生態学の世界的権威、横浜国大の宮脇先生が提言する津波対策とは?【前編】
ココがキニナル!
横浜国大の宮脇昭先生をインタビューしてください。特に神奈川県の沿岸部に植林して津波を防ぐ方法を提言して欲しいです。(にゃんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
神奈川県民は今いる場所が最善と考えて、そこで生き残ることを考えるべき。そのためにも潜在自然植生に合った樹木の苗木を植えることが必要である。
ライター:松崎 辰彦
瓦礫を埋めて植樹しよう
現在宮脇氏が推進しているのは、今回被害に遭った地域の海岸沿いに、瓦礫を地面に埋めてマウンドを作り、その上に植樹して防潮堤を作るという計画である。
「このたびの震災でできた瓦礫から毒性のもの、分解できないものを排除します。現在までに瓦礫の分別はほぼ終了していることが調査の結果わかりました。残った瓦礫の大半は木質性のものですが、それらを地中に埋めて土をかぶせます。その上からシイ・タブ・カシ類の苗を1㎡あたり3本から5本、密植・混植します」
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(図表提供 輪王寺)
こうしてできた防潮堤は、根が深く瓦礫に結びついているので、津波にも強い。成長速度はおよそ3年で3m、5年で5m。最初の数年は手入れが必要だが、それを過ぎると人手は不要となり、どんどん成長して樹林をなすという。こうして繁茂した木は、津波が来ても水の流れを破砕し、エネルギーを弱めると宮脇氏は説明する。
(図表提供 輪王寺)
この計画の主体となっているのが一般財団法人『瓦礫を活かす森の長城プロジェクト』(理事長・細川護熙(もりひろ) 副理事長・宮脇昭)。
青森県から福島県におよぶ300キロの海岸線にこのたびの震災で生まれた瓦礫を使ってマウンドを作り、その上にシイ・タブ・カシ類を植えて防潮堤を作るプロジェクトを進めている。
目標本数:9000万本/3000km
緑の壁が津波を防ぐ
(以上図表提供 一般財団法人『瓦礫を活かす森の長城プロジェクト』)
「津波は低いところを襲うのだから、高い所へ移住すればいいと言う人もいますが、歴史的に見ればメソポタミアもギリシャもエジプトもローマ帝国も、すべて海岸沿いにあったんです。現代でもニューヨークもロンドンも、東京も大阪も海岸沿いにあります」
海岸沿いは人間にとって最も住みやすい。町をあげて高台に上っても、やがて降りてくる人が出てくる。30年も経てば、役所も下に移るだろう。
「するとまた地震がくるでしょう。神奈川県の皆さんは、いま住んでいるところが一番いいと考えて、その場で生き残る準備をするべきです」
植樹には多くの人が集まる (写真提供 宮脇昭)
宮脇氏は、現在の産業活動でできる廃棄物と呼ばれるものも、そのほとんどが貴重な地球資源として活用できると言う。ビニールなどの分解困難なものを排除して土に埋めることで、植樹のマウンドができる。
その上にシイ・タブ・カシ類の苗を植える。シイ・タブ・カシ類は深根性・直根性であり、瓦礫をしっかり抱いて大地に安定し、大きく成長する。
さらに余裕があればモチノキ・シロダモ・カクレミノといった亜高木、さらにヤツデ・アオキ・ヒサカキといった低木を植えてもいいとアドバイスする。
植樹は防災になる (写真提供 宮脇昭)
取材を終えて
植樹指導中の宮脇氏。麦わら帽子が絶妙に似合う
世界中から植樹指導に招かれ、森を作り育てる技術を伝えている宮脇氏。
「私は岡山の農家の4男坊に生まれ、64年間もっぱら同じことばっかりやってきた泥臭い男です」
この“泥臭い男”が、日本を災害から守る手立てを知る人物として少なからぬ関心を集めている。
被災した地域に瓦礫を埋めたマウンドを作り、植樹をして人工林を作るという壮大な計画は多くの共感を呼び、支援する人が続々と現れている。
圧倒的な自然の猛威の前に、人は何ができるか。緑の防潮堤は、その有力な答えの一つである。
自分を守るために、愛する人を守るために、私たちにできることは何か。一本の苗木を植えることに、どのような意味があるのか。後編でさらに深く見ていきたい。
─以下後編─
取材協力・図表提供
公益財団法人国際生態学センター
http://www.jise.jp/
曹洞宗金剛宝山輪王寺
http://www.rinno-ji.or.jp/
社会福祉法人進和学園
http://www.shinwa-gakuen.or.jp/
株式会社研進
http://www.kenshin-c.co.jp/
一般財団法人『瓦礫を活かす森の長城プロジェクト』
http://greatforestwall.com/
株式会社学研パブリッシング
http://gakken-publishing.co.jp/
「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」設立記者会見 2012(平成24)年5月25日
http://youtu.be/1xwb69eJf64 (音が出ますのでご注意ください)
※植樹を通じて災害を防ぐ方法については宮脇氏の近著『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る』(学研パブリッシング)等に詳しい。
ホトリコさん
2015年05月07日 13時09分
横浜港や沿岸部の津波対策の投稿した後で確認したが、ユニークな対策ではあるが、港湾施設には無理があるので後編に期待。