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神奈川県の伝統工芸って?

ココがキニナル!

神奈川県の伝統工芸について知りたい。国や自治体が指定していないものも含めて。(にゃんさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

神奈川県には鎌倉彫を始め片瀬こまなど、さまざまな工芸品がある。工芸家も伝統と表現というテーマで格闘している。

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ライター:松崎 辰彦

伝統工芸とは

「伝統工芸」という言葉には若干、不明確な部分がある。伝統とはどれくらいの時間幅なのか、工芸とはどこまでの範ちゅうなのか、厳密に定義するのは難しい。

しかし、法律的には『伝統的工芸品産業の振興に関する法律』(昭和49年5月25日法律第57号)なる条文が存在し、そこでは“伝統的工芸品”に関して以下のような定義がなされている。

一  主として日常生活の用に供されるものであること。
二  その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三  伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
四  伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
五  一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。


この定義に合致するものとして、神奈川県では鎌倉彫、箱根寄木細工、小田原漆器の計3品目が、経済産業大臣より「伝統的工芸品」に指定されている。
 


鎌倉彫
(提供:神奈川県庁)
 

箱根寄木細工
(提供:神奈川県庁)
 

小田原漆器(提供:神奈川県庁)


この中で、はまれぽの守備範囲である湘南・鎌倉の工芸品である鎌倉彫を、ここでは見てみよう。



鎌倉彫──漆の重厚さが魅力

江ノ電和田塚駅から歩いて1分のところにある鎌倉彫工芸館。中にはさまざまな作家による鎌倉彫の作品が展示されている。伝統鎌倉彫事業協同組合理事長である遠藤英明さんに、鎌倉彫の歴史や魅力について話を伺った。
 


さまざまな鎌倉彫
 

自身の作品を手にとる遠藤さん



鎌倉時代、宋から伝えられた美術品の中に、漆を塗り重ねた面に精巧な文様を彫刻したものがあった。それらは日本人の眼から見ても大変魅力的であり、影響を受けた仏師たちは、漆を使った新たな仏具を製作し、多くの人を魅了した。
これが鎌倉彫の始まりである。現在でも、古い密教系の寺院には多くの鎌倉彫の仏具が残されているという。



寺院から庶民生活へ

時代が下り、明治時代になると廃仏毀釈の影響で仏師たちは仕事を失った。彼らは活躍の場を一般民衆の生活の中に求め、盆や皿などさまざまな日用品を作るようになった。

時代は大量生産・大量消費へと向かったが、そうした中で鎌倉彫は手作りの温かさが多くの共感を獲得し、カルチャー教室でも人気講座の一つとなった。
 


鎌倉彫の壁掛け。重厚な味わいである


現在、組合には57名の職人が登録し、それぞれ技を競っている。盆や皿をはじめ、箸や花瓶、あるいは壁掛けなど、さまざまな日用品や装飾品の鎌倉彫が創作されている。

製作作業は素材である木地を作ることから始まり、下絵を描き、小刀で切込みを入れ、さらに漆を塗るなど手数のかかる工程が必要である。30センチの盆で 1ヶ月から1ヶ月半の日数が必要とのこと。木地を調整し、彫りや塗りが調和した形に仕上げることがなかなか難しいという。
 


鎌倉彫のボールペン。現代作家はさまざまな表現に挑戦している


もとより量産化は不可能である。

一人前になるには5年から10年はかかるという鎌倉彫の世界。重厚な味わいは、たしかに伝統の重みを感じさせるものがある。
 


多くの人を魅了してやまない鎌倉彫




片瀬こま──伝統がよみがえり、人々を活気づかせた

行政に認定されたものだけが伝統工芸ではない。庶民の生活の中で生まれた工芸品もある。

神奈川県藤沢市片瀬。ここでは近年、「幻のこま」と呼ばれていた片瀬こまが復活した。
 


復活した片瀬こま



昭和の時代、湘南地方では独自のこまが作られ、子どもたちは紐を片手に回していた。材質がツバキで紐が麻。心棒がカシという素朴で重い、どっしりしたこまだった。

しかしこのこまも、製造する継承者がおらず、長い間姿を消していた。だが近年、有名タレントが昔片瀬こまで遊んでいたことをテレビで発言するなどしてその存在が注目され、実は細々と作られ続けていたことが判明した。

現在、片瀬市民センター内で保存会が設けられているが、保存会事務局長の杉下由輝さんは、片瀬こまは地域に密着した工芸品であることを強調する。
 


片瀬こまを持つ杉下さん


「片 瀬は昔から漁師町なので、人々が伊豆大島にも船で行ったりしましたが、その帰りにツバキの木をもらってきました。それがこまの本体の材料になりました。そ して心棒はカシですが、これは船のオールの壊れたものを再利用したものです。それからこまを回す紐は、破れた漁網からよって作ったということです。
このように、片瀬こまとは今で言うリサイクルでできたものです。海がしけって出られないようなときに、漁師が子どもたちのためにと作ったものが片瀬こまです」