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わずか23年で廃校になった栄区の「県立豊田高校」。その理由は?

わずか23年で廃校になった栄区の「県立豊田高校」。その理由は?

ココがキニナル!

栄区飯島町のわずか23年で廃校になった「県立豊田高等学校」。その後校舎は老人ホームなどに活用される事が多いのに豊田高校はなぜ再利用されず更地になったの?当時の高校の様子も含め知りたい(ねこみくさん)

はまれぽ調査結果!

神奈川県立豊田高校は1980年に開校し、その後23年間、横浜市栄区にあった。他校と統合し移転したが、跡地は雨水調整池などとして活用されている

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ライター:松崎 辰彦

豊田高校はこんな学校だった



「豊田高校は生徒一人ひとりの個性を大切にした学校でした。1年生から自由選択があり、自分の進路や適正にあった授業が受けられました」
こう語るのは神奈川県教育委員会教育局総務室県立高校改革グループ・グループリーダーの高橋慶吏(たかはし・けいじ)氏。関内にある教育局庁舎でお話いただいた。

 

お話を伺った皆さん。左から3人目、高橋氏。4人目、東田健志(ひがしだ・たけし)氏
 

「クロスカントリーや交通安全教育の『ヤングライダースクール』を実施するなど体験重視の教育展開をしていました。少人数のクラスで個々の生徒がどこで勉強につまずいたか、あるいはどんな悩みを抱えているかをしっかりと把握しながら授業をしていたと聞いています」

豊田高校は英語・数学・芸術などで小集団による授業が行われ、英語の授業では外国人講師との英会話レッスンも行われていたという。ビデオライブラリーもあり、1997(平成9)年の時点で約5500本のビデオが保管されていたというから、高校の中でも出色の環境だったように思われる。

 

豊田高校はこういう学校だった(提供:神奈川県教育委員会)
 

現在残っている資料によればすべて全日制普通科で、1996(平成8)年5月1日時点で1年生243名(6クラス)、2年生209名(6クラス)、3生年229名(8クラス)の生徒数681名。時代の要請にも敏感だったらしく、2年次は自由選択として、3年次は必修としてパソコンを教えていた。

部活は野球部、弓道部、テニス部、バドミントン部などのほかにスペイン文化研究部といった個性的な活動もあって、なかなか特色ある学校だったことが窺(うかが)える。

しかしながらこの学校が汲沢高等学校と統合され、この場所を去る展開となったのはどのような事情があったのだろう。



少子化が学校再編を促している



「少子化が進行して生徒数が減り、学校の活力が失われることが懸念され、汲沢高校との統合が決定されました。豊田高校は環境や福祉教育などの点で特色があり、一方の汲沢高校も情報と福祉に力を入れていた。この2校は小集団の体験重視の教育方針で、よく似た特色を持っていました」と高橋氏。

 

県立横浜桜陽高校。かつては汲沢高校だった(フリー画像より)
 

さらに続けて「地理的にも近く、生徒数が減少していた両校が一緒になれば活力を維持でき、新たな展開が生まれるのではないか、よい方向に向くのではないかという視点から統合されたと聞いています。汲沢高校を活用校として豊田高校の生徒が合流する形で横浜桜陽高校ができました」と経緯を説明する。

“活用校”という聞き慣れない言葉が出てきたが、これは校舎など設備を活用される側の学校を表わす名称とか。

その結果、豊田高校校舎は取り残されたが、県で使用する予定がないため、防犯や防火上の観点から取り壊した。

 

立ち入ることを禁止している
 

一方で近所の方々に伺うとたしかに“校舎がそのまま老人ホームになると聞いていた”という声が複数あり、そうした噂が流布したのは事実だったようである。

これについて高橋氏は「老人ホームになる予定があったとは把握しておりません」と説明し、さらに「そのときの要請に応じて土地を活用するわけで、必ずしも老人ホームありきではありません」と言葉を継いだ。

跡地をどう利用するか、更地にした時点ではまだ決定していなかったようである。



雨水調整地として利用されている


  
現在の豊田高校跡地は何も建っておらず、平坦な更地のままに見える。しかし周囲の道路を歩いて中を観察すると、決して遊休地ではないことに気づく。

 

雨水調整池として機能している
 

「飯島第二雨水調整池」という表示がある。
これについて神奈川県県土整備局河川下水道部河川課整備グループ・グループリーダーの東田健志氏は説明する。

「豊田高校跡地は現在、雨水調整池として活用されています。人口の密集している地域に豪雨が降った場合、市民生活に支障が出る恐れがありますが、この地域では雨水管を通して雨水を雨水調整池に流し、溜めることで民家の雨水被害を防いでいます」

 

1976年9月洪水の浸水状況(舞岡川;戸塚区舞岡町、提供:横浜市道路局河川部河川計画課)
 

1979年10月洪水の浸水状況(帷子川;横浜駅西口、提供:横浜市道路局河川部河川計画課)
 

