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金沢文庫の重要文化財に空調の不具合続きでカビが生えたって本当?

ココがキニナル!

金沢文庫の書物が空調の不具合続きでカビが発生。「宋版一切経」に白カビが発生してしまった件!空調設備工事に2億円かかるそうだが県教委が見送りをし続けてきたが今後が気になる(mapaさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

国宝や貴重な歴史的資料を数多く所蔵する金沢文庫は、平成27年度に空調の改修工事予算6000万円を県へ申請。劣化した空調を今年中には取り換えられる

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ライター:山崎 島

チーズのカビは好きだけど、じめじめしたところにうっかり大切なものを放置したときに生えるカビは嫌いです。そんなとこに大切なものを置いてしまった自分はもっと嫌いです。

今回は金沢文庫所蔵の重要文化財がカビてしまった件についての記事です。
 


神奈川県教育委員会へいこー



まずどういった出来事だったかを解説。
 


「猿島」の調査のときお世話になりました。すっごく
 

2014(平成26)年9月4日、県立金沢文庫の第1収蔵庫に保管している、重要文化財『宋版一切経(そうはんいっさいきょう/宋の時代の仏教本)』の一部にカビが発生しているのを同館の学芸員が発見。『宋版一切経』は全部で3486帖(冊)あり、1帖を1帙(ちつ・カバーの役割)に収めて、更に木箱(函)に収納しているそうだが、その171函(はこ)中131函にカビを確認。カビは帙のみに生えており『宋版一切経』そのものには影響はなく、それ以外の第1収蔵庫内の収蔵品には幸いにもカビは見られなかった。
 


結構カビてる・・・(提供:神奈川県教育委員会教育局生涯学習部生涯学習課)
 

しかしカビの胞子が収蔵庫内を浮遊している可能性もあるため、同年10月1日から7日まで、金沢文庫を急遽全面閉館し、収蔵庫内の燻蒸(くんじょう/煙をたくなどの害虫処理)作業を実施。12月12日にカビ問題は収束したとして、営業を再開したそう。

じゅ、重要文化財に・・・? カバーのみで、モノそのものに影響はなかったとはいえ、思った以上に大変なにおいがする。

ということで金沢文庫を管理していらっしゃる、中区日本大通の神奈川県教育委員会教育局生涯学習課へ行ってきましたよっと。
 


このビルの6F
 

お話くださるのは守屋さん(写真)と髙梨さん(残念ながら写真はNG)
 

よろしくお願い致します。はまれぽでも過去に取材をしているが、まず、金沢文庫とはどういうところなのか? ちょっとお聞きしてみました。

県立金沢文庫は神奈川県立図書館。「調査・研究に適した資料」を中心に収蔵している。その起こりは鎌倉時代後半。武将、北条実時(さねとき/1224~1276)によって設置された書庫なんだそう。
 


境内の鐘。良い音しそうだあ
 

京都の和書、中国から取り寄せた漢籍(漢文で書かれた書籍)、実時が開基したと推定される称名寺(しょうみょうじ)の僧が集めた密教の儀軌・伝授書などの書物が集められていた。1323(元亨3)年に鎌倉幕府が滅亡。その後江戸時代になるとその重要性は軽視され金沢文庫は廃れてしまった。

やがて明治30年ごろ、金沢文庫周辺にいた伊藤博文が価値あるものだと声をかけ、横浜の富豪・平沼専蔵が2000円(現在の2000万円相当)を出資。大宝院の境内に金沢文庫を再建した。現在の金沢文庫の建物は1990(平成2)年に建設され、現在に至っている。
 


金沢文庫の資料室。古くて専門的な資料がたくさん
 

険しい歴史を歩んできているんですね、金沢文庫。

「現在は書庫だけの運営ではなく、貴重な歴史的資料を一般の人にも紹介する役割も担っており、特別展や企画展などを行っております」と髙梨さん。
 


称名寺境内にある北条実時の像
 

こっちは金沢文庫の資料室のパネルの実時のイラスト
 

現在の所蔵品は国宝、重要文化財含め2万895点。今回かカビてしまった『宋版一切経』もそのうちの一部なんだとか。

髙梨さんは「1990年に建設した現在の建物は、かなりしっかりした造りをしています。建て替え当時はバブル期だったため、豊富な資金をかけられたのではないでしょうか。今回カビが発生した第一収蔵庫は鉄筋の部屋の中に、更に木造の部屋がある二重構造の収蔵庫です」

「しかし建設されてから25年間空調機器を替えていません。今回の『宋版一切経』がカビてしまった理由の一つに、空調設備の劣化も挙げられます。ほかの原因は、空気孔の一つが荷物で塞がれており、空調が機能しきっていなかった可能性が考えられます」と、お話してくださった。
 


「宋版一切経」の函。全てを毎日チェックできない・・・
(提供:神奈川県教育委員会教育局生涯学習部生涯学習課)
 

古い書物や絵画などの作品って、本当に保管が難しい。温度20℃、湿度60%に保たないといけないし、保っていたとしても空気が澱(よど)んでたりするとカビが生えてしまうこともある。

大学時代の美術館実習では、これでもか!! ってぐらい温度計と湿度計を見に行ったなあ。しかも人が出入りするだけでもカビ菌を連れてきてしまう恐れがあるので、収蔵庫への出入りとかすっごく気を使うし。どれだけ環境が整っていても、カビって生えてしまうこともあるんですよね・・・。
 


山崎よかも全然デリケートでいらっしゃる
 

でもでも、投稿にもあったように以前から空調設備の工事の要請って、金沢文庫から県にあったんじゃないですか?

「貴重な文化財を後世へ残していくのは県の義務です。しかし県の財政が厳しく、なかなか予算が付けられませんでした。財政が厳しい状況だと、文化的なことよりも生命に関わることなどに優先的に予算がまわされるので」と髙梨さん。金沢文庫の空調設備もちょこちょこ直していたが、全てを改修するには至らなかったという。
 


にしても結構カビてる(提供:神奈川県教育委員会教育局生涯学習部生涯学習課)
 

「設備を全て一気に整えると2億円の費用がかかると言われています。金沢文庫の空調設備は全て一ヶ所に集約されていて、建物自体を工事しなければならないため、莫大な費用と時間がかかるのです。そこで、当面の対応として、平成27年度は空調設備を交換する予算、6000万円を要求しています。3月に議決され、予算が決定したら来年度工事することができます」とのこと。

これからの対応に関しては「独立行政法人東京文化財研究所や文化庁へ相談しながら、こういったことが二度と無いように努めていきます。金沢文庫以外の県の収蔵庫でもカビの調査をし、根本的な対応する動きも始めています」とおっしゃっていた。
 


神奈川県立博物館・美術館ガイドブックですよ
 

「文化財は過去にあった出来事を知る重要な手がかりです。自分たちのルーツを知る手掛かりは、県民の手で守っていかなくてはなりません。一度壊してしまったら、もう二度と直らないので。県民の皆さんに価値を知っていただき、理解していただきたい」と髙梨さん。

確かに優先すべきは、今生きる人たちの生命維持や安全。しかし、古くから伝えられている文化財も、お金に換算できない価値がある。バランスよくどちらも大切にできるようになれば良いのですが・・・とにかく、これからは人の手で食い止められる被害が起きないことを願います。どうもありがとうございました。予算通りますように。