高級住宅街、山手の住宅では道路側に洗濯物を干せないってホント?
ココがキニナル!
山手在住の方に「道路側に布団を干していたら町内会の人に外観が損なわれるからと注意された」と聞きました。どうやって布団や洗濯物を干してる?部屋干し?家のつくりが特別?(黒くてもシロッコさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
道路南側の住民は南向きのベランダに干し北側の住民には南向きではなく西向きに干す努力をする人も。専用のランドリールーム完備のマンションもあり
ライター:小方 サダオ
いよいよ“洗濯物の干し方の調査”のために山手を散策(つづき)
つづいて本通りに戻ると、スタイリッシュな外観の某マンションを発見。管理人室を探していると、住民の方が声をかけてくれた。洗練されたファッションが印象的な中年女性R・Oさんにも話を伺った。
「洗濯物の干し方について町内会の指摘があったことは、間違いないと思います。山手に住むからには景観を損ねないように意識を持つことは当然のことです。このマンションには専用のランドリールームがあり、そこで洗濯や乾燥を行えます」とのこと。
さらに管理人の湊さんに話を伺う。「全国のマンションでは独自の管理組合があり、マンションの規約として洗濯物を外に干さないようになっています。生活の臭いがするマンションではみっともないからです。ここが風致地区だから、ということは関係ないと思います」と答えてくださった。
各部屋に乾燥機が設備されているという本通り沿いのとあるマンション
山手地区の景観保全要綱の前に、マンション自体に独自の景観保全の規約が存在しているのだ。ここの住人は、マンション規約の上に風致地区であるということが重なって、強い景観配慮の意識を持っているのかもしれない。
山手地区住民の強い景観保全意識に触れ、身が引き締まった。
本通り北側に並ぶ高級住宅街
洗濯物干しに不便を感じているであろう “北側の住民”に話を聞きたいと思っているのだが、あまり姿を見かけない。しかし山手聖公会という教会の近くで、やっと通りの北側に位置する住宅の方に話を伺うことができた。
庭仕事中のご夫婦。奥様Y・Kさんは「私達の家は築45年になりますが、歴史的建築物に指定されている洋館の裏手にあります。そのため洋館を訪れた観光客 は、窓を覗くと下に私達の家の庭が目に入るでしょう。庭が南向きなので洗濯物などを干したいところですが、家の西側の日が当たる場所を探して干すようにし ています。観光客の目にとまりやすい場所に建っているので、少なからず『景観保全地区に住んでいるのだ』という意識は持つようにしています」と答えてくだ さった。
南側には十分な洗濯物スペースのある広い庭をお持ちにもかかわらず、不便なことだろう。しかし自宅も地区の景観の一部を担っているという意識をお持ちで、町の景観を作り出すことを、庭の手入れを通じて楽しんでいるようにも見えた。
イギリス国教会の流れを持つ山手聖公会
エリスマン邸。山手町と元町が交差する区域でここの住所は元町になる
エリスマン邸の向かいの山手234番館は山手町に位置する
山手資料館
外人墓地を過ぎると、本通りは港の見える丘公園に突き当たり、南東方面へと曲がる。その周辺マンションの管理人に、マンション名を出さないなら、という条件で話を伺った。
本通りは港の見える丘公園から南東方面へと曲がる
「私たちのマンションは築30年を超えますが、管理組合の規約として『マンションの景観を損ねるため、洗濯物や布団をベランダの塀より上を越えないように 干す』という規則があります。この注意に拘束力はありませんが、住人は上品で裕福な方々が多く、『山手に住んでいる』というプライドを持つ人たちが多いの で、規則違反はめったに起こりません」という。
やはりここでも“マンションの規約”と、“山手住民の意識”の間で洗濯物は姿をひそめている。
港の見える丘公園を過ぎると数件のマンションが建つ
横浜ベイブリッジを正面に見る本通りからの眺め
さらに付近でゴミ置き場の清掃をしていた女性を発見。話を伺った。
「洗濯物を外に干しちゃいけないわけないでしょ。私の家は南向きなので本通りに向かって洗濯物を干していますよ。洗濯物に関して問題になったことありません」とのこと。
失礼かもしれないがこちらの女性、どちらかというと下町風。「下町の路地=洗濯物」の個人的なイメージからすると、先ほどのマンションの住人R・Oさんとは対照的だ。同じ地区に住んでいてもライフスタイルの違いによりその意識は異なるようだ。
最後に山手でとあるお店を運営する知人にこの件について話を聞いた。Yさんは、「築13年の私の家は山手町ではありませんが、風致地区に建っています。洗濯物に関しては乾燥機を使用し部屋の中で干しています。
ショッピング通りから見えにくいように内側に物干しのある元町在住のTさんのベランダ
『風致地区に住む意識』に関してですが、風致地区に住むということはその場所を気に入って住むわけであり、それならば自分の生活スタイルをそれに合わせる のは当然です。私は洗濯物を外に干す習慣のない外国に住んでいたことがあります。それと同じ感覚でいられるこの地区が、私にとっては居心地がいいのです」 と答えてくれた。
彼女のようなクリエイティブな仕事をしている人は、景観に関する創造意識を強く持っているのかもしれない。
日も暮れかけたころ、「山手地区の住民の方々による景観というアート作品」を鑑賞させてもらった気分で、山手を後にした。
取材を終えて
“景観風致地区”の山手であっても、洗濯物を外に干すことは可能だ。なぜなら“山手地区景観風致保全要綱”という基準は、法的な強制力を受けることはないからだ。
行政は、山手住民には最初の段階でその指導をするだけで、その後洗濯物の問題が起こっても、行政や町内会が注意することはない。今回の投稿は山手が風致地区という場所であることから生まれたありえそうな噂なのかもしれない。
観光客の行き交う、港の見える丘公園への坂の途中から見える洗濯物の干された住宅
しかし立石さんは「山手地区は2010(平成22)年5月、『都市景観の日』実行委員会主催の『美しいまちなみ優秀賞』を受賞しました。『山手地区景観風致保全要綱』を制定するなど、公民協働で景観づくりに取り組んできた結果です」と言っていた。
そうだとすれば「洗濯物の干し方に関する要綱遵守のための活動」に対してもう少し積極性が感じられてもよい気がするが、要綱と いう性質からそれが難しいのかもしれない。
―終わり―
TKSさん
2017年03月07日 18時21分
どこに住むか、この国では自由だ。思いっきり外干ししたいなら、そういう所に住めば良い。どこでも住んで良いは、どこでも何をしても良いでは無い。当たり前のことが、当たり前に出来ない所が、この国の住人の意識の問題だと思う。
papicoさん
2014年08月21日 02時37分
ご苦労様なお話です。しかし雨の多い時期、カラッと晴れた日に朝から三連発で洗濯を仕上げた、あの達成感とお日様の恩恵をまとった洗濯物の仕上がりの爽やかさは景観より快感ですよ
えみりさぱぱさん
2014年07月02日 10時20分
確か、ハワイも外に干すのはNG。ホノルルのコンドミニアム(マンション)に泊まったところ、ちゃんと乾燥機付いていました。