6月3日に鶴見区生麦地区で開催された「蛇も蚊も」祭りって、どんなお祭り?
ココがキニナル!
6月3日に開催する鶴見区生麦の伝統のお祭り『蛇も蚊も祭』。400年近く続くお祭りです。大蛇を担いだ男衆が家の中まで入ってきます。蛇も蚊もってネーミングだけでも気になるでしょ?(MATUさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
元々は無病息災を願った祭事だったが、今は地域の子どもたちの健やかな成長と、人と人との絆を深めたいという願いが込められた行事となっていた。
ライター:河野 哲弥
生麦地区に約400年続く、伝統的なお祭り
鶴見区生麦にある本宮地区と原地区で6月3日(日)、横浜市の無形民俗文化財に指定されている「蛇(じゃ)も蚊(か)も」祭りが、今年も開催された。同祭りは江戸時代から約400年間続く伝統行事で、氏子たちが長さ約20メートルのカヤでできた「大蛇」を担ぎ、町内をねぶり歩くというもの。
お祭りに使われる「大蛇」、原地区の一例
その特徴は、「蛇も蚊も出たけい、日和の雨けい(じゃもかもでたけい、ひよりのあめけい)」という独特のおはやしで、町内の各所で耳にすることができる。
もともとは生麦地区全体で一つの神事として行っていたが、明治時代を境に本宮地区と原地区の2ヵ所に分かれて行われるようになったというこのお祭り。
では、それぞれの地区で実際にお祭りがどのようにして進行していくのかを、午前中から追いかけてみよう。なお、その名称は、現地の表記にならい「蛇も蚊も」とさせていただく。
本宮地区、午前9時
京浜急行生麦駅を降り、旧東海道沿いに川崎方面へ進むと、やがて「道念稲荷神社」が見えてくる。ここが本宮地区の本拠地となっているらしい。しかし境内に入ってみると、意外なことに人の気配が全くしない。これはどうしたことだろう。
生麦4丁目にある「道念稲荷神社」、午前9時の様子
「蛇も蚊も」発祥の地と記された碑があった
慌てて近くの方に聞いてみると、つい先ほど出発したばかりだという。そこで、おはやしや太鼓の音を頼りに、「大蛇」の姿を追いかけてみた。
大蛇発見、子供たちも混ざって担がれている
玄関の前で、ワッショイを三唱する
大人から子どもまで、大勢に担がれて町内を回る大蛇。数軒を回ると、休憩時間となったようだ。そこでこの機に、本宮地区の「蛇も蚊も」を取り仕切る石川会長に、詳しいお話を伺うことにした。
本宮地区、午前10時
会長によれば、気になる「蛇も蚊も」の起源は、口伝えによる伝承でしか残っていないそうだ。しかし、かつて疫病が流行したときにこのお祭りを行ったところ、無病息災を得られたのは確かであるとのこと。これを機に同祭は生麦地区に定着していったという。
手ぬぐいを頭に、粋な姿の石川会長
明治時代、今のように本宮地区と原地区の2ヵ所に分かれてしまった理由は不明というが、その後両地区の間で「元祖VS本家」のような争いが続いたという。
しかし現在では、これからの世代に引き継いでもらうため、「過去を引きずっていてもしょうがない、未来のことを考えるべき」と、対立を避ける方向で進めているそうだ。
休憩中の「大蛇」
それはそれとして、「蛇も蚊も」のネーミングの由来が聞きたいところである。会長によれば、「絶対に正解はないよ」として上で、疫病をもたらす悪霊をはらう「蛇」と病気を伝染させる「蚊」を退散させる意味が、そこに込められているとのこと。そして、作物に慈雨をもたらす雨乞いを込めて、「蛇も蚊も出たけい、日和の雨けい(ヘビも蚊も出て行ったかい? 晴天の中、雨は降ったかい?)」というおはやしになったそうだ。
本宮地区、午前11時
こうした大蛇は、本宮地区では、町内会ごとに3体出ているそうだ。それらが一同に集まるのが生麦小学校。
山﨑鶴見区長が祝辞を述べた
3体のオスの「大蛇」が、「絡み」と呼ばれる儀式を行う
かつて生麦地区が主催する一つの祭りだったころは、オスとメスの「交わり」のシンボルとして、こうした「絡み」が行われていたとのこと。しかし今では、本宮地区をオスとし、原地区をメスとしているそうである。両者は今現在交わることはないが、名残としてこのような儀式が行われているようだ。
住民の方の意見を聞いてみた
この地区に住む、左からTさん、Kさん、Hさんによれば、「無病息災の儀式というよりも、子供たちが参加できる伝統行事として、次世代に伝えたいお祭り」であるとのこと。6月のこの時期は、旧暦でいう「端午の節句」にあたる。子供たちが多く参加しているのも、こうした時期的な背景があるそうだ。
この後神事が行われ、「大蛇」は役目を終える
この後、宮司によるお払いがなされ、3体のうち1体の首が落とされる。そしてそれは「道念稲荷神社」で燃やされて、一連の行事は終了となった。