は、2007(平成19)年、本を売るだけでなく、地元に関する本の制作も自ら手掛けようと「地本問屋 正光堂(じほんどんや せいこうどう)」という出版事業を開始。
『金沢文庫パノラマ鳥瞰地図』など企画出版が好評を博した
「正光堂」では、顧客から制作を受注する自費出版も請け負うようになり、その中から地元で大ヒットする本も生まれた。
500部が1ヶ月で完売した自費出版書。「ハリーポッターより売れました!」
浮世絵復刻版画専門店 金沢文庫
もう一つは「浮世絵」。先にあげた『ぶらり金沢散歩道』の著者・楠山さんが浮世絵のコレクターだったことから、雅紀さんは浮世絵に触れるようになった。
退色も少なく状態の良い浮世絵。100年以上の時を経ても鮮やかな色彩。ここで雅紀さんは、日本の商業出版の原点は浮世絵ではないかと気付く。木版から刷り出す版元がいて、販売をする人がいた浮世絵。まさに出版社と書店との関係と同じだ。
浮世絵こそが商業出版の原点?
出版の原点である浮世絵を取り扱いたいと、今なお木版を摺ることのできる人を探した。よい版元に巡り合うことができ、2011(平成23)年から復刻版浮世絵木版画の販売開始。金沢文庫の岩下書店にも浮世絵を置いた。
お気に入りの一枚、富嶽三十六景より「神奈川沖波裏(かながわおきなみうら)」
現代のプリントだと裏面は真っ白だが、浮世絵の擦りは、裏にも色が透けるのが特長
雅紀さんは「浮世絵は金沢八景を描いたものもあり面白いです。金沢区が地元だと思っているけれど、広い意味では日本も地元だなと思って」と大切そうに浮世絵を見つめる。
こうして本を売る書店から本を作る出版へ、出版からその原点である浮世絵へと、源流を見つめる形で「販売」「出版」「浮世絵」の3本柱が立った。
独立した別会社を作ろうと思ったわけではなく、ずっと金沢文庫の岩下書店としてこの先もこの3本柱を抱える形でやっていこうと思っていた。
ところが、2014(平成26)年5月のアピタ閉店との突然のしらせが訪れる