市の地道な声かけと、耳を貸さないホームレスたち （つづき）
　
逆にホームレスの意見も気になるところ。
地下街でコンビニ弁当を食べていたホームレスへのインタビューに成功した。
　

　

―ここで寝るようになってどのくらいですか？
5年ぐらいだね。

―以前はどのような仕事をしていたんですか？
ペンキ屋だよ。仕事が無くなってね。

―その弁当はどこで手に入れたんですか？
ボランティア団体がここに来て弁当とお茶を配ってくれるんだ。

―弁当は毎日配られるんですか？
毎日ではないよ。毎月第3水曜日の17時半頃に配りにくるんだ。

―現金が必要な時はどうしているんですか？
空き缶拾いだね。

―空き缶拾いだけでどれぐらい稼げるんですか？
1キロあたり150円ぐらいだから、だいたい1日で1500円ぐらいかな。

―「はまかぜ」のような自立支援施設を利用しないんですか？
あそこはルールが厳しくてね。酒は駄目だし、門限もあるし、少しでも問題を起こしたら追い出されるんだ。今の方がよっぽど気楽でいいね。ここにいる連中は皆同じ考えだよ。

―ホームレス同士で横の繋がりはあるんですか？
繋がりはあるけど、お互いのことは深く聞いちゃいけないんだ。それが暗黙のルールだね。

―「寝泊り禁止」の看板がありますが、それについてどう思いますか？
少しでも騒ぎを起こしたら警察が飛んで来るよ。それが分かってるから皆おとなしくしてるんだ。おとなしくしている限り文句を言われたことは無いね。
　

ボランティア団体が実際に配っていた弁当

結局「はまかぜ」のような施設があってもルールが厳しく、入居を拒むホームレスもいるということだ。
また、ホームレスにも人権があるため強制退去もできない。

リストラや病気などで職と家を失い、やむにやまれずホームレスになったのであろうが、ここでの生活に居心地の良さを見出し、人権を盾に退去を拒むホームレスにどこか矛盾を感じるのは筆者だけではないだろう。
　
　
　

光の数だけ影がある

　
オフィス街でもあり、観光地でもある関内。
しかし、そこを一皮むけばこのようなホームレス問題がある。これはまぎれもない現実だ。
　
市は「平日は常に巡回をしている」という話があった。これに対して「もっと積極的にやるべき」とお考えの方もいるだろうが、では現実問題としてそれだけの人件費を使うことができるのだろうか。やはり横浜市は細々と声かけを続けるのみ、というのが現状。
　
また、ホームレスはマリナード商店街がシャッターを下ろす時間帯を見計らって段ボールハウスを組み立てる。彼らなりに「マリナード商店街には迷惑をかけていない。さらに自分たちには人権がある」という言い分なのであろう。
　
そして、直接的な営業妨害をされているわけではない商店街の店員たちは、それを傍観することしかできない。現在はこのような三つ巴の冷戦状態が続いている。このような状況が、いわゆる「臭いものに蓋」ということだ。

ホームレスをどこかにひとまとめにしておけば他のエリアに迷惑を与えない、拡がらないだろうということ。市にも少なからずこの「臭いものに蓋」という考えがあるように筆者は思う。
　

オフィス街でもあり、観光地でもある関内だが、ホームレス問題という影がある

ホームレスの問題は簡単には解決できない。なぜなら、この問題こそ社会の歪から生まれたものであって、その歪をどうにかしようとするのであれば社会の構造そのものを見直す必要があるからだ。
　
この問題を解決することは現状不可能に近いのではないか。

とはいえ、何もしないというわけにはいかない。だから、大きな成果を生むとは思えない「地道な声かけ」も税金を使ってでもやらざるを得ない現状があるのだろう。行政だけでなく、ボランティアという形で市民が自立支援をするという機会もあるようだが、核家族化が進みボランティア精神の育ちにくい日本でどれほどの人がホームレス問題に取り組むボランティアを正しく理解するだろうか。
　
はまれぽではこの問題に対して記事を通して、できるだけ建設的な提案を行っていきたいと考えている。
　
　
―終わり―