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保土ヶ谷区にある仏向町の名前の由来は?

ココがキニナル!

保土ヶ谷区にある仏向町って名前が凄いのですが、なにか神々しい由来があるのでしょうか?(太田町さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

今回の取材では、地元のお寺の和尚さんが北条氏の許可を受けて名づけたという説が有力な印象。ただ、他の説もあり、正確な由来は分かっていない。

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ライター:田中 大輔

仏と言えばお寺! 有力説発見!



そんな折、町内で50年以上も肉屋を営むという女性に話を聞いたところ、「お寺が関係してるって聞いたことあるよ」と情報をくれた。

女性の言うお寺とは、正福院という寺院で、その山号はズバリ“仏向山”。
お寺なら“仏”という字とも関わりが深いはず。さっそく正福院を訪ねてみた。

突然のお願いになってしまったが、副住職が興味深い話を聞かせてくれた。
副住職曰く、かつてこのお寺の住職だった堯室(ぎょうしつ)和尚が小田原北条家(いわゆる後北条氏。小田原城を本拠とした関東の戦国大名)に“仏向山”を名乗ることを許されたというのだ。

 


正福院は曹洞宗のお寺。立派な2本の大イチョウが立つ


このことは、文化・文政期(1804~1829年)に編纂された武蔵国の地誌『新編武蔵国風土記稿』にも記されているそうだ。
図書館で調べてみたところ、堯室和尚が初めて北条家に面会した際、願いがあれば申してみよ、と言われたんだとか。
それに対し和尚は、「唯常に仏に向ふこそ桑門の本意とする所なれば、寺の山号及びその村里にも仏向の二字をもて名づけ賜はるべし」と答えた。
つまり、出家した身なので仏に向かうことこそが本意です。ですので、寺の山号と村に仏向という名前を付けさせてください、といった感じか。

記録にも残っているし、お寺のお坊さんが偉い人にお願いして付けた名前、というのが真相のようだ! と思ったんだけど……。



ところが飛び出すほかの説



副住職からいただいた資料には、もうひとつ別の説が書かれていた。
『小田原衆所領役帳(おだわらしゅうしょりょうやくちょう)』という、北条氏康が作成を命じた分限帳(家臣の名簿のようなもの)に“佛餉(ぶっしょう)”という表記があり、これが仏向町を示しているというのだ。つまり、佛餉が転訛して仏向になったという説だ。

佛餉とは仏様にお供えする米飯のことで、民俗学者・柳田国男の『地名の研究』によれば、佛餉を作る田んぼを佛餉田と呼んでいたという。
関係者とも言える副住職は当然、前出の説を取っているそうだが、その佛餉田があった場所を“佛餉”と呼んでいても不思議ではない。


さらに、お寺を訪ねた後に立ち寄ったスーパーで店主の男性に話を向けてみたところ、「俺が親父に聞いた話だと、お寺と神社が向かい合っていたからだって」と新たな説が!
 


現在は町内の別の場所に移設された杉山社


詳しく聞いてみたところ、以前は正福院の正面方向に杉山社というお宮があり、仏(お寺)に向かいあっていることから地名が付いたというのだ。



縁起が良いのか悪いのか



思いがけず3つの説が飛び出し、真相がなかなかつかめない。
保土ヶ谷区役所にも問い合わせてみたが、区として把握しているのは堯室和尚の説と佛餉説の2つだそうだ。

図書館で史料を当たったり、インターネットで調べてもみたが、見つかるのはその2つ。
残念ながら、スーパーの店長に聞いた「お寺と神社向かい合わせ説」は見つけられなかった。
 


相鉄バスの停留所もある。名前の由来はハッキリせず


今回は、正福院の副住職に直接話を聞いたこともあって堯室和尚説が印象的だったが、佛餉説も文献に残っているので捨て難く、これ以上のことは謎のまま。
せっかく縁起の良さそうな名前なのになぁ、と思ったが、実は複数の地元の人から「あまり縁起が良くない」と聞かされたのだ。
仏に向かう=死に向かう、と解釈できるからというのがその理由。なるほど言われてみれば。
この辺りも、正しい由来が分かればスッキリしそうだが、今のところ、新しい史料の発見を待つしかなさそうだ。



―終わり―
 

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  • この問題は、櫻井澄夫著の『横浜の町名』(横浜市刊。初版。昭和57年)にかなり詳しくかいてある。仏餉は、仏聖とも仏生とも書き、いわゆる免田があった(仏餉田)のだろう。免田は今でも地名としてかなり残っている。こういう研究はしっかり参考にすべき。

  • 失礼ながら、小学生の頃は町名を聞いて「仏=仏事」しか思い浮かばずに年中葬式が行われているようにしか感じられず、今でも良いイメージが無いんですが・・・

  • 非常に興味深い話題です、テレビでも同じような番組が今後も色々な地名の由来つずけてください。楽しみにしています。まして地元となると、特別興味が倍増します。

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