「よこはま洋館付き住宅を考える会」とは、どんな活動をしている団体?
ココがキニナル!
よこはま洋館付き住宅を考える会というグループがあるそうです。ぜひ取材してみてください。キニナル。(にゃんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
家の持つ魅力やエコの観点から、100年以上住むことができる家屋を保護・研究している団体。官庁などと協働した、まちづくり事業なども行っている
ライター:河野 哲弥
洋館ならぬ、洋館付き住宅?
江戸時代以前の日本の住宅は、洋式も和式もなく、ただ「民家」があるのみだった。横浜港開港以来、さまざまな海外の文化が輸入され、そこではじめて「洋館」という概念が生じたのだろう。
今回の投稿にあった「よこはま洋館付き住宅」には、そんな時代を象徴する、和洋折衷の語感がある。
「よこはま洋館付き住宅を考える会」の公式サイト
公式サイトを見てみると、「洋館付き住宅」とは、玄関脇などに小さな洋館を増改築した家屋のことであるらしい。どうやら、世界との窓口であった「横浜らしさ」を感じさせる、また新たな発見がありそうだ。同会に、取材を申し込んでみることにした。
現在の日本の住宅事情を考える
お話を伺ったのは、「よこはま洋館付き住宅を考える会」の事務局長を務める、兼弘彰さん。本業は、同会のある保土ケ谷区初音ヶ丘で、建築事務所を運営している。洋館付き住宅の話題に進む前に、まず、日本の住宅事情を知ってほしいとのこと。
兼弘さんと、同社が手がけた補修や改修などの施工例
兼弘さんが最初に見せてくれたのは、豊かな自然環境で知られているはずの、アメリカのほぼ中央にあるバンクーバーアイランドの写真だった。
伐採が進み、山ごとまる裸になってしまった様子(画像提供・兼弘さん)
ここにはかつて、胴回り5~6メートル、樹齢にして数百年もの樹木が茂っていたそうだ。伐採された材木の行き先はどこかというと、実は、その8割は日本向けのものだという。
「海外では100年以上住み続けている住宅も多いのに、日本の住宅寿命は約20年。単純計算で、5倍の速さで材木を調達しないと、日本の住宅は維持できないんです」と、兼弘さんは話す。
ドイツやイギリスなどでは、古い住宅は手入れをしながら大切に使うので、資産価値も売却時の方が高くなることが多いそうだ。ところが日本の場合、資産価値が低くなるばかりか、撤去費用なども含めるとマイナスになることも。
したがって、「短期間で家を壊して、新しくきれいな家を建てよう」という悪循環も、起きているらしい。
日本の民家を考える
では、江戸時代以前の日本の住宅事情は、どうなっていたのだろうか。
兼弘さんによれば、当時は、農作物の一部や裏山で採れるような自然の素材を生かした、その土地の気候に合った住宅が多かったとのこと。瓦や壁のひとつひとつにも、先人の工夫が豊富に盛り込まれていたそうだ。
古民家の一例、鶴見区にある横溝屋敷
例えば西洋の瓦は、雨を遮断するために、完全な密封型となっているらしい。一方、日本の瓦は、室内の湿気を逃がすため、あえて隙間を作っているという。逆に、その隙間があることで、湿気が瓦の裏側に付着し、水分として瓦伝いに排出される。
「代々受け継がれてきた家屋には、それなりの工夫と愛着があるもの。それが『家が持つ力』なんです」と、兼弘さんは話す。
一般の住宅に、「家が持つ力」のような魅力はあるのだろうか
「逆に、いくら技術的に長持ちする家を建てても、住んでいる人に愛着がなければ、やがて売られてしまうでしょう」。そう続ける兼弘さんは、一般住宅のような大量生産・大量消費や、旧いものにあまり価値を感じない現在の風潮に、疑問を感じているという。