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昔、横浜で流行ってたクモを戦わせる遊びは、今でも行われているのか?

ココがキニナル!

以前、横浜でクモを戦わせる遊びが流行った事があったと言う話を耳にしました。現在でも行われているのでしょうか?(enさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

環境の変化と時代の流れで知る人は少なくなったが、横浜の子どもの間で大流行したクモを戦わせる遊び「ホンチ」は現在でも行われている!

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ライター:ほしば あずみ

バトルに熱くなるのは男子の性(さが)



いつの世にも少年たちがこぞってハマり熱病に浮かされるようにその事で頭をいっぱいにする遊びの流行がある。

昭和20年代から30年代にかけて、横浜の少年たちの中で大流行したのが「ホンチ」と呼ばれるクモを戦わせる遊びだったという。
ホンチはクモの名前でもあり、またクモを戦わせる遊びそのものもホンチと呼んだ。
駄菓子屋の店先ではホンチを入れる箱が山積みで売られ、学校によっては持ち込み禁止を言い渡したというから、かなりの流行だったのだろうと想像される。
だが今その遊びを知る人は少ない。

ホンチとは何なのか?
どうして姿を消したのか?
今まだどこかで行われているのか?



ホンチの手がかりを求めて

ネットで探してみると「横浜ホンチ保存会」という団体が、毎年5月に大会を開いているという情報を得ることができた。
ホンチ遊びはまだ行われていた!

いったいどのようなものなのか、「横浜ホンチ保存会」の前川さんにお伺いした。
 


「横浜ホンチ保存会」の前川隆敏さん、ホンチ暦52年。奥深いホンチの世界を語っていただいた


―まずホンチについて教えてください
「ホンチというのは、ネコハエトリというクモのオスの成体です。クモは何度か脱皮を繰り返しながら成体になります。メスやまだ若いネコハエトリはババと呼び、見た目も違います。大人のオスは体が真っ黒で、これは桜の花が散って新緑の季節になる頃に現れます。この時期、オス同士が出会うと戦う習性があるのです。ホンチ遊びはこの自然界でもともとやっていることを行わせているんです」


手の上で戦うホンチ。画像は横浜ホンチ保存会がからお借りしたもの


「僕らが子どもの頃(昭和30年代)、春休みくらいになると、駄菓子屋の店先や文房具屋にホンチ箱が山積みになるんですよ。1個5円とか、もう少し後になると10円くらいかな。そうするともうなんだかそわそわしてね。暖かくすると脱皮が早まるから、ババをホンチ箱に入れて、それをおなかに抱いて暖めながら寝て、朝起きてホンチになってないかどきどきしたりしてましたね」
 

前川さんが実際に使っていたホンチ箱。ダンボール紙でできていて、
6匹納めることができる。表面にさまざまな模様の千代紙が張られていた。

 


6匹用と同様、駄菓子屋などで売られていた1匹収納用の「ガブリ箱」。保存会の会員の方が再現した




消えたホンチ



―ホンチの流行が終わったのはいつですか? なぜ遊ばなくなったのでしょうか?
「昭和39年の東京オリンピックの頃あたりから、しだいに遊ばなくなっていったかなあ。
横浜も宅地開発が進み環境が変わって、ホンチもあまり見かけなくなりました。昔はホンチの餌になるハエや蚊もいっぱいいたしマサキの生垣もあった。今は食べ物を出しっぱなしにしていてもハエがたかる事なんてないでしょう。生垣も消毒するからクモもいない。それに子どもたちの遊び方も変わってきたんですよね」
ただ前川さんご自身はホンチにハマり続け、その魅力にとりつかれたまま今日に至っているという。

―前川さんにとってホンチって何でしょう? ホンチの魅力とは?
「子どもの頃は、やっぱり戦うところが好きだったんですよね。ホンチは見た目のかっこ良さもあるし、探す楽しみ、捕る面白さもある。ライバルの存在も大きいですね。強いホンチを持ってるとヒーローになれたんですよ。でも大人になってからは、むしろ美しいと思うようになっていったんですよね。戦いをはじめる時のケンをふりあげる動きとか、洗練された美しさを感じるんです」

ホンチが戦うのは繁殖シーズンのみ。わずか半月足らずだ。その時期はちょうど新緑の季節と重なり、その季節感も関係があるのかもしれないという。