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緊急患者を救う「横浜心臓血管外科救急ネット」の試みとは?

ココがキニナル!

一刻を争う心臓の手術が必要な時に、病院探しの手間を低減する体制を、横浜市内の心臓外科血管外科医が中心となってスタートさせた「横浜心臓血管外科救急ネット」の詳細が知りたいです。(yoshさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

現場の医師たちが自ら連携した、学閥よりも患者の命を優先した試み。横浜発、全国でも珍しい体制がすでにはじまっている。

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ライター:河野 哲弥

人間の臓器の中で最も大切な器官の一つが心臓。

それだけに命に関わる疾患も多く、記憶に新しいところでは、俳優の藤田まことさんなどが「大動脈瘤破裂」で亡くなられている。また、最近の高齢化現象に伴い、特に動脈硬化性の大動脈瘤が原因となった脳梗塞や半身不随なども、年々増加の傾向にある。

一般の病気と違い、一刻を争う手術が必要とされるのが、こうした心臓血管にまつわる疾患の特徴なのである。

そんな中、横浜市では今年から、心臓血管の緊急手術を行える病院が直ちに参照できる「横浜心臓血管外科救急ネット」というシステムが稼働している。仕組みとしては、カレンダーのソフトを一部流用したようなもので、その日に患者を受け入れることが可能な病院から連絡がくると、その情報を随時更新している。

言葉にすると簡単なようだが、学閥や利害関係が複雑に絡むこの業界では、こうした横断的な連携は全国でも珍しいケースといえる。一体どうやって、その「しがらみ」を乗り越えていったのだろう。

その葛藤と現場の実情を伺うべく、このシステムを作り上げた中心人物の一人である「菊名記念病院」の尾頭(びとう) 心臓血管外科部長を訪ねてみた。
 


菊名記念病院外観




搬送途中に亡くなるケースが多い、心臓血管手術の緊急性
 


気さくに何でも話してくれた尾頭先生


尾頭先生によれば、現在心臓血管外科を扱える病院は、横浜市内にわずかに15病院しかないそうだ。ただでさえ数が少ないにもかかわらず、以前は学閥や派閥などのしがらみもあって、相互に連携が取れていない状態が続いていたらしい。

このため急患が発生すると、現場の医師たちは、自分の知り合いや既知を頼りに患者の受け入れ病院を探していたそうだ。中には、せっかく近くに手術のできる病院がありながら、わざわざ遠い都内の系列病院などへ搬送するケースもあったと話す。

心臓血管手術が必要な疾患には「急性大動脈解離」や「大動脈瘤破裂」などがある。

「急性大動脈解離」では一時間ごとに数%ずつ命を失う可能性が高まり、「大動脈瘤破裂」に至ってはどれだけ早く手術を受けられるかが生死を分けるとのこと。症状が比較的軽く、虚血症(身体に血液が行き渡りにくくなる症状) を引き起こしているような場合でも、6時間が目安となるそうだ。

しかしこうした事情もあり、実際の患者のうち約半数は、実は病院到着前に亡くなっているのだというから驚くべき現実である。



そんな命を一つでも救いたいという想いが、しがらみを乗り越えた


 


今では、13病院が参加する「横浜心臓血管外科救急ネット」


こうした現状の中、患者の受け入れを流動的にすべく、しがらみを超えて各病院の情報を共有しようと動き出したのが、尾頭先生をはじめとした数名の医師たち。

2009年当初は、現在の「ネット」という形ではなかったものの、「横浜労災病院」、「菊名記念病院」、「済生会横浜市東部病院」の3病院による連携からスタートしたそうだ。そこからこの「輪」を広げるべく地道に1件1件、各病院を説得して回ったらしい。

そうした努力が実り、やがて系列に多くの病院を抱える「横浜市立グループ」下の、「横浜市立市民病院」、「横浜市立大学付属市民総合医療センター」、「横浜市立大学付属病院」の合計3病院が新たに加わることになった。

また、「ヨコイチグループが加わるなら・・・」ということで、これを機に他院への折衝もスムーズになったという。もちろん、賛同してくださった各医院の著名な先生方の口添えも大きな原動力となったそうだ。