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お地蔵さんを背負って町内をまわる!? 江戸時代から伝わる風習「廻り地蔵」ってなに?

ココがキニナル!

お地蔵さんを町内で回してゆく、「まわし地蔵」という民間信仰が泉区と港北区にあるそう。どんな風習なのか、くわしく知りたい!(紀洲の哲ちゃんさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

廻り地蔵は江戸時代からの風習で、30kgのお地蔵さんが入っている背負い式お堂を子どもの成長を祈願し、地域の家を順番に廻すもの。

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ライター:大和田 敏子

いよいよ本物のお地蔵さまを見せていただく! いったいどんな姿? 
 


現在、Nさん宅にあるお地蔵さまを見せていただいた


Nさん宅では、今回は、お地蔵さまが彼岸の前に来たので、彼岸明けまで置いて祀ってから、次に廻そうと思っているという。

「小さいころからずっと続いているので、ごく自然にまた来たんだと受け入れ、あるのが当たり前と感じている。子ども達にとっても良い風習だと思います」とNさん。
「お地蔵さまは縁起物のようなところもある。同じ地区内に嫁ついだ娘に、近く子どもが生まれるので、ちょうど、その時期にお地蔵さまが行くように日数調整できたらな~」とも。何とも微笑ましい。
 


食べ物やお花が供えられ、大事に祀られている


お地蔵さまの前面の金網の部分には、たくさんの人形やマスコットがつけられている。子どもを授かれば安産を祈願して、子どもが生まれたら名前を書いたものなどを無事の成長を祈願してつけるのだそう。
 


手作りのマスコットは色とりどりで個性豊か


いっぱいになったら金網からはずし、お寺でお焚き上げするという。
 


金網からはずされたマスコット(画像提供:東泉寺)


お地蔵さまの姿にも特徴があるとうかがい、中のお地蔵さまを見せていただくと、左脇に子どもを抱きかかえている像だと分かる。「子育て地蔵」「身代わり地蔵」とも呼ばれるお地蔵さま、子ども達を抱きかかえて守ってくれることを象徴するその姿は、とても印象的だ。
 


お地蔵さまは子どもを抱いている
 

正面から見たお地蔵さま(画像提供:東泉寺)


お地蔵さまを次の家に送る時は、お賽銭をあげて、帳面に滞在日数とお賽銭の金額を記す。
背負い式のお堂(幅約70センチ、高さ約90センチ)に納められたお地蔵さんは30kgもある。ちなみに、この30kgという重さ、小学1年生の体重と同じくらい。研究者によると、「6歳くらいまでしっかりおんぶして育てる気構えがなければ子育てはできんぞ」という先人たちの叱咤であるとの解釈もされているそう。

下飯田地区では昔から、お地蔵さまを運ぶのは嫁いできた女性の仕事とされているが、やはり重くて大変なので、男性が代わって担ぐことも少なくないそうだ。
 


男性が代わりに運ぶことも多い(画像提供:東泉寺)
 

隣家と離れているところでは、お地蔵さまを運ぶのも大変だ!


現在、下飯田地区の廻り地蔵の世話人代表をされている大川千鶴子さんにも、お話をうかがうことができた。
 


廻り地蔵を大切に守る思いを話してくれた大川さん


大川さんの実家、泉区和泉町にも、同じように廻り地蔵の風習があり、幼いころから親しんできた。
「今のようにモノが豊かではなく、娯楽が少ない時代。お地蔵さまが来ると、パッと家が明るく和んだ雰囲気になりました。どんなに忙しい時でも、祖母や母が、混ぜご飯やのり巻き、おだんごなどを作ってお供えしている様子を見たり、お友達を呼んでお地蔵さまの前で一緒に食べたりしたことが、心に残っています」と話す。

