大人・子ども含めて89人が集団欠席

（つづき）

ノロウイルスは二枚貝に多く含まれ、それを食べた人が感染することがある。
ノロウイルスの感染力は加熱で失われるが、食品から人に感染するよりも、感染した人から別の人へ移る「ヒト・ヒト感染」も多いことから、同課では食品に限らず、児童から週末の行動や接した人についても聞き取りなどを行うとしている。

同課は同時に児童に対して検便を行うなど、原因の特定を急いでいる。通常は早ければ1日から2日程度でウイルスは特定できるそう。

また、29日には欠席者は9人となったものの、原因が特定できていないため、31日（金）までパン給食を継続することを決定。パンと牛乳のほか、ゼリーやチーズなど個別包装されたメニューを徐々に増やしていく。

予防はどうしたらいい？

今回はノロウイルスによるものという可能性も考えられる。では、そのノロウイルスから身を守るためには、どうしたらいいのだろうか。

横浜市では感染症法に基づいて「感染症発生動向調査」を行っており、それによると、2014（平成26）年3週（1月13～19日）の報告数は878人で、1定点医療機関当たりの1週間の患者数は10.33人。感染症胃腸炎警報発令基準（1定点医療機関当たり1週間の患者報告数20人）とまではいかないものの、警戒が必要な段階となっている。

「定点医療機関」とは、感染症の発生状況を知るために一定の基準に従ってこれらの情報を報告してくれる医療機関のことで、流行状況について全体の傾向ができるだけ反映できるように、医療機関の中から、保健所管内の人口に応じた数の定点医療機関を無作為に選定したもの。

仮にノロウイルスが原因だとした場合、その対処方法について食品衛生課は「手を良く洗うこと」「吐しゃ物や排便を直接触って処理しないこと」「体調管理に気を付ける」などをあげている。
　

横浜市が作成したポスター

「手を良く洗うこと」に関しては、水で流すだけでなく石けんなどで指の付け根やしわの間まで意識して、じっくり洗わなければいけないそう。
　

極端に言えば指紋のすき間も意識して洗うイメージ

また、ノロウイルスはアルコールによる除菌の効果がきわめて低いのだという。同課は吐しゃ物を処理する際は「『次亜塩素酸ナトリウム』入りの台所漂白剤をまいたうえで処理に当たってほしい」と話している。
　

次亜塩素酸ナトリウムが入った台所洗剤の一例

また、投稿にあった発表の条件については市教委健康教育課独自の基準があるという。

それによると、発表に際しては「学校教育活動が原因の食中毒と『断定』した場合」は、人数の多寡（たか）にかかわらず公表する。
そのほか「同一校内で2つ以上の複数クラスで給食による食中毒の『疑いがある』場合は、医療機関や保健所などによる検査で病原体が判明した時点」で発表に踏み切るそうだ。

29日午後6時の段階では原因が特定されておらず、市も正式な発表をしていない。市教委では「保健所の検査が終わった段階で公表も含めて対応を検討する」としている。

取材を終えて

今回のケースは病原菌が特定されていない（1月29日時点）が、ノロウイルスは決して軽い症状ではない。先般の浜松もしかり、京都市では昨年12月、病院内でノロウイルスの集団感染によって死亡者まで出ている。

病原菌が特定できないから公表できないという市の主張は、余計な不安と誤った情報を伝えたくないという意図があり、それには当然にうなずけるものだが、90人近い児童が一度に休むということは軽視できる事態ではない。

早急な原因の特定と正確な事実の公表が待たれる。


―終わり―