こうした説明の背景には、この周辺地域の家屋が2004(平成16)年10月の台風23号よって浸水被害を受けた事実がある。この台風のあと、付近一帯が浸水対策が必要なエリアとして認識されるようになったとのこと。

過酷な災害経験を経て、豊田高校跡地の一部を横浜市の管理下で雨水調整池として再利用されることが決定されたのだった。

「もう一つ、これは将来的な話ですけれども、県では柏尾川が雨で増水したときに水を溜めておき、洪水を防ぐために活用することも検討しています」と東田氏。

 

柏尾川
 

豊田高校跡地は遊休地ではなく、立派に役割を果たしていたのだった。



県立高校の再編・統合が進んでいる



高橋氏によると現在、神奈川県の県立高校の間で再編・統合を含む県立高校改革が進行しているとのこと。
「12年を4年ずつ、3期に分けて実施しています。2016(平成28)年からスタートして現在はⅠ期(~2019年)目に当たります」と現在の状況を説明する。

 

“県立高校が変わります!”・・・どのように?(提供:神奈川県教育委員会)
 

この『県立高校改革実施計画』ではⅠ期で4校1分校、Ⅱ期で5校程度、Ⅲ期で10校以上、県立高校の減となる。もとより少子化によるものである。

1996(平成8)年5月1日時点で20クラス681名だった豊田高校も、2001(平成13)年5月1日時点では15クラス418名と大幅に在校生を減らしている。この時点ですでに汲沢高校との統合が決まっていた。
高校の再編・統合は現在でも進行中である。

 

『県立高校改革実施計画』県立高校の改革が進んでいる(提供:神奈川県教育委員会)
 

「氷取沢高校・磯子高校」「横須賀明光高校・大楠高校」「平塚農業高校(全日制)・平塚商業(全日制)」「弥栄高校・相模原青陵高校」などが現在、再編・統合予定で、それぞれ新しい高校としてスタートすることが決まっている。

 

一定の指針に基づいて再編・統合が行われる(提供:神奈川県教育委員会)
 

「『自分の卒業した学校がなくなるのはさびしい』『学校の名前が変わるのはさびしい』というご意見をよくいただきますが、おっしゃる通りだと思います。少子化で学校の再編・統合はやむを得ない、しかし自分の卒業校はそうしてほしくない、といわれる方も多く、ご理解をお願いする次第です」高橋氏はいう。

1980(昭和55)年から23年間存続した“豊田高校”。時代の流れはさまざまな場面に波及している。



取材を終えて



自分の卒業した高校がなくなるのはさびしいことに違いない。しかし子どもが減少しているのは事実であり、少子化時代と向き合って打ち出された一つの対応策が、県立高校の再編・統合である。このやり方が最善といえるかどうかは、さまざまな見解があろう。

高橋さんも「学校の再編・統合に関して、いろいろなご意見をお寄せいただければ幸いです」と広く意見を求めている。行政も試行錯誤しつつ、歩みを進めているようである。

広い豊田高校跡地は雨水調整池として活用されていた。市民生活の安全を守るために役立っている。少子化の問題は多方面にさまざまな影響を及ぼす。横浜のみならず日本全体の課題として考えたい。
 
 
-終わり
 
 
取材協力
神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp
神奈川県教育委員会
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6556/
 
 

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  • 百校計画が失敗だったという意見があるようですが、では、神奈川県だけ異常に高校進学率が低い状況になっていてもよかったのだろうか。公立を増やさずに私立に定員を増やさせればという意見もあるようだが、大学の状況を考えたら、そんなことやらなくて正解だった。団塊ジュニアのピーク時私立大学の定員を増やした結果、その後、減らせなくなり、子供の数が半減したのに大学定員は増えてしまった。その結果、今の大学生の半分以上が、団塊ジュニア時代には大学に入れなかった層となっている。公立だからこそ、定員削減ができるわけだ。子供が増えたら学校を増やし、子供が減ったら学校を減らすというのは、むしろ当たり前ではなかろうか。

  • 懐かしい豊田高校。優秀な学生達が沢山いましたね、、よく大船駅でカツアゲされたので 1日もはやくOBは金を返してほしい…

  • 今思えばあの「百校計画」が最大の失敗だったのではないかと思う。
    子どもの数が増えました。
    →ハイ、高校どんどん作って増やします。

    それから十数年、少子化になりました。
    →ハイ、じゃあ人気の高校は廃校にしましょうね。

    知恵が無さ過ぎる!
    百校も新設する前に校舎の増改築で対応するとか
    私立高校に定員を増やす協力を求めて授業料を援助するとか
    そういう考えは浮かばなかったのだろうか?
    数を増やすことを優先し過ぎた結果、百校計画の高校は交通不便な場所に建設された例も多く、
    生徒に嫌われ学業レベルも低下、教師の指導レベルも低下していったところが多い。
    百校計画の高校に入学し、後悔した生徒にとって廃校は悲しくもなんともない。



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