「今は豊かで何でも手に入る時代。それでも、お地蔵さまが来ると、何もわからない孫達も手を合わせたり、おだんごやお寿司を作るお手伝いをしたりと、付きっきりでお世話しようとする。そういう様子を見ていると、お地蔵さまが、オモチャやゲームとは全く違うものとして受け入れられ、貴重な時間を与えてくれているように感じます」と大川さん。
 


お地蔵さまを担ぐ大川さん(画像提供:東泉寺)


この下飯田地区では、お地蔵さまを、女性が守ることが昔から受け継がれている。お寺も直接関わっているわけではなく、世話人の女性達(5~6人)を中心に、さまざまなことが決められ風習が守られている。

お地蔵さまに上がっていたお賽銭の使い道やお寺での集まり(約2年に1度、お寺の近くに廻ってきたときに、お地蔵さまをお寺に安置し、皆でお参りをする)の詳細も、基本的には世話人の方々が決めるのだそう。女性が主に担っている文化だということが、横浜市無形民俗文化財においても鶴見川流域とは別指定になっている理由だという。
 


地域の人が東泉寺に集まり、お地蔵さまを前に念仏を行う(画像提供:東泉寺)




泉区下飯田以外(鶴見川流域)の廻り地蔵は?

鶴見川流域の廻り地蔵については、お地蔵さまを各家庭に廻していくのは同様だが、それぞれに、お地蔵さまの形や祀り方などには違いがある。下飯田のように人形やマスコットをつけて祈願する慣習はなく、細長い布に願い事を書いて厨子(ずし/お地蔵さまを入れている仏具)に縛ったり(緑区白山町)、賽銭を自家製の袋に入れ厨子に縛ったり(都筑区池辺町)するところもあるようだ。
 


港北区新羽町のお地蔵さま(画像提供:横浜市教育委員会)
 

港北区新羽町の巡回、家の主人が背負う(画像提供:横浜市教育委員会)




廻り地蔵の存続、今後の問題点は?

高齢化、核家族化が進む中で、お地蔵さまを運ぶ女性がいなかったり、子どものいない家も増えてきている。また、30kgもの重さのあるお地蔵さまを運ぶことが負担になり存続が厳しいと、ずいぶん前から、お寺に納めたらどうかという話も出てきているという。
 


お地蔵さまはお寺に安置するのが良いという考えも


東泉寺住職、関水さんは、お地蔵様の保護を高齢者ケアの問題と絡めて話す。
「生まれてから200年を超えたお地蔵さまは、要支援・要介護が必要な時期を迎えている。お寺に入所するというのも自然な選択肢かも知れないが、移動が困難ならお地蔵さま版の車イスのリアカーのような車を使ったりすることも考えにいれて、江戸時代から続く、各家庭を廻るショートステイの形を何とか存続していってほしい」とのことだった。



取材を終えて

廻り地蔵の由来やさまざまなエピソードをうかがって、心が温まった。
飢餓や病気で多くの子どもが亡くなっていた時代、無事成長を神仏に祈願するしかなかった人々の親心に思いを馳せると、この信仰の重みを強く感じる。

お地蔵さまを前に手を合わせる貴重な時間、お供えするごちそうを作ったり、一緒に食べたりして過ごす和やかな時間が、家族の絆を深めているように思う。

お地蔵さまが一家庭に滞在する日数に決まりがなく、それについて不満が出ることもないとうかがった。そういうゆったりとした慣習というのも良い。廻り地蔵が家から家へと渡ることで、地域の交流がなされ、互いの理解も深まっているのだろう。
存続については、問題も抱えているようだが、ぜひ大切に残していってほしい風習だ。


―終わり―

 
 

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  • ぜひ伝統行事・風習を残してほしいと思い増した。都筑区池辺町の滝ヶ谷戸の回り地蔵のレポートはこれです。こちらも是非ご覧ください。http://www.city-yokohama-tsuzuki.net/station/repo/zizou/zizou01/index.html(都筑のふくちゃん)

  • 全国ネットのテレビ局のニュース番組で、他県の情報として見たことがありましたが、横浜にもあったんですね。

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