緊急患者を救う「横浜心臓血管外科救急ネット」の試みとは?
ココがキニナル!
一刻を争う心臓の手術が必要な時に、病院探しの手間を低減する体制を、横浜市内の心臓外科血管外科医が中心となってスタートさせた「横浜心臓血管外科救急ネット」の詳細が知りたいです。(yoshさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
現場の医師たちが自ら連携した、学閥よりも患者の命を優先した試み。横浜発、全国でも珍しい体制がすでにはじまっている。
ライター:河野 哲弥
そんな命を一つでも救いたいという想いが、しがらみを乗り越えた
(続き)
こうして今では、心臓血管外科を扱える15病院のうち13の病院でネットワークを築くに至っている。
今年4月には、社団法人神奈川県医師会から正式な承認を受け、同医師会が参照する情報センターともリンクをはじめた。これにより医療機関だけではなく、現場の救急隊にも情報が伝わるようになり、より迅速な行動が可能となっている。
横浜市消防局の救急隊(イメージ)
なお、具体的な症例数までは各病院間で共有できるに至っていないが、菊名記念病院に限っていえば、2010(平成22)年に存命のまま搬入された患者数は15名。うち13名が救命され無事退院となった。
症例数はその年の気候などに左右されることが多いので(一般的には寒い年に増加傾向)、 一概に過去との比較はできないが、確実に実績を出していることだけは確かだ。
実際の緊急手術室も見せてもらった
関係者以外立ち入り禁止の、緊急手術室の様子
手術中、心臓のかわりとなる「心肺装置」
この「横浜心臓血管外科救急ネット」。もちろんこのような取り組みは全国でも初。横浜市に住んでいることを誇りに思えるうれしい体制なのだが、実はあまり知られていないそうだ。
今後は、心臓血管外科にとどまらず、例えば出産など人の「生」に関わる領域にも広げていきたいと、尾頭先生は考えている。また、症例数などの情報共有も今後の課題だと言う。
緊急患者の搬入口、ここから手術室へ運ばれる
治療技術だけではない「名医の条件」
他の地域の中には、行政の依頼などにより、病院間で順番に当直をしていく「輪番制」を実施しているところもあるそうだ。
しかし、緊急患者が重なると対応しきれず、流動性に欠けると言わざるを得ない。
本当の意味で患者の生死を優先するのであれば、こうした学閥・派閥にとらわれない動きこそが重要なはずだ。また、現場の医師が主体的に運用しているということは、押しつけ感ややらされ感のない安心できる体制ということでもある。
近い将来、横浜市内での死亡率が低下し、あるいは出産率が上昇するようなことがあれば、その裏には「横浜心臓血管外科救急ネット」のような人知れず陰で働く、現場の医師たちの努力があるに違いない。
今後、横浜発の事例としてぜひ全国に広がってほしいものである。
―終わり―