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歩いて体験する博物館? 保土ケ谷区の「まちかど博物館」を巡る!

ココがキニナル!

保土ヶ谷区にある「まちかど博物館」って掲げているお店がありますが、あれは何でしょうか?お店が博物館ってこと?(はまらるさん)

はまれぽ調査結果!

2007年度から始まった保土ケ谷区の「まちかど博物館」は老舗店など10館に古道具などが展示してあり、店主のお話も伺えるユニークな取り組み

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ライター:山崎 島

先日ぶらり保土ケ谷区を通っていたら、お店と思われる建物の前に「まちかど博物館」というのぼりが立っていた。
 


こういう感じで

 
ライター・山崎は大学時代、唯一取ることのできた学芸員の資格を、どうにか生かそうとして必死なため、博物館という文字には敏感である。親からのプレッシャーとかも、結構すごいのである。そんなおり、編集部・小島からキニナル調査の依頼が入った。そんなわけで「まちかど博物館」調査のために、保土ケ谷区へ行ってきた。



まちかど博物館とは?



インターネットで調べてみると「まちかど博物館」は保土ケ谷区の取り組みだそうで、まずは区役所の方にお話を聞く。対応してくれたのは保土ケ谷区区政推進課まちづくり調整担当係長の吉池美奈(よしいけ・みな)さんと企画調整係の菊武浩平(きくたけ・こうへい)さんのお二人。では、「まちかど博物館」って何でしょう?

保土ケ谷区では、緑が多い地域の「緑の軸」、帷子川が流れる地域の「水の軸」、旧東海道保土ケ谷宿跡の「歴史の軸」の3つの軸を定義した「まちづくり」を行っている。
 


3つの軸の保土ケ谷トライアングル

 
今回取材する「まちかど博物館」は、その中の「歴史の軸」に基づいた区の取り組み。

区が2006(平成18)年度に策定した「歴史まちなみ基本構想」において、地域住民同士だけでなく、地域住民と保土ケ谷区を訪れる人たちの交流を通じて「巡り歩いて楽しめるまち」を実現するために、2008(平成20)年に7館がオープンした。

区が保土ケ谷区の歴史と生活文化に関連した資料や、生業に関する技術などを物語る道具の展示を、区内の歴史ある店舗や建物に依頼。つまり、街中の古いお店や建物一軒一軒が博物館、というわけです。店舗によっては地域の方による体験コーナーもあるそうで、区との協力体制がうかがえる。
 


いろいろなイベントもある!

 
現在は10軒の「まちかど博物館」が、区内に点在しており、2013(平成25)年度からは毎年秋ごろに1ヶ月間限定のスタンプラリーを開催。8ヶ所のスタンプを集めると旧東海道保土ケ谷宿のはんてん型の手ぬぐいがもらえるというイベントもある。
 


2016(平成28)年度は赤色の保土ケ谷宿はんてん型手ぬぐい!

 
「スタンプラリーを通じ、目的をもってまちかど博物館を訪れ、かつ歴史にちなんだプレゼントがもらえる企画となっています。参加される方は地域の小学生や歴史好きなご年配の方が多いと思いますが、時々遠方から訪れる方もいらっしゃいます。2016(平成28)年度は126名の方にプレゼントをお渡ししました」と吉池さん。

「横浜市は1927(昭和2)年に区制を導入して、5つの区が誕生しました。そのうちの1つが保土ケ谷区で、区制90周年を迎えます。古くからある区なので、その歴史を多くの方に知っていただければ、と思っています」と吉池さんと菊武さんは話してくれた。

「まちかど博物館」を中心としたこの取り組みは、地元の人にも保土ケ谷にぶらり来た人にも楽しめますね。保土ケ谷区って良い所なんだなあ。



これぞ歴史体験だと思う!



では保土ケ谷区の「まちかど博物館」にはどんな展示があるのか。ネタバレにならない程度に、ということで今回は3ヶ所を巡ってきた。
 


まちかど博物館マップ。1日あれば全部回り切れるが、定休日もあるので注意
※クリックして拡大

 
今回は帷子町の「キク薬局」、岩間町の「後藤印店」、同じく岩間町の呉服店「ひろた屋」へとお邪魔する。では出発!

