漁業の名残と気さくな商店街のある街、はま旅Vol.89「子安編」
ココがキニナル!
横浜市内全駅全下車の「はま旅」第89回は、首都高速と第1京浜沿いに佇む小さな駅「子安駅」。漁業が盛んだった頃の名残と、気さくな商店街のある街だった。
ライター:桐生 由美子
「いやいや、新子安駅ではなく子安駅だ」。
今回のはま旅の駅が確定してから、何度も頭の中で繰り返した言葉。
「子安」と入れてネット検索しても、出てくるスポットや飲食店は「新子安」。いったい「子安駅」には何があるというのだ?
行ってみるしかない。それが取材前日の結論だった。
駅前にあるのは自動販売機だけ
「子安浜」という異国の風景に出会う!
唯一ネットでヒットした子安駅がらみのスポット。それが「子安浜」だった。
子安駅から一駅下った神奈川新町駅界隈には、「神奈川宿」という東海道五十三次の3番目の宿場があったという。確かにその近くにセットで浜や港があってもおかしくはない。
そこでまずは、子安駅から南方に向かって歩いてみることにした。第一京浜を横切り、「入江橋」交差点から海へと延びている路地を進むと、入江川が見えてくる。
橋を渡る手前に小さな鳥居を発見。「福本稲荷神社」と書かれている。昔は漁師たちが海に出る前に、安全祈願をしていたのだろうか・・・。
京急の線路に並行して走る第一京浜
細い路地の角にある小さな神社
橋の中央あたりからふと振り返ると、入江川が船溜まりになっているのが見える。ここはかつての海岸線? 埋立地ができたことで、入江川という運河ができたようだ。
岸壁を見ると、水上に家屋の足場が組まれ、水面に半分せり出すように軒を連ねている。バラック家屋? トタンと木材で造られた家が、岸壁に寄りかかるようにずらりと並んで建っている。ここが「子安浜」だ。
戦後の風景にも見えるし、京都 伊根の舟屋に見えないこともない。まさに水上家屋群だ。
東南アジアの風景にも見える
しばらく眺めていたが、人の気配を感じない。一艘のボートが戻ってきたので「よし!」と走ったが、なぜか人が見当たらない。
とりあえず家の裏側を通っている細い路地を歩いてみることにした。
入江川に沿って建っている家の裏側
電柱が傾いているのか、家が傾いているのか・・・
屋形船と書いてあるが人がいない・・・
諦めかけたとき、遠くにひとりのおじさんを発見したので、追いかけて声をかけてみた。
「このあたりに人はいますか?」
とっさに聞いたので、変な質問になってしまった。
「人はあんまりいないなぁ。あ、ねこのおやじがいるんじゃないか」とおじさん。
ねこのおやじ?
なんだかわからないけれど、おじさんの後についていってみると、細い階段を上り水上家屋の中に入っていった。
常盤橋脇の細い階段を上り水上家屋へ
よくよく見たら、この家の土台はコンクリートだった