JR南武線の武蔵小杉から武蔵溝ノ口まで、4駅連続で「武蔵」が頭に付く理由とは!?
ココがキニナル!
南武線の武蔵小杉-武蔵中原-武蔵新城-武蔵溝の口と4駅連続で武蔵がつくけど由来は?(nachof さん、hi-ta さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
理由を明確にした資料を見つけることはできなかったが、すでに地名の駅が存在しており、混乱を避けるため頭に旧国名の「武蔵」を冠したものと思われる
ライター:吉田 忍
「武蔵」をつけた理由
上にも書いた通り、新たな駅名を付ける場合は、切符を買うときなどに間違いが起きないように既存の駅名との重複を避けるという原則がある。
同じ地域の場合、「東西南北」を付けたり「新」を付けるなどの対策を行う。異なる鉄道会社の場合には、「京急川崎」などのように会社名の略称を付ける場合もある。
会社名の略称をつけている「京急川崎」
遠い場所なら同じ駅名でもさほど混乱はないだろうが、JR(旧国鉄)の場合、路線が全国にわたるので、遠くても間違える可能性がある。
調べていて気付いたのは、特にJR(旧国鉄)の駅には、旧国名がプラスされている駅名が多いということ。
旧国名をつけるのは、「どの地方の○○駅かが分かるように」と考えられたのだろう。
「武蔵」は旧国名で、東京都23区及び多摩地域と埼玉県ほぼ全域に加え川崎市の全域、および横浜市の一部はかつて「武蔵の国」であった。
「武蔵の国全図」 武蔵の国は広大だった
関西には、摂津○○駅や河内○○駅、和泉○○駅などがあり、九州では肥後○○駅や薩摩○○駅。四国の場合、阿波○○駅などとなる。これらはすべて旧国名である。
武蔵の国は広かったので、同様に「武蔵」を冠する駅名はほかにも埼玉県と東京都に数多く存在する。
武蔵浦和駅、武蔵小金井駅、武蔵境駅など私鉄などを含めると20駅以上あるようだ。川崎市にももうひとつ、鶴見線に武蔵白石駅がある。
南武線の4駅に「武蔵」をつけたのは、これらの前例にならって、武蔵の国の○○駅という意味を持たせて命名されたものと考えられる。
そして、考えてみれば、南武鉄道の「武」も「武蔵」の「武」だと思われる。
南武鉄道が武蔵の国の南の鉄道という意味でつけられたのだとすれば、これらの駅名に「武蔵」をつけた理由として信憑性を増す。
JR広報に問い合わせてみた
以上が調査した結果であるが、文献などに同様な考察は見受けられるけれども、南武鉄道が駅名を決めた際の経緯を記した資料を見つけることはできなかったので断定はできない。
そこで、基本的な駅名の付け方なども含めてJR東日本横浜支社広報に伺った。
まず、駅名は具体的にどのように決められるのかを伺ったところ、新しい駅が設置されるときには、その場所の地名を使うことが一般的だが、自治体などと話し合って決めているとのこと。
また、混乱を避けるために既存の駅名と違う駅名にするのは基本的な原則ではあるが、厳密な決まりではないのだそう。
実際に、JRの中にも同じ駅名はいくつか存在する。たとえば、横浜にある根岸線の「根岸駅」は同名の駅が福島県の只見線にもある。
「根岸」という駅名は、根岸線と只見線に存在する
横浜の根岸駅は1964(昭和39)年、只見線の方は1934(昭和9)年の開業なので、横浜の根岸駅の方が後からつけられた。気付かずに見逃されてしまったか、問題ないと判断されたかのどちらかだろうが、その経緯はJRでもわからないとのこと。JR(旧国鉄)でも駅名を付ける際の経緯などを記した資料は残していないようだ。
表記も読み方も同じ「ねぎし」 (※Googleマップより)
南武線の4駅に連続して「武蔵」がついていることについては、「南武鉄道時代のことなので明確な証拠はないが、同名の駅名がすでにあったので旧国名を冠したということではなかろうかと思います」とのこと。
そして、JR(旧国鉄)に、旧国名をプラスした駅名が多いことについて、そういう例は多いが、そのようなルールがあるということではないそうだ。
最近、特に関西では「JR○○駅」という駅名も増えているとのこと。調べてみると「JR難波駅」「JR小倉駅」などいくつかある。
新駅名のつけ方にもその時代の流行があるのかもしれない。旧国名は現代では認知度が低くなっているのも事実だろう。しかし、これらの駅名のひらがな表記は「じぇいあーるなんば」「じぇいあーるおぐら」。なんとなく変な感じがするのは筆者だけだろうか。
取材を終えて
南武線の4駅の駅名に「武蔵」がつくのは、それぞれの駅がある場所の地名の駅がすでに存在したためで、「武蔵」を冠したのは、旧武蔵の国の○○駅だということを分かりやすくしようとしたものであろうと思われる。
4駅連続するのは、すでに駅名として存在する地名が続いた偶然ということだろう。
余談だが、「根岸駅」がある只見線の駅数は全部で38駅だが、そのうち17駅に「会津」がつく。もしも横浜の根岸駅の方が古かったら、おそらく会津根岸駅になっていただろう。
余談ついでに、青森県横浜町にあるJR大湊線の駅名は「陸奥横浜駅(むつよこはまえき)」である。
旧国名がついた「陸奥横浜駅」
旧国名がついた駅名から、その地のかつての国名を知ることができる。それらの旧国名から昔に思いをはせるのも楽しい。
― 終わり ―
参考文献:川崎地名辞典
gthanaさん
2017年06月27日 01時23分
陸奥横浜駅は、乗り換え案内アプリを使うと、横浜駅の候補として出てくるので、駅名だけ馴染みがありますね。
まゆーんさん
2016年03月27日 14時02分
神奈川関係ないけど「こくら」じゃね?と思ったら、「JR小倉(おぐら)駅」は京都府宇治市なのですね…。どっちもJRだろ!と却って混乱しますが、どう考えて駅名つけたのか。
とらっきーさん
2014年06月07日 22時08分
武蔵中原駅の出口手前に「ここは武蔵"中原"」という看板があります。武蔵⚪︎⚪︎という駅名が連続しているため、降りる駅を間違える人が多いようです。混同防止のため駅名に武蔵をつけたことが、逆に新たな混同を生んでいます。何か良い方法はないのですかね…