 

移動中にもあちらこちらで歴史にまつわる看板や


建物がある。こちらは大正時代初期に建てられた消防署の建物

 
こちらの建物は、かつては消防車を収納していたそうで、現在は町内会館として大切に使用されている、帷子会館です。鳩が飛び出してきそうな屋根裏の小窓がかわいい。

 

1店舗目はキク薬局


明治時代に天王町で開業したという、老舗の薬局

 
こちらのご店主=館長は山方正枝(やまがた・まさえ)さん。山方さんは御年78歳で現役薬剤師。立ち振る舞いには気品漂う。名刺をお渡しすると「お名前は島さんていうの、素敵。27歳? まだ女学生さんみたいね」と山崎を励ましてくださいました。

 

嬉しい! でも最近前髪にがっつり白髪増えてるんです・・・


同店はお店の外に古道具を展示している


かつて製薬に使用していた道具

 
「こちらは戦前に使用していた道具です。昔は厚生省に許可を得て自家製剤を作っていました。左手にあるのが殺鼠剤(さっそざい)などの毒薬を作る際に使用していた乳鉢、乳房です。私は実際に使ったことはないのだけど。右手にある大きな乳鉢と乳棒は、薬をいっぺんにたくさん作るためのもの。幼いころ、父の手伝いで私も使った思い出があります。もうだいぶ使っていなかったから、ここに展示するまではお花を活けてました」と山方さん。

 

展示品以外についても、いろいろなお話をしてくださる

 
「私たち家族はもともと天王町に住んでいたんだけど、戦争の空襲で焼け出されてここに越してきました。天王町が焼けているときの火を、疎開先の上星川で見た記憶があります。保土ケ谷に移ってからは、区の中心地で区役所や警察署、消防署が集まって、とてもにぎわっていた帷子町のことを覚えています。お向かいの後藤印店さんがある場所は、以前は公園で警察の方が朝の運動や訓練をしていたのを毎日見ていました」
 


店内の相談スペースに移って続きを聞く

 
「30年ほど前に川辺町に主要施設が移動してからは、ここら辺は寂しくなりましたね。うちも近くにドラッグストアが出来たりして、お客さんも減ったけれど、昔からの常連さん達のためにお店を開けています」と山方さんは昔から現在までの街の変化の様子をお話くださった。

山方さんが「まちかど博物館」に協力するきっかけは、「私は近くの小学校で職業について講義したことがあって、その繋がりで区の人から依頼されました。では何か昔のものを探してみましょうって、外に展示してある道具を見つけて」とのこと。

「まちかど博物館」の取り組みに参加してみて、山方さんの感想は「小学生や歴史に大変お詳しい方がいらしたりして、面白いです。最近は、展示だけだとマンネリを感じるから、もっと昔の様子を今の人たちに伝えるような活動をしたいと思っています」と話す。まだまだ何事にも意欲的な山方さん。お話しを聞いているだけでもパワーいただけました。



魅力ある活版印刷



次に向かったのは、すぐ向かいにある活版印刷と手仕上げ印の後藤印店。

 

キク薬局向かいの後藤印店


ご店主の後藤孝年(ごとう・たかとし)さん

 
こちらは名刺やはがき、ネームプレートなどを作る印刷屋さん。ここでは活字を使ったここでは活字を使った“活版印刷”について知ることができる。お店に入ってまず目が引き寄せられるのは・・・

 

これ!!

 
か、活字だ!!! こちらは戦前に開業し、まだ活版印刷が現役の超貴重なお店だったのです。

 

イギリスの物を基に作った機械

 
私、一度活字にお目にかかりたかった。活版印刷とは活字(木や金属に彫り込まれた文字)を1字1字組み合わせて文章を刷るという、昔の印刷技術。

 

こんなふうに、活字を組み合わせる

 
「これはもうどこの会社もつくって無い機械。戦時中は軍が鉄製のモノを集めて、鉄砲の弾を作っていた。これは、戦後に買い戻したもの」と後藤さんは説明してくれる。文字を刷る機械が武器になっていた時代か、のどの奥にこみあげてくるものがある。