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鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?

ココがキニナル!

「馬場花木園」は四季折々の植物が完璧に手入れされた庭園。なぜこの住宅地にあり、一角にある屋敷は植物好きの誰かの寄贈か。無料とは思えない素晴らしさ、もっと評価されるべきだと思う(タロー先生さん)

はまれぽ調査結果!

馬場花木園は古民家と日本庭園を備える風致公園。横浜市が藤本家の屋敷を取得、整備して開園。多くの利用者を求め無料に。都市化で失われる自然と日本の歴史文化を残す素晴らしい空間だ。

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ライター:久保 仁美

古民家ゾーンへ


 
続いて、昨年リニューアルされた「古民家ゾーン」には「屋敷」と言われる主屋と東屋があった。投稿にある誰かの寄贈かの確認もふまえて、さっそく古民家館長の金田正和(かねだ・まさかず)さんにお話を伺うことにした。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
東屋で撮影に応じてくれた金田さん

 
馬場花木園は、横浜市が藤本家の屋敷である一部、及び周辺の土地を取得して整備し、風致公園として開園したもの。藤本家の先代である広島県出身の藤本幸男(ふじもと・ゆきお)さんは、鶴見区で設計事務所を経営していた方。この古民家は藤本家から譲り受けたものとなる。
ちなみに、風致公園とは特殊公園の一種で、自然の風景などのおもむき、味わいを受け入れて楽しむことを目的とした都市公園である。古民家を残した当地の景観がその目的に適っていたのであろう。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
旧藤本家の主屋

 
旧藤本家の主屋は江戸時代の末期から明治初期に港北区篠原に建築されたものだ。当地にいつから人が住み始めたのか定かではないが、確認されているのは澤野寅次郎(さわの・とらじろう)氏で、1913(大正2)年に澤野氏により建物を解体して、再び建て直している。その後、澤野家が某企業に家屋敷を売却。1942(昭和17)年にはその企業から藤本家が購入して、2011(平成23)年まで住んでいた。

金田さんによると「リニューアルにあたり古民家は曳家(ひきや/建築物を解体せずにそのまま水平移動で他の場所に移すこと)など多くの技術を駆使して宮大工ら職人が改修し、現在に至ります。この古民家の特徴である茅葺(かやぶき)屋根はススキで作られています。多くは近隣の野山や水辺で手に入る材料を使うが、今回の葺き替え工事には主屋が岩手、東屋が御殿場のススキを使用しています」と、古民家の維持について話す。

丘陵と谷戸が織りなす起伏のある地形と、湧水が注ぐ池(かつての谷戸田)、茅葺屋根の主屋は住時の谷戸田の原風景に近く、今に伝える貴重な歴史的景観だ。旧藤本家は横浜市の特定景観形成歴史的建造物にも認定されて、この土地の歴史や先人たちが暮らした様子を体験できる施設となっている。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
主屋内には周辺環境の移り変わりがわかる可動式の展示パネルが何枚もある
 
鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
1957(昭和32)年頃の当地の景観(提供:澤野商事)
 
鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
1990(平成2)年頃の当地の景観(提供:横浜市)
 
鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
1990(平成2)年の主屋(左)と東屋(提供:横浜市)

 
古民家や景観の移り変わりをみると、一層胸に迫るものがあった。

土地の歴史や先人たちが暮らした様子を感じたところで、室内の様子を見ることにした。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
主屋の玄関を入ってすぐの台所に飾ってある農具
 
鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
簀戸(すど)と囲炉裏

 
金田さんによると「花木園では毎週日曜日に囲炉裏で火焚きを行っています。そのため建物は乾燥し、天井の茅もいぶされて虫よけ効果になります」。簀戸(すど)は簾(すだれ)でできた建具で、風通しを良くしたい夏場の6~9月に使用される。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
タンスなどの家財道具の展示も

 
東屋は数寄屋(茶室の手法・意匠を取り入れた和風建築で繊細な造り)というよりも野趣的な、いわゆる素朴な雰囲気がある。
東屋の縁側では、「縁側はひなたぼっこには最適です」と金田さんが言ったように、長い間座って談笑している方たちがいた。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
心地よい陽気の縁側で話に花が咲くご近所の方々
 
鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
主屋裏手の金田さんオススメの絶景スポット。富士山が見える日もあるそうだ

 
徹底的に素材と技術にこだわって造られた古民家は、生活の知恵を織り交ぜた“日本文化”の象徴そのものだと改めて感じた。

金田さんは最後に「当園には古民家の囲炉裏で見られる“火の揺らぎ”、池に集まる“小鳥のさえずり”、庭に流れる“小川のせせらぎ”で心が落ち着く要素が3つもあります。近辺には、古民家で有名な『川崎市立日本民家園』がありますけど、無料で火を焚く古民家は稀だと思いますよ」と魅力を語ってくれた。
 
 
 

当園に魅了された人たち


 
公園をさらに散策してみる。山野草区域や芝生広場、休憩所と見ごたえある場所がたくさんあった。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
車いすやベビーカーでも利用しやすいスロープのある山野草区域

 
当地の北西に位置する山野草がメインで植えてある区域では、朝早くに散策していたご夫婦がいた。
ご婦人が車いすを使用していて、「車いすでゆったりできる公園はなかなかないので、この公園に魅力を感じて鶴見の總持寺の方から近くに引っ越してきました。40~50年前の鶴見区は田んぼと森だらけだったけど、マンションがどんどんと増えて開発されましたね。変わりゆく景観の中、ここだけが昔のままの雰囲気です」と感慨深けに話してくれた。

芝生広場には、散歩中の親子連れも発見。当園の魅力ついて伺うと・・・
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
「月一程度で利用する」というご近所の親子連れ

 
「混んでいないところが良さでもあり、ここは満開の桜を満喫できます。これから友達家族と合流してランチ(お弁当)を楽しみます」と、サクラの時期は絶景スポットだと教えてくれた。

一面がガラス張りの休憩所では、開園当時から「ボランティア活動に参加している」という立川福治(たちかわ・ふくじ)さんにお話を伺った。
 

鶴見区の住宅街の一角にある四季折々の植物が完璧に手入れされている「馬場花木園」とは?
「ほぼ毎日」来園する立川さん(右)とご近所の女性

 
当園の情報通であることを自負していた立川さんは、「当地で育たなかった植物も知っている。ヤツシロソウ、クマガヤソウ、タイリツソウ、ヤシモチソウ、ツリガネニンジンは無理だったね。土にも赤土、黒土、粘土質などあれば、カリ成分(肥料の三大要素と呼ばれる成分)が多いか少ないかがあるからね。管理者には“表”の見せかけだけにとらわれず、植物が根を張る部分の“裏”が大事なのを理解して育てて欲しい」とこぼした。長年に渡り、植物の成長を見守ってきた方ゆえに、感じるものがあるようだった。

数組に話を伺ったが、馬場花木園を一度訪ねると、魅力に取りつかれたように定期的に通う利用者が多いことに驚いた。