患者さんに優しい、患者さんの視点で運営される病院

「うちの病院は『創始者の偉業をたたえて』という意味ではないんです」、といきなり意外な言葉が。

初代理事長の善三さんは、1984（昭和59）年にこの病院を開くまでは、別の専門病院を経営していた。ところが長年の激務のため、病に伏せ閉院を余儀なくされる。

その長い闘病生活の中で、初めて患者の視点から、病院や医師を見るようになる。患者の視点を持ってみると、以前は感じることのできなかったさまざまな思いが、病院や医師に対してあったという。

そこで、復帰後に作る病院は、「患者さんに優しい、患者さんの視点で運営される病院」を開こうと考えた。その初心を忘れないようにと、病院名に「記念」を付けたのだった。

この「記念」という言葉だが、辞書をひもといてみると、

あとの思い出として残しておくこと。また、その物。 「卒業を―して植樹する」「―品」

これが一般的に病院名に付く、「記念」の意味だ。そして、この言葉には、もう一つの意味がある。

過去の出来事への思いを新たにし、何かをすること。 「―の行事」（出典：三省堂　大辞林）

山本記念病院の「記念」の意味するところは、こちらだったのだ。
英語表記も一般的な「MEMORIAL」ではなく、後者の意味と、「祈念する」の意味も込めて「KINEN」としたのだった。
　

無料送迎車も患者のためを思ってこそ

もちろん、何もかもが理想どおりにはいかないのが現実の厳しいところだが、少なくとも、病院の方針として、はっきり「患者さんに優しい、患者さんの視点で運営される病院」と言明しているのは、患者さんからすれば、実に心強いことである。

山本先生は、「患者さんに優しい、患者さんの視点で運営される病院」を一歩進めて、9年前に自由診療部を院内に設立した。

自由診療部は、体・心・命を大切にした生命まるごとの医学であるホリスティック医療の試みとして、西洋現代医学だけにとらわれず、インド大陸の伝統的医学である、アーユルヴェーダなどの東洋医学も治療に積極的に取り入れている。
　

船のようにみえる山本記念病院の横からの眺め

初代理事長の善三さんは、たいへん船が好きだったので、病院の外観は船を模して建設されたという。この船は、たくさんの患者さんを乗せ、健やかな生活に向けて今日も航路をとっていることだろう。



取材を終えて

山本記念病院さんのケースは珍しく、非常に有意義な取材となった。なお、冒頭で述べた通り、一般的には創業者などの業績をたたえる、という意味であることが多い。

鶴見区にある片山整形外科記念病院の事務長の堀江さんにもお話を伺うことができた。こちらは、まさに「業績をたたえて」のネーミングであるとのこと。

同病院の前身「矢橋整形」時代の顧問であった片山良亮先生の業績をたたえて、1973（昭和48）年に「片山整形外科記念病院」と名称を改めたそうだ。ちなみに、英語表記は、もちろん「KATAYAMA Orthopedics Memorial Hospital」と「Memorial」が使われている。

普段、路線バスのアナウンスや、駅のホームでも見かける、○○記念病院という名前。そこには、それぞれの病院の思いが込められているのだということを改めて認識した。


―終わり―


山本記念病院
所在地／横浜市都筑区東山田町1552
電話／045-593-2211 (代表）
診療受付時間／8：45～11：45、13:00～16:45 (土曜日は午前受付のみ）
休診日／日曜、祝日

片山整形外科記念病院
所在地／横浜市鶴見区北寺尾4-13-1
電話／045-581-7137　
診療受付時間／9:00～11:00、13:30～16:30
休診日／日曜・祝日・年末年始（12／29午後～1／3）