需要の読み違い? 賃貸部分の整備を取りやめた新市庁舎構想の詳細と現状は?
ココがキニナル!
横浜市の移転計画で民間賃貸部分の整備を取り止めるとか。賃貸収入は見込まず現市庁舎の賃貸も断念するので、その賃貸収入もない?理由は需要の読み違いのよう(ゆたかさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
賃貸予定だったフロアはオフィス用と商業用で、取りやめたのはオフィス用。市は理由を読み違えでなく「精査の結果」と説明。現市庁舎については白紙
ライター:はまれぽ編集部
横浜市は2013年(平成25)年11月に開かれた北仲通(きたなかどおり)南地区に移転を計画している新市庁舎に関する市会の調査特別委員会で、基本構想で示していた民間へ貸し出すオフィス床(約1万6000平方メートル)の整備を行わないことを明らかにした。市はオフィス床の賃貸収入を前提にした収支シミュレーションも変更した。
また、市は今年2月、新市庁舎の整備基本計画を策定。事業スケジュールは2020年の東京オリンピック開催に合わせて、従来示していた8年間から6年間に短縮し、同年1月の完成を目指す。総建設費は消費税増税などの影響もあり、616億円となった。
新市庁舎予定地
変更したシミュレーションでは、市庁舎移転後に賃貸収入を得るために現市庁舎を利活用する「パターン1」と利活用しない「パターン2」が提示されているが、市では「パターン2」を前提としている。
これまでの市の説明では、「新市庁舎移転までに発生する一般財源の負担は35年で回収でき、その間の一般財源負担はない」としていたが、「パターン2」を選択したことで回収可能年数が55年に延びた上、新たに90億円の一般財源負担が発生することになった。
これは投稿にある「需要の読み違い」なのか。「財政難なのに移転!? 新市庁舎を建設する理由とは?」の際にもお世話になった横浜市総務局総務部管理課の中川理夫(みちお)庁舎計画等担当課長に詳細を伺った。
取材対応してくれた中川担当課長
新市庁舎整備のこれまでの経緯
まずは、市庁舎移転に関する経緯を確認しておく。
現市庁舎は1959(昭和34)年に竣工。庁舎自体が老朽化していることや、周辺約20ヶ所の民間ビルに行政機能が分散しているため、その年間賃料が約20億6000万円(2012年時点)と膨大なことなどが課題で、1989(平成元)年ころから継続的に整備が検討されてきた。
関内駅周辺でも機能が拡散している(横浜市ホームページより)
その後、2008(平成20)年には「北仲通(きたなかどおり)南地区」を約168億円で取得。2013(平成25)年3月、同地区を新市庁舎の整備予定地とする基本構想を策定した。
基本構想は市のホームページでも閲覧できる(横浜市のホームページより)
市は従来の基本構想の中で、整備予定地を決めるための整備パターンの比較を行う際に、敷地条件から建設可能な最大規模の建物として、延床面積14万5000平方メートル(高さ約140メートル、地上31階建て)のプランを示していた。
この従来の基本構想で市は、27階から31階までをオフィス床として、また1階、2階、地階などを商業床として民間に貸し出し、合計2万平方メートル(オフィス床1万6000平方メートル、商業床4000平方メートル)の賃貸収入分(共益費含む)を年間10億円程度と見込んでいた。
さらに、現庁舎については、行政棟を改修、議会棟は解体撤去して、建物と土地を民間に貸し出すことにより、年間約9億円の賃貸収入を見込んでいた。
新市庁舎のイメージ(横浜市ホームページより)
シミュレーションの変更点は?
中川担当課長によると、従来の計画と大きく変わったのは賃貸床の部分。基本構想では2万平方メートルのオフィス機能を予定していたが、これについて整備しないことが決まった。
しかし、飲食店やコンビニエンスストアなどを前提とした商業施設については4000平方メートルを整備することとし、賃貸収入も年間2億円を見込んでいる。
このため、投稿にある「賃貸収入を見込まない」という部分は当てはまらないこととなる。
周遊できるようプロムナードなどを整備する予定だという
支出は、建設費が上昇している状況や消費増税などを考慮し、1平方メートル当たりの建設費を35万円から40万円に引き上げ。これにともなって修繕費なども上昇した。
収入については新庁舎に行政機能を集約することで節約できる民間ビルの賃借料と現市庁舎維持管理費を「みなし収入」として、それぞれ、年間22億6800万円、2億5800万円になると試算した。
市の収支シミュレーション(横浜市ホームページより)
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